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コラム

木のプレカットを活用した
MURASAKI PENGUIN TOTSUKA

2022.07.21

パラメトリック・ボイス         隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹

三年前から設計を進めてきた「MURASAKI PENGUIN TOTSUKA」が先日竣工した。
近隣の開発にともなって斜面の途中に生まれた狭隘な敷地に、託児施設とスタジオを持つ施設
をデザインするプロジェクトである。

託児施設というプログラムを考慮し、敷地に投げ出された積み木をイメージしたデザインを
行っていったが、敷地形状が特殊かつ狭隘であることと、積み木をイメージしたボリュームが
イレギュラーな形状となっていったこともあり、細かい部材で建物を構成出来、搬入が比較的
容易な在来木造を構造方式として採用した。

敷地内に十分な作業スペースを確保できない中でイレギュラーな形状を成り立たせるため、プ
レカットによる部材管理を行い、現場での加工を極力避けるように検討を進めた。数寄屋建築
に代表される、古くから続く在来木造も工場で部材を刻んで仮組みを行い、現場ではほぼ組み
立てのみを行うという方法を取ることが多いので、特に新しいものではないと言えるが、今回
は仮組みをしている余裕がなかったことと、複雑な形を間違いなく実現するという点において、
加工前の図面調整にはかなりの時間を要した。
各部材の取り合いが三次元的であったことから、2Dの図面のやり取りはほとんどせず、プレ
カット業者と3Dモデルを直接やり取りしながら仕口の形状を確定させていった。

通常はハウスメーカー等の住宅用のプレカットが多くを占めることから、製作業者サイドとし
てかなり異質なモデルのやり取りであったと想像するが、木のプレカットはモデル化から部材
の製作までが鉄骨製作と比較しても極めてシステマティックに構成されており、正確な部材が
製作され、建て方もあっという間に終わった。
小径木材のプレカットを活用した物件を担当したことは始めてであったが、3Dモデルのやり取
りから建て方までの流れは非常にスムーズで、現在の建築業界の中でもかなり自動化が進んで
いる項目であると感じた。

昨今、耐火木造による高層建築物、大規模建築物が話題となっているが、3D管理によるプレ
カット技術の進化がますますこの流れを加速させていくのではないかと考えた。

名城 俊樹 氏

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長