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コラム

建築BIMの時代2 図面からの脱却

2019.07.09

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

2019年6月13日に第1回建築BIM推進会議が開催された。設計や施工の関係者だけでなく、
国土交通省の関係部署や学識経験者はもちろんのこと、審査や行政、維持管理や発注、調査研
究や国際標準など、建築BIMに関係すると思われるあらゆる人たちが参加し、まさに国を挙げ
てという感があった。国土交通省のホームページに資料が公開されているので、興味のある方
はご覧いただきたい。

資料6は、各団体のBIMへの取り組みを説明したもので、取り組みの状況と共に、それぞれが
何を課題と捉えているかが分かる貴重な資料である。
資料7は、BIMを活用した際の社会の将来像を想定し、それを実現するための工程を考えよう
というもので、委員はこの資料に沿った宿題の提出が求められた。頭の体操として、委員に
なったつもりで回答を考えてみてはどうだろうか。第2回の会議で、将来像と工程表が提示さ
れるようなので、大いに楽しみにしている。

前回のコラムでも触れたが、これまでにさまざまな企業や団体が、個別にまたは共同でBIMの
活用、普及に取り組んできた。残念ながら、建築界に大きな影響を与えるには至っていない。
デジタル情報を介して建築の利用、運用、生産にかかわるすべての人がつながることがBIMの
本質だと考えている。依然として、建築の関係者がデジタル情報でつながる状況には至ってい
ない。その原因はこれまでの建築のデジタル情報が図面を基にしたものだたからだと思う。
図面でつながることを試みて苦労した負の記憶が残っているのかもしれない。図面を基にした
デジタル情報は図面の問題点をそのまま包含するので、デジタル情報としての価値が著しく低
い。図面の欠点とは以下のようなことである。
 ・複数の図面やリストを見ないと必要な情報を得ることが出来ない。
 ・情報の関連性の表現が難しい。
 ・同一のものを表す図面間で、情報が整合していないことがある。
 ・図面から情報を読み取るには、訓練が必要である。

図面には利点も沢山あるが、情報を共有し活用するという観点では欠点の方が多い。一方、
BIMによる建築のデジタル情報の価値は、3次元であることだけではない。そもそもデジタル
情報は計算や加工、検索や関連付け、保管や劣化などの観点でアナログ情報に比べ格段に優れ
ており、これらはBIMによる建築のデジタル情報にもそっくりあてはまる。ある情報を加工し
て必要な情報を入手することや、多くの情報から新たな知見を得ることが可能になる。建築の
デジタル情報を介してつながることで、そのようなことが随所で起こる。建築への関わり方の
違いで、欲しい情報、必要な情報、作成する情報、提供できる情報が異なる。「こんな情報が
欲しいけれど、自分では作れない」とか「あの人が作っている情報に少し手を加えれば、私が
必要な情報になる」といったやり取りを重ね、建築情報の大きな地図が出来れば、それぞれの
立場での情報への関り方が明らかになる。建築BIM推進会議には、さまざまな立場で建築に関
わる人たちが集まっているので、建築情報の大きな地図を作るいい機会だと思う。

先日、ヘルシンキを訪れた。テンペリアウキオ教会のBIMモデルがあれば見てみたいものだ。

 ヘルシンキ テンペリアウキオ教会内部

 ヘルシンキ テンペリアウキオ教会内部


 アルヴァ・アアルト自邸

 アルヴァ・アアルト自邸


    自邸内アトリエのアアルトの机

    自邸内アトリエのアアルトの机

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長