ヒロシマBIMゼミ2021年総括
2022.02.24
ArchiFuture's Eye 広島工業大学 杉田 宗
昨年に引き続き、今年も「発表! ArchiFuture Web 2021年人気記事ランキング」に便乗し
て勝手に「ヒロシマBIMゼミ2021年総括」やっちゃいます。
2017年より続けてきた『ヒロシマBIMゼミ』ですが、2020年からはオンラインにて開催して
おります。『ヒロシマBIMゼミ』については、これまでのコラムで何度か紹介させてもらって
いますので、詳しい説明は割愛させてもらいます。ざっくり言えば、BIMの普及には地域に根
差したBIMコミュニティづくりが重要という考えから、企業の垣根を超えてBIMの導入や運用
を担う人材の横の繋がりをつくり、同時に広工大などでデジタルデザインを学ぶ学生と社会人
の縦の繋がりを形成することを目指しています。
ヒロシマBIMゼミ YouTubeチャンネル(クリックするとYouTubeへリンクします)
2021年の初回となった、「BIMによる設計業務のプラスアルファ」では、アサヒコンサルタ
ントの宮内芳維さんと、杉田三郎建築設計事務所の市村隆幸さんに登壇頂き、土木と建築の両
方の視点から設計にBIMを用いることで得られるメリットについて紹介していただきました。
宮内さんは、データベースとしてのBIMの情報をDynamoでマネージメントするなど、これま
での業務を大きく変える試みをされていて、それを社内でどう根付かせていこうかという取り
組みも進められています。市村さんは、BIMで設計をすることで、最終的なアウトプットとな
る図面だけでなく、その設計過程の中で3Dモデルを3Dプリンターで出力して模型を作ったり、
ゲームエンジンに持っていってVR空間で詳細をデザインするなど、BIMを活かしたアウトプッ
トを増やしていく話題でした。それぞれ20代の若い設計者が、土木や建築の分野でBIMのメ
リットを広げようとしている姿が印象的でした。30代も40代も頑張んないと。
記念すべき第20回目となった「メーカーのBIM 2021」は、メーカーに焦点を当てた第2弾。
LIXILの西村雅雄さんと遠藤雅人さんに登壇頂き、サッシやエクステリア部門におけるBIMの
取り組みについてご紹介いただきました。様々なパーツを組み合わせて設計していくBIMでは、
建具や器具などのパーツモデルが重要です。汎用性の高いシンプルなパーツモデルで設計を進
めることはできても、実施設計や施工の段階になれば実際に使用するパーツモデルが不可欠に
なってきます。メーカー各社もこれまで配布してきた図面データに加え、3DモデルやBIMモデ
ルを提供するようになってきています。その裏側でどのようなことを考えながらBIMを活用
しようとしているのか、何が課題になっているのかを、後半の座談会では議論しました。サッ
シは、様々なサイズや仕様に対応するファミリを提供することで、設計者が自由に操作しなが
ら検討することが可能になり、BIMで設計するメリットが高い部分です。しかしながら、個々
の建物が異なるのが建築であり、実際は自社製品のファミリを広く配布しつつ、それぞれの建
物に対して個別対応する必要性が高まっているようです。エクステリアは、フェンスやゲート
など様々な状況に柔軟に対応できるファミリだけでなく、駐輪場を自動設計するツールなどの
提供も始まっており、単なるモデルの提供にとどまらない取り組みに発展しています。BIMモ
デルの提供などには多くの労力がかかる一方、それが製品を採用される要因になるかというと、
まだ難しい状況ではないかと思います。そのような状況でも、先進的な取り組みをされている
ことが大きなことですし、自動設計ツールの提供を通して、メーカーとしての新たな役割を示
されているのではないかと思いました。
そして10月には、建築情報系学生の発表の場として「ポートフォリオレビュー2021」を今年
も開催しました。これは学生が自分のポートフォリオを使ってプレゼンテーションし、それに
対してゲストクリティークと主催者がコメントするという内容で、就活が目前に迫った学生の
ポートフォリオのブラッシュアップや、発表することの経験を積む目的があります。今年は他
大学からの発表者が不在で、広工大の3年生ばかりになってしまいましたが、ゲストクリティ
ークとして参加してくれた竹中工務店の石澤宰さんから様々なアドバイスを頂くことができま
した。石澤さんがどういう視点で見るのかについても触れていただき、発表者だけでなく、こ
れから就活を進める全ての建築情報系学生が知っておくべきヒントが詰まった回だったと思い
ます。最後の懇親会は今年もSpatialChatでざっくばらんにおしゃべり。オンラインになって
形は変わってしまいますが、以前事務所飲みで生まれていた縦の繋がりを、どうにかオンライ
ンでもつくっていきたいと考えています。
2021年の最後は「広島のBIM最前線」。広島を拠点とする大旗連合建築設計とあい設計に発
表をお願いしました。両社のBIM担当者の方々には『ヒロシマBIMゼミ』を始めた頃から度々
参加して頂いてきましたが、ここ1~2年で一気に本格化したBIMの取り組みについて紹介して
もらいました。大旗連合建築設計の高橋智彦さんには、2018年にも登壇頂いたことがあります
が、それ以降実施設計までBIMを使用する物件が増え、現在までに15件以上の設計に取り組ん
だとのこと。2DCADとの併用から、BIMによる共同作業まで、社内で段階的に展開されていっ
た様子を、実際の建築とともに詳しく説明頂きました。また、櫻河内敏雅さんからは、専門設
計(エンジニアリング)と総合設計(デザイン)の両方の特色を持つあい設計のBIMについてお話
頂きました。BIM試行業務として庁舎や学校の基本設計を進める際には、建築BIM推進会議の
ガイドラインに沿った基本設計業務を行われています。この回では、主催者である田原泰浩建
築設計事務所と杉田三郎建築設計事務所も最近の取り組みについて短く紹介させてもらいまし
たが、登壇頂いたすべての設計事務所の取り組みがここ数年で一気に進んだことを感じました。
最初はBIMに触れることや、BIMで設計してみることが目的となっていましたが、そこから何
段かステップアップし、どうやってBIMを根付かせるかや、新たなメリットの探求が目的になっ
ているように思います。配信後に大旗連合建築設計の兒玉亮太さんや元所員の久保井将太さん
たちを交えて全員で話しましたが、『ヒロシマBIMゼミ』がこのステップアップに少なからず
影響を及ぼしているのではないかとのコメントがあり、我々主催者の思いが叶いつつあるのか
なと実感しました。
コロナが長引いておりますが、今年も『ヒロシマBIMゼミ』は続きます。第1回目は3月7日。
我々主催者が中心になり、建築BIM推進会議のモデル事業の一つとして進めている『ヒロシマ
BIMプロジェクト』のフェーズ2の報告をオンライン開催で実施いたします。ぜひご覧ください!
2022年も「広島をBIMの街に!」