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コラム

BIMコンペ課題敷地の杵築の魅力

2015.10.01

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

大分県杵築市の城下町地区が今年のBuild Live Japan(以下BLJ)の舞台だった。初めて杵築
を訪れたのは、6月13日に開催されたBLJ 2015の現地説明会の時である。大分や別府は訪れ
たことはあるが、申し訳ないことに杵築は地名さえ知らなかった。
 
その後、BLJ主催者の一員として何度か杵築を訪れ、地元の方々とお話しする機会を得て、すっ
かり杵築に魅了された。江戸時代のまま残る武家屋敷や街路、石畳は当然素晴らしいのだが、
そこに暮らす人々の営みとまちなみが作り出す雰囲気、空間は心を穏やかにしてくれたからだ。
その安心感はそこに身を置いたものだけしか感じることが出来ない。京都や金沢などの観光地
では決して感じることができない平穏を感じることができた。
 
私は大阪の下町、長屋で生まれ育った。城下町で暮らしたことはない。石畳とも無縁だった。
映画やドラマの影響はあるかもしれないが、それだけで懐かしさを感じた訳ではない。江戸時
代から続く城下町の景観とそこで営まれる暮らしが紡ぎだす、空間と時間の流れがそこを訪れ
た者に安寧を与えるのではないだろうか。観光地化された物理的な空間だけでは決してつくり
出すことができないものである。
 
杵築も人口減少と市街地に空き地が目立つという他の地方と共通の課題を抱えている。地方創
生は国を挙げての課題であるが、産業振興でもなく観光地化でもない、異なった地域の生き残
り方があるのではないだろうか。そのヒントが杵築の佇まいに隠されているように感じた。
「杵築」の地名を心に留めていただくとともに、まず杵築市の観光ページFacebookの「杵築
散歩プロジェクト」
を覗いてほしい。その上で、是非一度、杵築の空気に包まれてもらいたい。
杵築は大分・別府から大分空港への道沿いに位置し、鉄路でも小倉・博多に通じている。湯布
院や別府、大分の帰途に立ち寄ることもできる。
 
なお、BLJ 2015の模様は公式ブログでご覧いただける。そこからリンクされている参加チーム
のアピールサイト(ブログやFacebook)は参加者の杵築への思いがあふれている。そしてBLJ 2015の結果は10月23日に開催されるArchi Future 2015のセミナーで発表される。



猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長