設備BIMが盛り上がってきた
2022.05.17
パラメトリック・ボイス 日本設計 吉原和正
先月の4月27日にオンラインでRUG(Revit User Group)総会が開催されました。RUGは、意
匠・構造・設備の各分野で、ユーザーを中心とした活動を行っておりまして、建築BIM推進会
議の各部会や関係団体での検討内容に則りながら、主に以下のテーマで活動を進めています。
①Revitサンプルモデル活用による具体例の提示
②共有パラメータの標準化(分野間で連携すべき中間パラメータを中心に)
③Revitによる意構設データ連携の具現化
④Revitでのファブ・メーカー連携推進による施工への展開
⑤世代や役割を超えた積極的なワーキングの実現
私がRUGの会長になってから今年で3年目に突入するのですが、ここに来て設備WGへの参加
者が劇的に増えてきていまして、立ち遅れていた設備BIMがようやく盛り上がりを見せ始めて
います。特に、サブコンさんの参加企業が増えてきていまして、機械系だけではなく電気系の
サブコンさんにもご参加頂いて、活動が活発化してきています。
昨年の設備施工でのBIM活用をテーマにした「設備BIM最前線vol.4」が開催されてから1年ほ
どが経ち、各社もようやくBIMへの取り組みを本格化する兆しが出て来ているのを実感してい
るところです。
(設備BIM最前線vol.4:BIMで変わる設備施工ワークフロー)
(ArchiFuture Webコラム:設備サブコンによる本格的なBIM活用の幕開け)
RUGの設備WGでは、「設備ファミリ整備TF」、「設備DynamoTF」、「設備ExtensionTF」、
「電気TF」、「ファブリケーションTF」の5つのタスクフォースを中心に活動を進めていまし
て、この活動を元に、ジェネリックファミリの拡充や、テンプレートの整備、オートデスクサ
ンプルモデルのブラッシュアップを行っております。昨年までは、設備設計でのコンテンツ整
備がメインでしたが、ここに来て、電気設計や、設備の施工領域の拡充に活動の主軸が移って
来ています。
そして、この成果は、順次、RUGのライブラリ | BIM Designで公開していく予定で、来月に
は、電気や設備施工系のコンテンツを公開する予定です。
RUGの設備WGの活動は、オーストラリアのBIM-MEPAUSの取組みを参考にしていることも
あり、今年も4月28日と29日にオーストラリアで開催された「Construction Innovation
Forum」にオンラインで参加しました。ちなみに、以下のコラムで、3年前に参加した時のこ
とを紹介しています。
(ArchiFuture Webコラム:BIM-MEP(AUS)の10年の取組みから学ぶべきこと①~業界標準
化の取組み~)
(ArchiFuture Webコラム:BIM-MEP(AUS)の10年の取組みから学ぶべきこと②~ファブ連
携~)
(ArchiFuture Webコラム:BIM-MEP(AUS)の10年の取組みから学ぶべきこと③~VBISコー
ド~)
今回傍聴した中で意外だったのは、BIM-MEPAUSが10年以上かけて整備してきたBIM標準類が
既に完成したものだと思っていたのですが、ここに至ってもまだ、州による基準の違いへの対
応が課題として挙げられていることでした。スマートシティやデジタルツインの実現に向けて、「DATA」の重要性が様々なセッションで叫ばれる中、オーストラリアでも従来の基準が標準
化の壁になっている現実を垣間見て、BIMの標準化の大変さを実感した次第です。
ですが、日本では、BIM以前のCADの時代だった20年以上前から、STEMやBE-Bridge等の設
備の標準類整備が進められてきていて、それを継承した、設備IFC利用標準があり、BLCJオブ
ジェクト標準も整備されてきています。そして、これらの標準類は、都道府県による違いはな
い国内標準として利用可能なものです。
また、国内では様々な設備CADソフトがあり、3次元で検討を行うことは施工の分野を中心に
既に行われていることもあり、日本では、ある程度下地が整っているはずなので、あとはBIM
を「DATA」として見た視点での整備や活用を進めていけば、意外と短い期間で海外の取組み
に追いつける可能性があるのではないかと思っているところです。
今月の5月24日には、(一社)日本空調衛生工事業協会の総会で、BIM基調講演をオートデスク
と一緒に、RUGの会長という立場で行う予定になっています。
BIMの本質をご理解頂き、設備のBIM普及が本格化することを期待していますが、できれば単
なるBIM化に留まらない、その先の「DATA」活用に向けて歩み始めるきっかけになればと
思っているところです。