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コラム

今年、私が見るArchi Futureのセッション

2021.10.28

ArchiFuture's Eye                  広島工業大学 杉田 宗
 
いよいよ今年のArchi Futureが10月28日(木)に開幕します。私は実行委員として関わり始め
てから2度目のArchi Futureになります。昨年に引き続きオンライン開催となっておりますが、
10月28日~11月2日の6日間はアーカイブ映像が見れるのでお得感があります。対面開催の
時は毎年恒例のようにArchi Futureで顔を合わせるってこともあったわけで、それはそれで
人と人の繋がりを作る貴重なきっかけとなっていたのですが、それは当日設置されるoViceを
使ったバーチャル空間でどうぞ!
 
今回はコラムが開催日に掲載ということで、私が期待するArchi Future 2021について書いて
みます。忖度なし、私の純粋な興味からの意見なので、公平さに欠ける可能性がございますが
お許しください。まずはArchi Futureの入口として、こういう所を見てもらい、そこからみな
さんの興味の方向を見つけて頂けると良いと思います。
 
まずは「講演会」から。毎年ビッグな登壇者や、ユニークなパネルディスカッションが並びま
すが、今年は輪をかけて面白そう。特に「アトリエ設計事務所のデジタル化の現場 –それぞれ
の事務所から生中継-」と「生まれ変われるか、建築設計事務所」が並んでるのにご注目下さ
い。前者は第一線で活躍する建築家の事務所のデジタル事情について、それぞれのアトリエ事
務所のキーマンが生中継で紹介してくれるというセッションこれGAのインタビューなどで伝
えられることはあっても、実際は良く分からない部分だったんですよね。アトリエ事務所がど
のようにデジタルを活用し、どうやって設計を進めているかを知る貴重な機会になること間違
いなし。噂によると、我々が思っている以上にデジタル化進んでるところもあるらしいですよ。
一方、各協会の会長が一堂に介する「生まれ変われるか、建築設計事務所」は今後の建築業界
のビジョンを提示するセッションになるかもしれません。建築設計三会に建築情報学会を加え
た4つの団体の会長全員が集まることなんてありますか?しかもBIMやデジタル化についての
議論が繰り広げられるなんてArchi Futureでしかありえません。
 
シュトゥットガルト大学のアキムメンゲス先生とTAILANDのクマタイチさんの対談も必見で
しょうアキムメンゲス先生が率いるICDはデジタルフブリケンの分野では世界の最
先端。みなさんもロボットアームを使って作られたパビリオンの映像など、一度くらいは目に
したことがあるはず。最近はより実践的な活動も進められているらしく、まだ見たことの無い
作品など見せてもらえないかな。以前にICDに在籍していたクマタイチさんにはその辺うまく
引き出してほしい。また、私も常任理事を務めさせて頂いている建築情報学会は「建築情報学
会どうでSHOW」でこの並びに食い込んできます。後発なのにタイトルふざけすぎてません
か?しかし、ホロラボの伊藤武仙さんや、オムロンサイニックエックスの牛久祥孝さんなど、
xRやAIの専門家として建築に関わる方が登壇されいかにも建築情報学会らしい内容になり
そう。もう「講演会」だけで一日つぶれちゃいます。
 
「講演会」と並行して進む「セミナー」もどこから見れば良いのか悩みますね。「建築・都市
におけるAIとビックデータの可能性」は今年のa+u6月号のゲスト・エディターを務めた吉村
有司先生の講演。スペインやフランス、米国などで関わってこられた研究や社会実験の中で、
どのようにデータ・サイエンスが都市デザインを変えていくのかについてお話頂けるのではな
いかと思います。海外の社会実験の様子など、日本ではありえないような都市の未来が垣間見
れるセッションになりそう。都市スケールからは一変、「建築環境・設備分野の今後のデジタ
ル技術を考える」は大阪大学の小林知広先生の講演。設計において環境シミュレーションが一
般的なツールになりつつありますが、小林先生には設備設計のデジタル化や、今後の設備設計
者を育てるためのデジタル教育についてお話頂く予定です。設備設計者を探すこと自体が難し
くなっている状況ですが、これからはデジタルに強い設備設計者が全方向から重宝される時代
が必ず来るはず。社会人も学生もみんな見るべきセッションです。
 
その他のセンも多様なトピクが並んでいます「スマートビルディング・都市OSが拓
くデータビジネス -先進事例の解説とスーパーゼネコンのデジタル変革の展望-」はスパー
ゼネコン各社が進めるスマートビルディングに向けての取組について。建設だけでなく、運用
やデータビジネスなど、これまでとは異なるデジタル化の側面を知ることができそうです。今
後、どんどんスマートになっていく建築に負けない様に私も日々の勉強を怠らないようにしな
いと。
 
もちろんBIMもメイントピクの1つとして様々なセションに登場すると思いますが「中小
テナントビル開発へのBIM活用の実態 -発注者主導によるBIM運用の中で、できたこととでき
なかったこと-」と「建材・設備メーカーのBIMオブジェクトデータの有効活用で広がるBIM
のフロー -サプライヤから見るBIMの可能性-」の2つのセッションでは、BIMを主語とした
議論が聞けそう。前者は「発注者主導」というのが面白いですね。「BIMは大規模だけ」なん
て言ってたら時代遅れ。色々な新しい試みは中小規模だからこそ挑戦できると言えますし、そ
こでできなかったことまで紹介して頂けるのは、中小規模の設計事務所の立場からして本当に
助かります。また、「建材・設備メーカーのBIMオブジェクトデータの有効活用で広がるBIM
のフロー -サプライヤから見るBIMの可能性-」の主役はメーカー。LIXILさんやフカガワさ
んなど、BIMモデルを設計者や施工者に提供する立場の方々が、BIMについてどう考えている
かは非常に興味があります。実際、設計を進めて行く段階で、製品のBIMモデルを提供しても
らえたら本当に助かりますもの。しかもそれが単なるモデルではなく、BIMオブジェクトデー
タということになれば、今後の活用の可能性が広がります。その辺のことを芝浦工業大学の志
手一哉先生がコーディネーターとなって議論されるのだから絶対聞くでしょ。
 
そして忘れてはいけないのが「社会人教育と大学教育で加速する建築情報の学び -さまざま
な工夫による実践的なデジタル教育-」!だって私が出るんですもの。GELの石津優子さんと
立命館大学の山田悟史先生の3人で、デジタル教育について議論します。我々は建築情報学会
の育成活動委員会でも共に活動しておりますが、おふたりとも本当に積極的に新しい教育の形
を目指して活動されていて、いつも議論が白熱する3人です(昨夜の委員会も夜中までやって
たよ)建築におけるデジタル教育が、社会人や学生の垣根を超えて、新たな領域に入っている
ことを感じています。そんな環境が出来て行かないと、大学でも会社でもデジタルな人材は
育っていかないですよ。
 
というわけで、結局全部みることになりそうですね…。しかもこれだけじゃない、「テクニカ
ルフォーラム」も「展示会」も面白そうなのがまだまだ沢山あります。もうその週末は予定を
入れずArchi Future三昧!建築を学ぶ学生も、Archi Futureを通して建築の未来知ろう。

 ※上記の画像、キャプションをクリックすると「Archi Future 2021」オフィシャルサイトの
  トップページへリンクします。

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杉田 宗 氏

広島工業大学 環境学部  建築デザイン学科 准教授