W/コロナとArchi Future
2021.11.30
ArchiFuture's Eye ARX建築研究所 松家 克
コロナは、このところ日本では一先ず沈静化しているが、一方、第6波が来ると想定し準備も
進めていると見聞する。世界各地では異なる政治的な対応と結果が見られ、パンディミックス
抑制を目的として開発途上国にワクチンを提供しているCOVAXに期待している。
さて、このようなW/コロナの環境下での今年のArchi Future 2021の企画会議では、リアルか
オンラインか、あるいはハイブリットとするのか、時間をかけて検討を繰り返し、参加者の方々
の防染対策を最優先と考えて全てを準備。リアルより準備が大変なオンラインとする苦渋の決
断で進めた。LIVE感が重要だとの意見が強く、LIVE感を醸し出すことも心がけた。oViceもそ
の方法の一つで、商談や雑談も楽しい試みであり交流の時間でもあった。
併せ、大変好評なArchiFuture Webを多くの方々にお読みいただき、この情報から新たに参加
された方もいるのでは、とも想像している。このWEBマガジンのコラムやクローズアップの欄
などは、ヒット数から推し量ると大変好評をいただいているようだ。更に新しい書き手をお願
いし、益々充実している。
例年の企画委員会では、建築界のFutureを見据えながら、今の建築のホットで楽しく最先端を
行く建築の情報を皆様に提供したいと心がけてきた。今年はコロナ対策に加え、更に充実させ
るためにいろいろな角度から検討と協議を重ねた。
Archi Future 2021では、「私も含めてコロナ後のニューノーマル時代に向けて元気を出そ
う!!」とのエールを送りましたが、建築界にコンピュテーショナルな明るい話題と方向性を
提供し、建築の新しいデザイン、生産、プロセスなどの可能性や方向性、課題などを多くの建
築関係者、特に学生や若い方、中堅の方々に感じるイベントをと考えて開催してきました。そ
して、これからの時代に向けて建築家や技術者などの方々が新しいアドバンテージやヒントを
持てるように、様々な情報を今後とも出来る限りの発信を予定している。
ただ、建築界を取り巻く現在の環境は、残念ながら決して明るいものだけでは無い。職人の人
件費や材料費などの高騰による大幅な建設コストの上昇や、熟練技術者不足の深刻化などに加
えてこのコロナである。この幾つかの課題の解決方法として、在宅ワークやリモート会議など
が急激に進められているが、これらを背景に、BIMや各種シミュレーションをはじめとする先
進的なICT、IoT、DXなどの新活用も大きなうねりとなりつつあり、コロナ後の次世代への期
待と併せ、不可分なものとしての地位を高めている。
国土交通省は、一昨年の6月に「建築BIM推進会議」を発足させ本格的な取り組みを開始した。
この会議の委員長の松村秀一東京大学特任教授に今回はコーディネータをお願いし、「生まれ
変われるか、建築設計事務所」のタイトルでパネルディスカッションを企画した。この講演は、
示唆に富む話となったと考えている。
今回が14回目となるArchi Futureは、建築界の前向き思考に向けて、国内外の著名人や第一
線で活躍するキーマンによる講演会、セミナー、および最新技術・ソフト・製品を一堂に紹介
するイベントだが、基調対談のアキム・メンゲス氏の講演は以前から候補者の一人に上がって
いた。オンライン故に、今回、実現したといえる。
特別セッション1は、時代に即し新発足した建築情報学会企画主催で
「建築情報学会どうでSHOW」のタイトルで、各分野の方々の参加もあり興味深い話となった。
特別セッション2は、今活躍中のアトリエ設計事務所でコンピュテーショナルなスキルを支えて
いる主要なメンバーの方々に、デジタル化の現場を中心にアップ・デートの状況を語って頂き
ましたが、今回、視聴数が一番多い講座となった。
セミナーS-1,2,3,4,5,6は、より深い専門的な領域のご講演をお願いした。例年より
も高人気の講座が多く、今後に期待が持てる結果となった。
最後に、皆様の参加を心から感謝し、有意義で楽しい一日だったことを願うとともに、実行委
員一同も心から安堵し例年に繋げていきたいと考えている。
このArchi Future 2021では私も含めて、W/コロナのノーマル時代に向けて「元気を出す
ぞ!!」とのエールを皆様に送れたのではと、勝手に自負している。次回はW/コロナの環境下
でも魅力ある新しい形でのイベントを模索しながら来年も良き企画を!と、自分自身に激を掛
けスタートを切りたい。
追記
前回コラムの「丸柱NGのホンダ」で、書いた後に想い出したことがある。本田宗一郎氏は、
約2時間に亘って怒りと檄を飛ばしていたが、最後の5分間で、「みんなにとても期待している。
世界一安全で素晴らしいビルになっていて嬉しい。この後も頼むぞ!」との声をかけられて笑
い顔で帰られた。リスペクト感とともに、一瞬にして強烈なファンとなった。前コラムでも触
れたが工事途中の雨の日に、さち夫人とともに警備に声をかけられ現場が見たいとの申し入れ。
本田氏だと所長が咄嗟に判断し迎えに出ている。俺はホンダだ、ではなく見せてもらえるだろ
うかと警備にお伺いをした上で見学された。完成後は、毎日のように来られ子供に返ったよう
に隅から隅まで楽しそうに見て回られていた。宗一郎氏だけは、賓客が居ても警備方もフリー
パス。何時も笑顔で迎えられていた。片やチャールズ皇太子とダイアナ妃が竣工の次の年に訪
日され、ホンダ青山本社からパレードがスタートしたが、使用するオープンカーの前日のテス
トランで出口の緩い坂でイギリスから運ばれた低い車体の底部が当たり、徹夜で削り取ったこ
とも思い出した。併せ、応接階にあったゲスト用のトイレは、ダイアナ妃仕様に化粧品も含め
改装され、結局、利用されなかったが、VIP訪問時の大変さを改めて感じたのを鮮明に覚えて
いる。小生のデジタル化のスタートと重なったホンダ青山本社ビルの全てのことが忘れがたい。