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コラム

グリーン水素、頑張れ!!

2023.04.13

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

今春は、卒業式と入学式の両方で桜花が見られた。初めての経験。ちょうどこの時期に関西へ
の出張があり、桜が満開の中での旅程となった。出張帰りの次の日にも宵の花見があり、桜花、
春花の満喫であった。異常気象と言えるのかもしれないが、脱炭素社会の実現が急がれる思い
もあった。
 
この環境下、内燃機関エンジン車の新車販売の禁止を目指していたEUは、二酸化炭素の排出
が実質ゼロとされる合成燃料の使用を条件に販売の継続を認めることで、ドイツと合意したと
いう。
電動化をめぐって日本の自動車メーカーは、多様化した生活スタイルには多様な選択肢が必要
だとしている。EUはEVの普及をいち早く打ち出していたが、今回、W/コロナやウクライ
ナ侵攻も影響してか、EU各国の意向も汲み方針を転換した。今後、日本の自動車メーカーの
戦略の転換があるのか、興味深い。
 
ただ、合意条件の合成燃料の使用は、既存のエンジン車などで利用できるものの高コストと多
量生産が課題だという。
合成燃料は、二酸化炭素と水素を合成して製造され、燃料として使えば二酸化炭素を排出する
が、大気などから二酸化炭素を回収してつくるため排出は実質±ゼロとされている。
ドイツは、2035年以降も二酸化炭素の排出が実質ゼロの燃料だけを使うエンジン車の新車販
売に道を開くものだと歓迎。ヨーロッパでは各自動車メーカーがEVシフトを進め、業界や一
部の国からは、エンジン車の販売禁止の雇用への影響やバッテリーなどに必要な原料の調達が
中国に依存していることに危機感も出ていたともいう。
今回の合意は、EV普及をいち早く打ち出したEUの従来の方針を転換する形になり、自動車
メーカーの対応が注目される。日本の誇るべき世界で唯一の技術であるロータリーエンジン復
活も期待出来る。
 
片や、水素エネルギーが研究・実験段階から現実的利用に進んでいるという。水素には、グ
レー水素、ブルー水素、グリーン水素があり、これらは、水素の製造方法の違いだという。グ
レー水素は化石資源から水素を抽出しCO2を排出する。ブルー水素は化石資源から水素を抽
出しCO2を回収・処理し大気中に放出しない。グリーン水素は再生可能エネルギーを利用し
て水の電気分解で水素を製造しCO2を一切排出しない。
カーボンニュートラルに向けては、グリーン水素が最も評価されている。この製造方法に進化
が見られ、再着目されている。日本のNEDOは、運搬や貯蔵を目指した水素タンクを計画。
水素タンクは、日本各所で民間を含め進められているという。
トヨタや川崎重工がこの水素に力を入れているのは知られているが、トヨタは、ル・マン24
時間レースに液体水素自動車を参戦させる予定だという。ル・マン24時間レースは、フラン
スで行われる自動車耐久レースであり、サーキットの24時間の周回数を競う。
液体水素のメリットは、体積辺りのエネルギー密度の濃さにある。液体水素カローラには、従
来の水素カローラの2倍近い量の水素を搭載できる。一方で、水素を液化するにはマイナス
253℃以下の超低温化が大きな課題だという。
今回のトヨタの液体水素エンジンは、トヨタのカーボンニュートラルに対する「マルチパス
ウェイ」という考え方が反映されているという。目標に向かって様々な選択肢を用意する考え
だ。増してや水素のマーケットもケタ違いで、1,460兆円とも試算されている。デジタル化や
AI利用、ロボット化などで加速度的に進む可能性もある。各国も力点を移しつつある。
 
一方、朝日新聞によれば、東アフリカ諸国では、日系企業も参加し、小規模な発電設備や再生
可能エネルギーの展開が著しいという。
ナイロビ発のスタートアップ企業のM-KOPAは、小額の返済で、電気の恩恵やテレビ、ラジオ
などがセットで設えられるという。ケニアの未電化地域は、30%も残っているともいう。地熱
発電も活発に開発され、全発電量の40%を超える規模となっている。大きな課題は、送電網の
確保だという。日本の協力に期待したい。
 
最後に、何か心に隙間風を感じると共に興味がわく記事があったので、書き留める。
自分の考えや話し方を自分の分身のクローンロボットに覚えさせ、死後に残し、人工知能の
AIを使って本人の声や読み方、考えをChatGPTの個人版のごとく、死後に考えなどを本人の
声と言い回しで聞き出すことが出来るという。このようなクローンロボットが各社で販売され
ている。悪用されることも想定されているようだ。
量子コンピュータの展開やシンギュラリティ、ChatGPT、BIMの展開なども興味を引くが、
得体のしれない不安感もある。これらの動向も含め、大きな転換期にある今を楽しみながら見
つめていきたい。

    写真1 ル・マン24時間レース ©United Autosports
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    写真1 ル・マン24時間レース ©United Autosports
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 写真2 ル・マン24時間レース ©Alessandro Prada
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松家 克 氏

ARX建築研究所 Gr.代表