建築BIMの時代5 BIMとFMとデジタル情報
2020.01.14
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
先日、私のメンターともいえる方と、久しぶりにお話した。その時、私にとっての2019年の
3大ニュースは何かと聞かれた。日頃、何かの節目でそのようなことを考えることもなく、の
んべんだらりとした日々を送っているので、2019年に何があったかをとっさに思い出すこと
ができなかった。時間をかけて2019年を振り返ってみると“娘が就職し独立したこと”、“初め
て富士山に登ったこと”、“JFMAから「ファシリティマネジメントのためのBIMガイドライン」
が出版されたこと”が、私にとっての2019年の3大ニュースだと思う。
次点が、年末にMacBook Airを買ったことである。iPod, iPad, iPad mini, iPhoneを使ってき
たがすべてPCとつないでいた。Windows 7のサポート終了ということもあり、衝動的にMac
を買ってしまった。一番の驚きは、“iPhoneに電話がかかってきた”とMacの画面に表示された
ことだった。Macを箱から出していろいろな設定をしているところだったので、非常に驚いた。
同じApple IDでつながっているから当たり前と言えるのだが、いろんなモノと情報が、意識し
ないところでつながっていることを実感した次第である。
話は変わるが、かつて情報システムは企業のコストセンターだと考えられていた。TCOの削減
が叫ばれていた。しかし現在はICTの活用をはじめAIやIoTなど、新しい価値の創造には、情
報システムが不可欠ともいえる。情報システムがコストセンターからプロフィットセンターに
なりつつあるともいえるだろう。一方、ファシリティはどうだろうか。もともとプロフィット
を産むファシリティとコストセンターとなるファシリティがある。コストセンターと考えられ
ているファシリティを、プロフィットを産むファシリティに変えていくこともファシリティマネ
ジャーの役割の一つではないだろうか。2018年の秋に放送された「下町ロケット」で主人公
の一人が社内で墓場と呼ばれている部署に左遷されたのだが、その部署が「総務部施設管理課」
だった。FMを活用している組織にとっては、とんでもない錯誤だといえるのではないだろうか。
FMは単なる施設の管理ではなく、ファシリティという側面から組織の活動に貢献することであ
る。FMには大きな期待と可能性が残されていると思っている。
「ファシリティマネジメントのためのBIMガイドライン」を出版したことや「建築BIM推進会
議」に参加させていただいていることで、これまで以上にBIMとFMとデジタル情報について
考えるようになった。FMにとってデジタル情報は不可欠で、BIMが提供可能な情報も多々ある。
受け渡しによる情報の劣化がないことと情報連携が容易なことは、デジタル情報の効能の一つ
である。BIMから情報を受け取れば、情報収集の手間も少しは軽減されるだけでなく、BIMが
FMに貢献できることはいろいろあると思う。デジタル情報をキーワードとして、BIMがFMに
貢献できることを、BIMに関わる人とFMに関わる人が一緒に考える場を切に望んでいる。
2月19日からのJFMAフォーラムの中で、BIMシンポジウムが開催される予定である。FMと
BIMについて考えるヒントになればいいと思っている。そして、JFMAのBIM・FM研究部会が、
BIMとFMを考える場になればいいと思っている。
2020年の私の三大ニュースの一つが「JFMAのBIM・FM研究部会が大いに発展したこと」とな
り、「2020年がFMにとってのBIM元年」といわれるようになることを今年の目標としたい。