BIMによる合理的な電源情報の受け渡しの
実現に向けて
2022.10.04
パラメトリック・ボイス 日本設計 吉原和正
長らく電気にとってのBIM活用目的が見出せない状況が続いていたと思うのですが、ようやく
ここに来て、電気の本格的なBIM活用に向けた動きが出てきています。
RUG(Revit User Group)の設備WGには数年前から電気設計TF(現状は電気TFに改名)が設け
られており、細々と活動を進めていましたが、1年前から電気サブコンの方々にもご参加頂く
ようになって、Revitに限らないBIM活用に関する意見交換を進めてきたことで、ここに来て、
電気でのBIMに関する検討内容がより具体的なものになり、議論が活発化してきています。
その議論の中でも、電気にとって一番手間が掛かっている電源情報の受け渡しを、BIMで最初
に取り組みたいものにあげる方が多いため、今回は、このテーマに触れてみたいと思います。
現状、実務で電源情報を受け渡す際には、一応、機械設備の担当者から電気の担当者に、機器
表を介して情報伝達している訳ですが、消費電力については記載していたとしても、例えば、
発停方法や制御方法、インバータの工事区分といった項目は、別図を確認する必要があったり、
会話しないと伝わらなかったりしているのではないでしょうか。また、電気のブレーカー容量
を決定するための要件などは、機器表に記載されていることは余りなく、電気の担当者が、
メーカーのカタログで確認するなど、自ら情報をかき集めていたりするようです。
BIMを活用することで、現状の混沌とした電源情報の伝達を、多少なりともスムーズにできた
らと思い、RUGで整備している設備用のRevitテンプレートには、数年前から、機械設備から
電気へ電源情報を受け渡すための、集計表やビューテンプレートが仕込まれています。そして、
上記のような課題を多少は解決できるように、今までの機器表には掲載されることが少なかっ
たパラメータもある程度は包含されています。
ですが、この活用が、吉と出るか凶と出るか。これも使う人しだいというところがありまして。
RUGに参加頂いている電気の実務者の方々と議論している中で、パラメータへ入力する値(パ
ラメータバリュー)が、機械屋さん、電気屋さん、制御屋さん、それぞれの立場の違いによっ
て、その値の意味することが違う解釈になってしまうことがあったり、言葉足らずの中途半
端な情報で変な誤解を生じ、逆に混乱が生じ兼ねなかったりと、色んなことに気づかされま
した(パラメータバリューについては、ArchiFuture Webコラム:外部DB連携で実現するパ
ラメータバリューのデータ管理こそがBIMの真髄を参照)。
単なるBIMのオブジェクト標準やパラメータ標準を定めるだけでは片手落ちで、そのパラメー
タに入力する値(パラメータバリュー)の入力ルールというか、「お作法」を共有することの重
要性を痛感しているところです。
また、実務の視点に立つと、BIMに入力すべき項目は、ある程度絞っておく必要性があるとも
思っています。例えば、インバータの工事区分だったり、連動でも電気工事で盤内連動するの
か自動制御工事でソフト連動するのかといった内容は、機器1台ずつで仕様が異なる訳ではな
いため、わざわざBIMオブジェクトのパラメータに値を入れるのではなく、標準工事区分図や
特記仕様などで記載した方がシンプルで分かりやすく、この方が、変な混乱が生じなくて良い
気がしています。
BIM的な理想論に陥ると、逆効果になることも多いため、実務者の視点で現実的なBIM活用方
法を確立すべき時期に来ていると思っているところです。
設備と電気が、制御系も含めて、今までの曖昧で混沌とした電源情報のやりとりを、BIMを
きっかけに合理的な業務プロセスに移行できるように、実務の最前線でBIMに取り組んでいる
メンバーを中心に、あるべき「お作法」を共有し、設備・電気の技術者自らがBIMを合理的に
活用できる状況を切り開けていけたらと思っている今日この頃です。