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コラム

プロジェクト/BIM/経営・・・データの関わり方について考えてみる

2022.11.10

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

効率を阻害している原因はなにか?
私たちは20世紀型の仕事の進め方からなかなか脱皮できないでいる働き方改革で苦労して
いるのもこの辺に原因がありそうなのだが…。
21世紀になり、私たちの周りにはBIM、コンピューテーショナルデザイン、3Dプリンター、
ビッグデータなど、様々な構築手法や思考方法が出現し、設計現場ではコンピューターが人に
代わって多くのことを生み出してくれている。コンピューテーショナルデザインは魅力的アイ
ディアをかたちづくり、3Dプリンターがそれを確認する時代であるしかしながら肝心の人
の働き方はどうだろう?あまり大きな進展は見られない。なぜだろうか?…が、今日の話題。
 
働き方は、仕事の進め方であり、プロジェクトでいえばプロセスに相当する。
現状、プロジェクトプロセスはこのように進められているのではないだろうか。
① 何らかのガイドラインやマニュアル、あるいはチェックリストなどに従って進める。
② プロジェクトデータはプロジェクトごとに整理している。
「プロセスやデータ〈すべて〉が一元管理されている。」…実はここに業務効率化を阻害して
いる思い込みと改善点がある。

プロジェクト運営の視点から〈運営の効率〉
実際のものづくりの現場からはこのような声が聞かれる。
「プロジェクトフォルダには、たくさんのデータがあるが、実際に活かされているデータは少
ない。」「多くのデータやマニュアルやチェックリストは、独立して連動していないので、利
用者が横並びにしたうえで、時間をかけてチェック・検証をする。」要するに、使えていない
のである。原因はシンプル。それぞれ確立はしているが「つながっていない」ところにある。
ではどのような環境がベストなのか?

つながるデータの必要性…
利用者が一つのデータベースにアプローチする。そこにはプロジェクト進捗に必要なあらゆる
データ〈例えば、設計与条件、クラインと要求、法規制、調査内容、課題、記録、スケジュー
ル、経費、リソース状態、その他…など〉が結びつきながら存在する。設計者はその中から、
設計者は使いたい情報を取り出す。いろいろなデータが連携しているため、アクセスも簡単で、
結果的に利用者は確認手間や時間を省力化することができる。使えるデータ=「つながるデー
タ」なのである。

つながるデータの仕組みとは
とは言っても、つながるデータとはどのようなイメージか?
建築設計者目線からWeb上でワークフローがつながるSaaSがある。AMDlabがサービスするDDDDboxである。建築設計に特化したNotionやタスク管理ツールのようなもので、タスクや
スケジュールに加え、BIMモデルも一連のワークフローに紐づけられている。
まずは、設計プロセス手順に沿ってデータをインプットするところから始まる。なかでも法規
関係の申請手順は設計業務の基本なので、これを採用しているところは面白い狙いである。法
規制や基本的チェックリストに従い入力すれば一定のプロジクトデータ基盤ができあがる
若手のプロジェクトマネジメント教育にも使えそう。あとは、社会やクライアントからの条件
をカスタマイズして入力すると、すべてが連動している状態のプロジェクトプロセス資料「カ
ルテ」になる。仕組みは、可能な限り自動蓄積するため、「無意識の無駄な時間」を省き、時
間的負担を削減する。
一方「カルテ」とつながるWeb-BIMは未完の部分もあるが、クラウドで扱えるためハンドリ
ングが良い。さらにAPIにより他分野(ex.積算や施工)との情報共有も可能である。入力する
データ量も少なく、設計者が扱いやすいBIMと感じた。今後の熟成に期待したい。

プロジェクトも経営も一つのデータに!
つながるデータを利用したプロジェクトマネジメントは、すなわち人材・経費マネジメントで
もある。マネジメントは予測できるところにその価値があり、効率化に結び付けることができ
る。適切な予測による最適なリソースの配置と活用は知識集約型の働き方につながる。設計者
にも余裕をもたらし、組織モチベーションを向上させ、活力ある環境づくりにも寄与する。
今回は、働く環境や手法、BIMそして経営にデータの関わり方が大きな影響を及ぼすことに触
れた。21世紀型のゆとりのある働き方を実現するには、「つながるデータ」を扱う能力やスキ
ルが必要であるし、今後を生き抜くためには、さらにすべての「つながる…」を意識しなけれ
ばならない。データも、建築も、まちも、人も。

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所 取締役 副社長執行役員