BIMは厄介だけど魅力的
~BIM-ECコンソーシアム近況
2022.08.02
パラメトリック・ボイス
スターツコーポレーション / Unique Works 関戸博高
ArchiFuture Webの読者のBIMとの出会いは、人それぞれに結構面白いエピソードがあるので
はないだろうか。なぜなら出会ってしまったが故に、別れられない人間関係に似ている気がす
るからだ。BIMは厄介だけど魅力的な相手といったところではないだろうか。
私のBIMとの出会いは突然だった。
時が経つのは早い。今から遡ること11年前(2011年秋〜)、カンボジアの首都プノンペンに、
不動産仲介会社を作ると同時に、自社直営のホテルを建設しようと土地探しをしていた。売り
ものの土地が出ると、何度も現地へ飛んだ。今思えばコロナ禍前は海外が身近だった。
一年近くかかったが、やっと良い土地が見つかり設計に入った。基本設計までは東京で行い、
実施設計以降は、カンボジアの実情に沿った設計や言葉をクメール語にする必要があったので、
現地の設計事務所にお願いすることにした。いくつかの設計事務所と面接をして選んだのは、
Archetypeプノンペン支店(本社はホーチミン)だった。そこで初めてBIMと出会い、ショッ
クを受けた。いや、もうすこし正確にいうと建築雑誌でBIMの概要は知ってはいたが、仕事で
は初めての出会いだった。その事務所でBIMを使った設計作業を見て、直ぐに自社のCADを全
てBIMに切り替えることにした。それほど私にとって魅力的に思えた。
開発途上国なりに着工まで日本では考えられないことが色々あったが、直営での海外現場が初
めての社員たちの奮闘努力の末、2018年秋に無事完成した。ホテルの経営もコロナ禍でも現
在順調に経営できており、施工のために現地に設立した建設会社は、カンボジアの若者達に
よってBIM入力センターとして東京・沖縄と連携しながら機能している。
この一連の経験の中で思ったのは、個人でも組織でも、過去の成功体験(例CAD)が、仕事の
環境が変わってもそれを温存する方向へ働き、新しいものへの挑戦を妨げることが多々あると
いうことだ。話が長くなるので、これについては別稿で。
その後、BIMをデータベースとして扱うことを目指し、BIMとFMの連携から始めた。4年前か
らはBIM-ECを実現すべく、コンソーシアムを立ち上げ、参加企業の人たちと共に企業間の情
報連携を推進している。実際BIMは、奥が深く厄介さはあるものの、その魅力に変化はない。
ここで前号に続きBIM-ECコンソーシアムの近況報告を兼ねて、その魅力をお伝えしておきた
い。
現在参加企業数は32社、今期中に50社まで増やし、BIM活用レベルの向上とBIM-ECの将
来の利用者層の裾野を拡げたいと思っている。恐らく国内の建設関連の個別企業の枠を超え
て、BIMデータを実務として連携させようとする試みとしては、このコンソーシアムが前の方
を走っているのではないだろうか。その進め方(出来ることからデファクトスタンダード化を
目指す)や情報連携技術の到達点を発信していくことで、このコンソーシアムへの関心が高ま
り、参加希望者が増えることを期待したい。
さて、今期の目標は、システム構築のPoC(システム検証)を実行するための準備と着手、
そしてPoCの進み具合によるが、来期以降のシステム開発の見通しを立てることである。
5月中旬より、全会員による週一回の勉強会を行なっている。会員企業のBIMの取組みの実態
把握やこれから進めていく上で不足しているBIMに関する知識の習得、そしてPoCに入る前の
要件定義作成の下地づくりである。
そのための推進テーマは2つ。
① 属性情報整理(BIM-ECシステムに連携する、各社が持つBIMデータ資産の整理と分類)
② モデル化(BIMデータ資産を利用したBIMモデルの作成)
勉強会の進め方は、建築・設備・システムコードの三分科会方式で、出席率は高く、意見交換
も活発である。直近で行われていることは、建築と設備分科会は標準内訳書の整理と項目の選
別、システムコード分科会は分類コード(Uniclass、Omniclass)の割り振り方やIFC連携に
ついての問題点の洗い出しを行なっている。当初システム開発は.csvや.mdbなどのテキスト
データでの連携を考えていたが、将来のことを考えてIFCによる連携を目指している。私も
IFCには馴染みが薄く、現在勉強中である。IFC連携によるソフト開発をしている企業などに
講師役をしてもらい、学ぶことがとても多い。
参加企業の調査によると、RevitからIFCへの必要情報出力率は、現時点で約74%ということ
である。その率を高めると共に、最終的には、IFCに出力出来ない情報をどう扱うかを決める
ことが、上期の一つの山場かと思っている。
もう一つ重要なポイントは、上で触れた標準的な分類コードと、通常特記仕様書等に書かれて
いる建材商品の商品コードとをつなぐナンバリング・システムをどうするかである。
以上が現時点の活動内容である。
<追伸>
最近こんなロゴを考えた。
[BIM-FM<🌐 Carbon Neutral]
本稿で触れた「分類コード+商品番号」は、建設が終わればそれで役目を終えるわけではなく、
BIM-ECにより取引されたデータ(履歴)として、FMのプロセスでも活用される。最終的には
その建物が解体されるまで記録として残り、どの様に処分されたかも追いかけることが出来る。
そうなれば脱炭素社会実現に少なからず役立つ可能性があるのではないだろうか。
このようなことを夢想していると、BIMはますます奥深く魅力的に思えてくる。