海外設計事務所における建設のためのコンピュテーショナルデザインとBIM
2023.04.04
パラメトリック・ボイス
コンピュテーショナルデザインスタジオATLV 杉原 聡先日3月4日~7日にかけて建築情報学会WEEK2023が開催され、その一環で年次学術交流
大会ラウンド・テーブル・セッションが行われた。
今回のコラムでは、そこで筆者が企画して行ったセッション「海外設計事務所における建設
のためのコンピュテーショナル・デザインとBIMの実践 」について記す。
このラウンド・テーブル・セッションでは、ザハ・ハディド建築事務所でシニア・アーキテ
クトを務めるPing-Hsiang Chen氏と、元UNスタジオ、ヘルツォーク&ド・ムーロンの井上
修輔氏を招待し、元モーフォシス建築事務所の筆者の3人で海外の建築事務所におけるコン
ピュテーショナル・デザインとBIMの実践について話し合い、その模様がYouTubeでライブ
配信された。
Ping-Hsiang Chen氏は、ザハ・ハディド建築事務所による深圳福田金融技術タ
ワー(Shenzhen Futian Financial Technology Building)について講演して(図1)その
設計プロセスについて説明し、ファサード設計と社内外の協働プロセスのために、設計変更
に応じて環境や合理性評価のためのデータ生成や、窓やルーバーのユニットの分類、部材リ
ストなど各種エクセルの表の生成などを、サーバを経由して自動生成するグラスホッパーを
中心に組まれたシステムについて解説した(図2)。
井上修輔氏はUNスタジオによるラッフルズ・シティ・杭州プロジェクト(図3)における複
雑な曲面のファサードの、エクセルによるデータベースとCATIAを用いた合理化のプロセス
について説明し、ほぼRevitだけでの設計・施工・管理を試みたヘルツォーク&ド・ムーロン
によるロシェ・タワー2プロジェクト(図4)について解説した。
筆者は建設のためのコンピュテーショナル・デザイン手法の種類を以下のように整理し、そ
れぞれの手法を具体的なプロジェクトの例を挙げて説明した(図5、6)。
- 設計の合理化(Post-Rationalization)
- 形態合理化
- パネル化
- ユニット化
- 最適化
- 合理要素による設計(Pre-Rationalization)
- モジュール構成
- データ・コミュニケーション
その後の3人による議論では、誰がどのようなワークフローで設計を進め、どのようなデー
タのやり取りをし、どこをどう自動化するかと言ったコンピュテーショナル・デザインや
BIMの枠組みを、事務所ごとまたはプロジェクトごとに、どのような過程、段階、タイミン
グで構築したかについての話や、多くの協働者が関わるときの枠組みの柔軟性や、設計の自
由度と枠組みの厳密さのトレードオフの問題、また枠組みを作った人間が不在になると枠組
みが機能しなくなったり、一度枠組みを作ると新しいソフトウェア環境への対応が困難にな
ると言った枠組みの永続性の問題などについて話し合われた。
このラウンド・テーブル・セッションは英語でライブ配信が一般公開された後、アーカイブ
動画が建築情報学会会員限定で公開されている。興味のある方は是非学会に入会して視聴頂
ければ幸いである。