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コラム

自己組織的な建築へのあこがれ

2015.04.16

ArchiFuture's Eye              慶應義塾大学 池田靖史

古い町並みにはたくさん例がありますが、ベトナム・ハノイ周辺では土地制度との関係で
現在でも細長い町家形式が目立ちます。蒸し暑い気候をしのぐためには風通しが最も重要
で、様々な増築要素を継ぎ足しながら風を求めて植物が成長するように上に伸びていく様
子はまさに新陳代謝する自己組織的な建築空間に思えます。CFD流体解析による通風の
シミュレーションを使って、増築による成長モデルのアルゴリズムを評価し洗練させて
いけば、この何とも不思議でいて、実は様々な外的な条件の変化に最もしぶとく適応する
都市的な建築手法が、コンピュテーショナルなデザインの本質的な可能性ではないかなあ
と常々感じています。そして実際にこの町並みのダイナミックな働きを支えている膨大な
数の住民の絶え間ない活動と協調できるしくみを夢見ています。


池田 靖史 氏

東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 特任教授 / 建築情報学会 会長