ハイスペックパソコンの性能と威力をCADメーカー
が検証<構造システム・グループ>
2023.12.18
建築設計・製図CADの「DRA-CAD」、3次元建築設計ソフト「i-ARM」のほか、構造計算な
どのソフトウェアを展開する構造システムと建築ピボットのグループ2社。ソフトウェアの動
作、また開発のために欠かせないパソコンのスペック向上による効果を確かめるべく、マウス
コンピューターのハイスペックパソコンを試用することになった。
ハイスペックモデルと普段使用しているパソコンで、同じ条件で計算をさせることで所要時間
の差を計測し、その結果を分析。日々の業務や開発に対する効率化を確かめるほか、新しい使
い方への発想も広げる結果となった。
建築汎用ソフトの描画を比較
建築汎用2次元・3次元CAD「DRA-CAD(ドラキャド)」、デザイン検討や法適合確認、環境
解析、設計図書作成が可能な3次元の建築設計ソフト「i-ARM(アイアーム)」をはじめ、構造
計算や耐震診断など建設業に役立つソフトウェアを豊富にラインナップする、構造システムと
建築ピボット。両社は、国内生産でエントリーモデルからハイエンドのパソコンまで揃えるこ
とで知られるマウスコンピューターにハイスペックパソコンの貸し出しを受けて試用すること
になり、ソフトの運用、また開発に伴うパソコンの処理速度を主に検証した。
今回試したのは、ノートパソコンの「DAIV N6-I9G90BK-A(以下、DAIV N6)」とデスクトッ
プパソコンの「DAIV FX-I9G90(以下、DAIV FX)」という2種類。「DAIV N6」は3DCGや
CADなど高負荷な作業にも適したノートパソコンで、「DAIV FX」はRTX 4090を搭載したデ
スクトップパソコンだ。どちらとも、ハイエンドクリエイター向けのパソコンである。
建築ピボットの黒沢隆史氏は「DRA-CAD自体は建築設計者が使う汎用CADソフトで、いまの
ところCPUの性能に依存した描画の処理をしています。そのため、処理速度が速いパソコンの
ほうが軽快に動きます。検証したところ、試用したパソコンでは、かなり速い結果が得られま
した」と黒沢氏はいう。比較したパソコンは、DAIV N6とDAIV FX、そして黒沢氏が普段使用
している開発用のメインマシンのデスクトップパソコン(CPUはCorei7-9700K)と、自宅の
パソコンの計4台である。
描画速度の検証を行うと、データ量の大きなケースでは、ほかのパソコンで4秒ほどかかった
ものが、マウスコンピューターの2台のパソコンでは2秒を切る結果となった。半分ほどの時間
になるというのは、インパクトが大きい。「DRA-CADでは3次元のモデルデータをレイトレー
スする機能もあり、レンダリングもしてみると、ほかのパソコンでは10秒ほどかかるデータの
処理が、2~3秒で済んでいます」と黒沢氏は語る。
BIMソフトでも計算処理時間は半分以上圧縮
i-ARMでは、DAIV N6と、スタッフのノートパソコンの2台で比較検証を行った。計算処理に
時間がかかる日影計算と日影図の作成が、スタッフのノートパソコンでは37分ほどかかるもの
が、なんと約14分ででき、半分以下の時間で完了していることが見て取れる。「省エネルギー
計算のソフトでも計算に時間がかかるので比較したところ、80分や90分かかる処理が、40分
ほどで済んでいます。スペックの分だけ早くなっていることがわかる結果となりました」と
黒沢氏はいう。
また、ソフトを開発するための開発ツールでも検証したところ、現在黒沢氏がメインで
使っているデスクトップパソコンで20分ほどかかる処理が、約6分で済んだのだ。黒沢氏は
「DAIV N6で6分、DAIV FXでは5分45秒で、15秒ほどの差となりました。ノートパソコンで
もデスクトップとほぼ遜色ないスピードが出ていることに驚きました」と語る。
「私たちが定常的に取り組んでいるプログラム開発で、検証するためにプログラムをつくり、
ビルドしてテストするサイクルを繰り返しますが、この時間が半分以下になるというのは素晴
らしい。この結果を見れば、私たちだけでなく多くの会社が導入を検討したくなるはず」と
黒沢氏。
マウスコンピューターでは、ノートパソコンに独自の外付け冷却ユニット「水冷BOX」を付加
することで水冷環境を整え、パソコンの冷却ファンの回転を抑えて騒音を最小限に抑えること
ができる。黒沢氏は「後付けの水冷機は初めて見ました。DRA-CADでも、図面を表示するたび
にフルパワーをパソコンにかけるので、何度も繰り返すとサーマルスロットリングによりCPU
の処理速度は遅くなります。水冷BOXはスペースはとりますが、これでサーマルスロットリン
グを発生せずにデスクトップ並の性能が確保でき、いざとなれば外して持ち運べるのはメリッ
トが高いと感じます」という。
スピード以外の印象は、どうだろうか。黒沢氏は「画面は16インチで大きく、ボディが思って
いたよりも薄く感じました。外観では、しっとりとしたブラックは自分の好みで所有感が高ま
りますね。デスクトップパソコンで使われている曲面もハイセンスですし、キーボードの縁取
りしたデザインも好みです」と語る。
構造解析ソフトでも効果を発揮
構造システムの構造解析ソフト「SNAP」についても、マウスコンピューターのパソコンを
使って処理を検証した。構造システムの多田聡氏は、次のように説明する。「特に応答解析は、
地震発生時に時々刻々と変化する応力や変形を解析をするため、数万回も計算を繰り返すこと
となり、建物の規模にもよりますが、立体モデルの計算には相応の時間がかかります。さらに、
一つの地震動に対する計算だけでなく、地震の規模や種類によって複数の解析ケースの検証が
必要となり、解析ケース数に応じて計算負荷が数倍に増加します」。
ベンチマークをした会社で普段使っている平均的なパソコンと比較すると、マウスコンピュー
ターのパソコンでは5〜6割の時間の短縮につながった。「SNAPはGPUを使っていないことも
あり、CPUとメモリの大きさを最大限に享受できました。今回のマウスコンピューターのパソ
コンではCPUが32スレッドあり、並列計算で32ケースの同時解析ができます。並列計算する
ことで、大幅な時間短縮を図ることができるでしょう。日々の業務では、データの作成や編集
にかかる時間よりも、計算の結果を待っている時間が長いものです。この時間をハイスペック
のパソコンで短縮できることは、業務の効率化にダイレクトに通じます」と多田氏は指摘する。
さらに多田氏は「計算専用のデスクトップパソコン単体を用意しオンラインでつなげば、クラ
ウドのような使い方ができるでしょう」と効果的な使い方を提案する。「高いスペックのコン
ピュータのサイズはそれなりに大きくなりますが、日々の業務を行う机の上ではなく別の場所
で管理することで、作業空間を奪われることなく快適に使えるはず。また、一つのパソコンで
SNAPを走らせることは負荷が高いため、計算用に高機能のパソコンを併用することが今後は
主流になるのではないでしょうか」。
多田氏は「解析後の結果を見ながら調整する、グラフを出力するなどの後処理の作業を考える
と、ハイスペックのマシンであれば解析が進行しているときも下処理をするという使い方もで
きそうです。これからエンドユーザーが、さらにうまく活用して業務に使えるようになればい
いですね。そして私たちも、コンピュータのスペックを使い倒すようなソフト開発をしなくて
はならないと思います」と、今回のマウスコンピューターのパソコンの検証を通して、自社の
開発にも大きな影響を及ぼすことを予見した。
上記のマウスコンピューターのパソコンの詳しい情報は、「DAIV N6」のWebサイトおよび
「DAIV FX」のWebサイトで。