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コラム

他山の石とすべし

2023.03.02

パラメトリック・ボイス
              スターツコーポレーション /
Unique Works 関戸博高
 

これを他山の石とせずしてどうする。
あまりに腹が立つので顔文字でも表現しておきたい ヽ(`Д´#)ノ。
ことの発端は先日発表された「COCOA(新型コロナウィルスの接触確認アプリ)の失敗」
についての政府報告書である。日経新聞(2月18日朝刊)には次のように記されていた。
「(河野太郎デジタル相は記者会見で)“政治のリーダーシップが欠如していた”と述べた。
司令塔が定まらず目的や活用体制が不明確なままだったとの認識を示した」コロナ禍
の始めから政府の対応の悪さに「コロナ敗戦」と言われ続け、今回は更に「敗戦」のダメ
押しである。だがコロナ禍は終わったわけではない。いつになったら「敗戦」の連鎖が止
まるのか。念の為報告書原本も読んでみた。これはこれで期待通り(?)責任者不在、反
面教師のモデルと言って良い優等生の反省文になっていた。このまま店じまいしようとし
ているようだが、もしアプリがうまく出来ていたら大勢の人が死なないで済んだかも知れ
ないのに、この報告書には悔恨の念が感じられない。
(蛇足:最近「他山の石」の意味を真逆の「良い見本」と理解している人が多いらしいの
で要注意。注1
私がこの「敗戦」にこだわるのは、本来ならその中核に理論や責任(者)なりが存在し、次
への対応をすべきところに何もなく空白しかないことそしてそれに似た構造の「敗戦」
が日本の社会や組織で繰り返し起こっていると思っているからだ。失敗から得られるマネ
ジメント能力の研磨も次に打つべき理論も戦略戦術もそこには無い。
 
この2月初旬あるフォーラムで戦略的BIMデータ連携を目指してといういささか大袈
裟なテーマで講演をした。そこで話したことだが、BIMデータのステークホルダーと言え
る存在として①市民・発注者、②企業・建設業界、③政府・国交省、④大学・研究法人が
あり、分類コードを作る主体になれそうであるがなっていない。そこで私は添付の図1の
ように中核は空白で、あるべき「戦略・組織・実行」が存在しないことを、「ミッシング
リンク(Missing-link)のようだと表現したこれから発見されるかもしれないという期待
を込めて。
ここで「ミッシングリンク」とは、「生物の進化過程を連なる鎖としてみた時に、連続性
が欠けた部分(間隙)を指し、祖先群と子孫群との間にいるであろう進化の中間期にあたる
生物・化石が見つかっていない状態を指す語。失われた環とも。」(出展元:Wikipedia)の
こと。つまり図のように「あるべき所にあるものが無い状態」で、構造的に似たものに思
えたからだ。

図1:データ連携の社会インフラ及び実行組織を!

図1:データ連携の社会インフラ及び実行組織を!


この辺りのことを堂々巡りのようにArchiFuture Webに書き続けているがいつまでも嘆い
ていてばかりはいられない。やろうとする道筋に分類コード構築の「戦略組織実行」が
無いからには、やるべきことは明白だ。以前からBIMは社会的存在だというのが私の持論で
ある。それは社会のためのものであり、また社会が支えてくれる存在でもある。BIMのため
の分類コードが日本で実用的になっていないなら作ることを考えよう。それを支える組織と
して企業に期待は出来ないが、無ければ企業を超える人的ネットワークによるやり方を考え
よう。資金が足りなければ出してくれる人や組織を探そう。収益を心配する人もいるだろう
が、それは未だ早い。インフラが出来上がれば、才覚次第で新しいビジネスは限りなく出て
くるはずだ。ArchiFuture Webの読者にそのような才覚の持ち主はいないだろうか。いずれ
にしてもこの原稿がサイトに載る頃には、その一歩を踏み出していたい。
 
BIM-ECコンソーシアムの現状も書いておきたい。理由は個別企業が新規事業を立ち上げて
ビジネスとしていくのとは異なり、若い人達に
①分類コードというインフラのような公共的なものを
②多くの企業(人)と共にコンソーシアムという組織を運営しながら作っていく
③珍しいプロセスを、知っておいてもらいたい
からだ。
2月半ばに臨時総会を開催、規約を改定して実証実験(PoC)に入ることを決議し、その資金
の目処も立った。PoCの中心テーマはIFCを使ったビューア機能、データ連携と内訳書等の
アウトプットの確認である。その為の準備として既にBIMモデルの作成と必要な分類コード
の作成をUniclass2015で着手している一方でPoCと並行して本開発に向け事業性費用
算定・開発組織や運営組織のあり方・資金調達方法などの検討を行うやることは山積して
いる。

図2:PoCの開発範囲

図2:PoCの開発範囲


もう一つコンソーシアムとしての大切な課題は会員企業の拡大である。現状30社規約改正
時に増減があり3月末に向けて合計50社に増やそうとしているそのための説明会を3月中
旬に福岡で開く友人の助けもあり九州の設計事務所ゼネコンサブコンなど20社近くが
集まってくれる。他にも大手金融機関も興味を持ってくれ企業紹介に協力してくれることに
なった。全国のゼネコンサブコンにコンソーシアムに是非参加し、BIMリテラシーのレベ
ルアップをしてもらいたい。日本の建設業の労働環境から言えばBIMの活用は待ったなしで、
やるなら人材確保と教育に時間が掛かる為、早い方が良いに決まっている。いずれにしても
経営トップの早い判断が必要だ。ここに書くことで読者の皆さんに自社の経営トップに伝え
てもらえることを願っている。

関戸 博高 氏

Unique Works     代表取締役社長