建築BIMの時代14 BIMを続ける
2021.10.12
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
今年は、サンダーバード(テレビ番組)の日本上陸55周年だそうである。Wikipediaによると
1966年4月10日からNHK総合テレビで放送が開始されたそうだ。幼稚園児の時、サンタさん
にサンダーバードの模型が欲しいとお願いした。クリスマスの朝、枕元に秘密基地の模型を見
つけた時の喜びは、今でも思い出すほど深く記憶に刻まれている。夢中になってその模型で遊
び倒した記憶がある。その後、幾度となく再放送を見た。先日も上陸55周年記念のスターチャ
ンネル無料放送を見て、あらためてよくできているなと思った。ちなみに「サンダーバード55
周年記念サイト」では、オンライン会議の背景に使える画像がダウンロードできる。去年の7月
から掲載されていたようで、今頃気づくとは迂闊にも程がある。
子供の時には気にならなかったが、「国際救助隊」の活動資金の出処が気になりだした。イン
ターネットで調べてみると、国際救助隊創設者のジェフ・トレーシーさんの個人資産で活動し
ているそうである。彼は発明家で、数々の発明により大富豪になったとも書かれていた。昨年
から販売されているデアゴスティーニのサンダーバード秘密基地シリーズのどこかに書かれて
いるかもしれない。
前置きが長くなったが、先日の松岡さんのコラム「BIMのマネタイズ考」に大いに触発された。
私自身、BIMのマネタイズにずっと悩んできた。今も悩んでいる。答えは未だ出ていない。FM
でのBIM利用を検討する時、常にBIMによる費用増加の回収が問題になる。国土交通省のモデル
事業や補助事業だけでなく、さまざまな企業や団体がその答えを求めて活動している。10年近
く前、私自身も日本IBM殿の共同研究に加えていただき、FMでBIMを活用する効果の試算を
行った。あくまでも試算で、実際にFMでのBIM利用を継続した訳ではないので説得力に欠ける
のだが、道筋を示すことは出来た。FMでの費用増加の回収には長い時間がかかる。現在、取り
組まれている方々が、その取り組みを続けていただくことで大きな成果が出てくると信じてい
る。先行者としての利益は大きい。
一方で「イノベーションのジレンマ」に指摘されているようなアプローチが必要なのではない
かと思っている。現在FMや建物の維持や保全に関係している人たちの意見を聞き、それに応え
ていくことで、少しずつ建物の運用段階でのBIM活用を進めるのではなく、バックキャスト的
にBIMによる建物のデジタルデータ活用の理想像を描き、そこに向かって進むという手法であ
る。その一例が不動産テックとの協働である。不動産分野でICTを活用したさまざまなサービス
が提示されている。建物のデジタルデータが必要なサービスもある。BIMと隣接しているサービ
スということができる。BIM事業者が不動産テックの事業者となることも可能だと思う。BIMに
よる建物のデジタルデータの価値に気づき、新たなサービスを思いつく人が出てくることを期待
している。