BIMがなかだるみしないために
2022.06.16
パラメトリック・ボイス SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎
建築生産の分野でBIMに関わっている方であれば、もっとうまくできるはずなのに、何故か
BIMがプロセスにはまっておらず、いつの間にかプロセスから外れてしまった経験をしたこと
があるのではないでしょうか(生産分野に限らずBIMあるあるかもしれません...)。
BIMを含めて3Dとデジタルデータを扱うツールは、多くの場合プロセスの初期段階と製作前
の段階で頼られがちです。
乱暴な言い方をすると、まだ理想を追っている時と、作らなければいけないのに理解ができ
ない時には頼り、業務に追われているときには慣れたやり方ですすめてしまい問題に気付かな
い(もしくは問題を後回しにしてとにかく進んでいるようなアプトプットをしてしまう)ので
はないでしょうか。
日本の職人さんは非常に優秀なので、トラブルが起きてもなんとか現場で納めてくれます。極
端に言うと、イメージだけ伝えれば自分たちで図面を描いてきれいに作ってくれるだけの経験
と技術があります。
ただし、一見きれいにできているようでも、後日水漏れなどのトラブルが出てしまう事は少な
くありません。
原因の一つには標準的な納まりを疑う事もなく使っていることだったりします。
もちろん標準納まりはメーカーが試行錯誤をした上でできたものなので、信用に値するもので
すが、単純に正確な手順を作業員が理解していないミスもありますし、そもそも作業がしにく
い手順であることを設計が把握できていない場合もあると思います。
特に建物の形状や取合う部材によっては、
・特殊な部材でも同じ納まりにしている
・想定していた角度を越えている
・本来取り付けるべき位置に取りついていない
・標準の手順では取りつけることができない
などの原因により本来の性能を満たせずにトラブルになることがあります。
また、生産設計をメーカー任せにして、全体としてのマネジメントができていないといったプ
ロジェクト体制の問題も少なくないでしょう。
生産設計は実際に建物を建てることに最も近い設計行為で、品質や工程やコストに直結するも
のなので、早い段階からしっかりと考えた方がよいものです。
これが、良くも悪くも何とかしてしまうゼネコンやメーカーや作業員の優秀さにより後回しに
されがちです。
この後回しが、BIMの「なかだるみ」とも結びついているのではないでしょうか。
問題が起きてからではなく、問題を起こさないためにはどの段階で、どのような検討をし、そ
れらの情報をどのようにマネジメントして活用していくのか。
普段の社会生活と変わらず建築でも扱う情報の量は膨大になってきています。
ちょうど株式会社白矩の押山さんがnoteに書いていました。
「日本の建築生産プロセスのこれから 座談会」
このような会話をもっと広く様々な立場の人たちでやっていかなければ、いつまでたっても使
えるBIMにはならないのです。