ようこそ、髙木秀太事務所へ(後編)
2023.12.12
パラメトリック・ボイス 髙木秀太事務所 髙木秀太
こんにちは、髙木秀太です。今回のコラムは前回から続く「ようこそ、髙木秀太事務所へ」の
後編となります。後編のテーマは「デジタル×建築設計事務所×副業」です。髙木秀太事務所
は建築とデジタルのプロだからこそ、副業を大々的に推奨しています。デジタル世代の現代に
おいて、これらの組み合わせは相性が良いと信じているからです。僕らはヒトとして縁や絆で
結びつけられた「デジタルチーム」です、なので、そこから離散的に派生した個人の活動が高
度に発達したデジタルネットワークを通じて相互に影響し合わない訳がないのです。生成系AI、
メタバース、デジタル教育、学習Webサイト、3Dプリント、プロダクトデザイン・・・髙木秀
太事務所本体ではまだ扱ってないような沢山の面白そうなプロジェクトが、私の知らないとこ
ろで副業として展開されているようです。そして、それらがいま再度髙木秀太事務所に戻って
きて、さらなる相乗効果を産んでいます。さあ、それでは、今回もスタッフに大いに語って貰
いましょう。
***
それぞれの個人としての仕事
髙木事務所では副業を推奨しています。フルフレックスタイム、フルリモート、週間勤務日数
の調整が可能、と非常に自由度の高い事務所です。この環境の中で、それぞれ個人の持つ仕事
内容や働き方について話してみました。
布井 翔一郎(以下「布井」):私は本業とは別に、非常勤講師を2つほど受け持っています。
どちらも建築系の学生にデジタルコンテンツを教育しています。1つ目は、大学の先輩からの
紹介で、専門学校の東京デザイナー学院。2つ目も知り合いが女子大の常勤講師をされていて、
CADの講師にお誘いいただきました。本当にたまたまのご縁ですが、それらを仕事にできたの
は、髙木事務所の副業のしやすさのおかげです。また、個人的に知人と画像生成AIの研究を進
め、大きな企業と仕事ができるような段階まで持っていくことができました。副業を進めるに
あたって契約上、個人事業主では難しい部分があり、最終的には髙木事務所の案件として受け
ました。結果的に副業を本業にスライドさせたということですね。健全に副業でき、且つ、髙
木事務所とも良い関係を築けています。その他にも個人で家具や内装設計の仕事を受けていま
す。
さらに、社内スタジオ。髙木事務所のビジョンの1つとして、個人が最終的には独立し、その
独立した個人と協業することが挙げられます。その足掛かりとするために、2023年11月に社
内で「NOI STUDIO」を立ち上げました。 簡単に言うと、予算や雇用の仕組みは髙木事務所
に依存しつつ、個人の権限で仕事する、というものです。「半独立」というようなイメージ
でしょうか。
竹内 瑠奈(以下「ルナ」):非常勤講師の件はご縁と布井さんの人脈も1つ要因だっただろう
なと思います。でも、画像生成AIの件は0からやっていますよね。人にから頼まれてではなく、
自分からの発信が仕事になるってすごいなと思います。
布井:髙木事務所らしさは継承しつつ、僕らしさを出していきたいですね。スタジオのデザイ
ンは、ルナさんと一緒に作成し、とてもかっこいい名刺ができました。
田野口 貴成(以下「田野口」):私もいくつか自分のお仕事をしています。布井さんと一緒
でご縁ですね、とてもありがたい事です。クライアントの規模は様々で、組織設計事務所や大
学の研究室、大学時代の先輩だったりします。要件も様々で、中には初めて触る技術やソフト
ウェアだったこともあります。そういった場合でもすぐには断らず、挑戦するようにしていま
す。もちろん、できること/できないことは初めに正直に申し上げますが。ただ、やってみる
となんとか上手くいくことが多いです。
他にも、自主的なプロジェクトもあります。
例えばGHPythonの独習支援サイト。デジタル技術に興味のある建築学生が主対象で、
Rhinoceros/Grasshopperを通してPythonを学べることを目指しています。「独学で頑張っ
ていたけど、途中で挫折してしまった。」という話をよく聞きます。そのためシンプルさと視
覚的なわかりやすさを心がけています。
本業に話を戻しますが、布井さん同様に髙木事務所の自由な働き方と副業の相性の良さはひ
しひしと感じます。
布井:聞いてると、田野口さんが一番髙木さんのスタイルを継いでる感じがする。誰かの役に
立っている、というか。
田野口:似てると髙木さん本人によく言われます。(笑)
ルナ:私は髙木事務所の仕事以外に、何社かデザインの仕事をしてます。長く継続している大
きいお仕事は2社です。
1社はBUNZABUROさん。京都の絞り染めを中心としたブランドです。Instagramでの私の過
去作品投稿を通してご依頼頂きました。新作のバッグを作ることを目標としていて、素材選び、
サンプル制作、デザイン、見せ方の提案など、ゼロから全ての作業を長期プロジェクトとして
続けています。プロダクトを作ることは今までにあまりなかったのですが、ディレクションも
含めて任せていただき、とても充実したプロジェクトです。
もう1社は東レ株式会社のウルトラスエード(スエード調の人工皮革)の企画デザイン。大学
の時に卒制で素材提供をして頂いた時からのご縁です。ウルトラスエードはシーズン毎に新作
コレクションを国内外で発表しています。社内の方と一緒にテーマを打ち出しながら、私は主
にテキスタイルの後加工やグラフィックデザインを担当させてもらっています。
実はこの一環で、ウルトラスエードの上に3Dプリントを施す案件があり、プリント用の3Dモ
デルの作成を髙木事務所にお願いし、一緒に作品制作をしました。そしてそれがウルトラス
エード 24-25AWコレクションの1つの作品になりました。これまでにないものを制作でき、
パリやミラノの海外展示会での反応も非常に良かったです。
布井:ルナさんの場合は副業で繋がったクライアント側から髙木事務所に依頼するという新し
い形で、 良い関係性を築けたと思います。ルナさんはこのプロジェクトの際は、髙木事務所の
社員ではなく、個人のデザイナー「竹内瑠奈」として僕らと一緒に仕事していましたよね。髙
木事務所に所属しながらも、外部の人間として仕事するという形式も良いですね。
ルナ:髙木事務所の得意分野を入社して理解したので、恐らくこういう内容を髙木事務所に依
頼をしたらより良いものを作れるだろうなというのは様々な場面で思い付きます。それを本当
に仕事として依頼できる体制かどうかや予算の問題はもちろんありますが、可能性が広がるの
で楽しいです。
髙木秀太事務所と私の今後
最後に、3人それぞれの髙木事務所との今後について考えました。
布井:NOI STUDIOで仕事を取ってきて、それを1つの形として しっかり出せるようになりた
いっていうのが、直近で頑張りたいなと思ってるところです。髙木事務所の中で独立するって
いう形がどうなるかというのを実践していきたいですね。その先は独立するか、髙木事務所の
中で働くかだと思いますが、まだ考えていません。一つだけ先のビジョンとしてあるのは、地
方に住むことです。福岡に住みたいです。
田野口:福岡勤務は現状でも工夫次第で実現できそうですね。僕の目標は独立かな。 自分の性
格として、1つの同じことやり続けるのは飽きてしまうので色々なことに挑戦できる環境に身
を置きたいという思いはあります。加えて自分の裁量でやりきれる環境が欲しいなという気持
ちもあります。髙木事務所との関係でいうと、仮に独立したからといって縁が切れるものでも
ないのかなと。
ルナ:今って、仮に自分の個人仕事が全てなくなったとしても、髙木事務所に所属していれば
普通に生きていけるじゃないですか。それは大きな支えになっていてありがたい環境だなと思
います。しばらくはこの働き方で続けたいですが、髙木事務所の勤務日数を減らすなどは、数
年の間にあるかもしれない。それは自分の仕事が増えたり、別のプロジェクトを始めたいとか
なったらですね。
あとは本来は私、大学院に進学したかったんですよ。なのでいつかは進学なども有り得るかも。
ただ、現状すごく良い環境で素敵なお仕事させてもらっていて、流れに乗りたいとも思ってい
るので、それはもっと先の話になるかもしれないです。いつかもう少し自分の作品や研究を見
つめ直したり掘り下げるために学び直す選択肢はあるかもしれない。年齢に構わず、いつから
でも新しいことにチャレンジできる姿勢でいたいですね。
田野口:内(髙木事務所)で働くのと、外(副業や進学)で活動するのをグラデーション的に
決められるイメージですね。
ルナ:一方で思うのは、自分で決めるべき事がとても多いこと。働く時間も場所も、働き方も、
何をするかしないかも含め、全部。髙木事務所にいると、決断力が求められる。結果それが、
私たちはすごく良い効果を産んでいますが、人を選ぶと思いますね、この働き方。
布井:当然ですが、みんな髙木さんと面談して入ってきています。そういうビジョンを髙木さ
んに見抜いてもらってるというか、共有できていたのかもしれないですね。
田野口:一般的な企業とは勝手が異なりますが、他の同僚からも「全く肌に合わない」って話
は今のところ聞かないですよね。髙木さんはスタッフとの関係や働き方を常に思案して、私た
ちに提案してくれます。NOI STUDIOの設立が顕著な例だと思いますし、それが私たちの働き
やすさに直結しているのだと思います。今後どんどん環境は変わっていくと思いますが、柔軟
に対応していける気がしています。
***
いかがでしたでしょうか。髙木秀太事務所はまだ若い事務所なので、日々、「働き方」を試行
錯誤しています。まだまだ五里霧中ですが、それでも、デジタルという頼りになるパートナー
がいれば、きっといつかはそれぞれの働き方の最適解を見つけられると信じています。身体や
距離のスケールを超える「髙木事務所なりのデジタルコミュニケーション」が、強くしなやか
に僕らの背中を押してくれるはずです。みなさんはコンピューターと共に、どんな働き方を選
択していきますか??