建築BIMの時代10
オンラインコミュニケーションとBIM
2020.12.01
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
10月23日(金)に無事、Archi Future 2020が開催された。今回は「集まり方改革 -ポス
ト・パンデミックの協業と社会-」をテーマとして、Archi Futureとしては初めてオンライン
での開催となった。といっても完全オンラインというわけではなく、私がモデレータを担当し
たパネルディスカッションのようにパネリストは中継会場にリアルに集まり、そこから配信し
たものもあった。パネリスト同士が初顔合わせということもあり、オンラインで議論すること
に不安を感じて、オフラインで議論しその様子をオンラインで配信してもらうことにした。面
白い議論が出来たと思うが、会場からの反応を感じることが出来ずどのように受け取られてい
るかは全く分からないという不安がある。オンラインコミュニケーションの難しさを実感して
いる。
前回のコラムで述べたように、今回はBIMとVDS(Virtual Design Studio)について考えてみ
たい。VDSは、CSCW(Computer Supported Cooperative Work)の延長で、コンピュータや
ネットワークを活用して、関係者が共同でデザインを行う環境といえる。新型コロナウイルス
の影響で、オンライン会議が爆発的に普及した。長い間、テレビ会議やオンライン会議などの
開発、普及に尽力されてきた多くの人たちの努力の成果を、新型コロナウイルスがかすめ取っ
ていった感がある。すでに、オンラインでの会議や打合せは当たり前のものとして、私たちの
仕事の中で定着した。アフター・コロナでもオンラインでの会議や打合せは続けられていくと
思う。
一方、オンラインでのデザイン行為やデザインに関するコミュニケーションは、現在でもそれ
ほど活用されていないような気がする。VDSがもっと注目されてもいいと思う。BIMとVDSは
相性がいい。BIMモデルには、三次元の形状情報とともにさまざまな属性情報が格納できる。
複数の設計者が同時でBIMモデルを編集する機能を提供しているBIMソフトやBIMモデルを属
性情報とともに閲覧するソフトがある。BIMモデルを簡単にVR化するソフトやBIMモデルから
CGアニメーションを作成するソフトもある。もともとコラボレーションはBIMの目的の一つで
あり、以前からBCF (BIM Collaboration Format) への期待も高まっていた。BIMモデルをコ
ラボレーションに活用する環境は概ね整っているといえる。関係者を拡げ、さまざまな場面で
のオンラインコミュニケーションでBIMを活用することで、BIMの重要性が高まると思う。
そのようなことを考えている中で、大阪大学の福田先生と熊本大学の大西先生による
Archi Future セミナーS-3の対談『異端児たち:建築・都市のxR新時代へ』をオンラインで視
聴した。福田先生は大阪、大西先生は熊本からオンラインで参加する完全なオンラインでの対
談で期待していた。今回のArchi Futureで参加者同士のやりとりのためにSpatialChatという
オンラインサービスを利用した。対談では、SpatialChatの画面をZoomの画面共有機能を使っ
て配信していたわけだが、SpatialChatの使い方が秀逸であった。内容も素晴らしかったが、
オンラインツールの使い方に感銘を受けた。お二人はVDSについても数多くの研究成果を発表
されており、この対談の環境は得意分野でもあったといえる。リテラシーの高いお二人によっ
て、既存のツールやサービスの力と可能性が引き出されたと感じた。BIMも同等以上の可能性
を持っている。
筆者の知らないところで、BIMがオンラインコミュニケーションで活用されているとすれば有
難い話である。是非、そのような事例が公開、共有されることを期待している。