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コラム

"推しBIM!"&食わず嫌い?!

2024.02.08

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

迎春!!
今年の元旦は、激震で始まった。夕暮れが迫る頃に能登半島地震が発生し、翌2日夕の羽田空
港での能登支援小型機と大型旅客機衝突火災事故へと連続した。

被災された全ての皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
今後の復興に向けての対策が急がれると共に、一刻も早く平穏の生活に戻れることを心から
願っています建築に携わる専門家を含めた全ての人は復興に出来る限りの協力と支援をと
考えています。
大寒と節分、立春も過ぎ穏やかな春の日が迎えられる事を念願しています。

被災状況の全容は、未だに見えない。断層は横に約90キロに亘ってずれ、併せて、縦に最大
約4m隆起、海岸線と港が陸地化。この現象は、断層地層からおよそ4千年に一度の隆起とも
報道されている多くの家屋や伝統建築が倒壊道路にも大きな被害が見られ亀裂や地割れ、
地域によっては驚愕な様相で捲れ上がり道路の損傷が激しく支援物流にも大きな影響が出てい
る。全ての復旧には数年かかるという。津波による被害も見られる。インフラや通信などのラ
イフラインの断絶と耐震化の遅れなどが重なっているようだ。液状化や斜面崩落による被害も
あり、これに降雪と冷雨、そして寒さが断続的に続いている。インバウンドや観光客の人気地
域、朝市通りの大火災もあった。土砂ダムも心配されているが、国の名勝輪島の白米千枚田も
心配。現状把握と分析や解析には、まだ時間が掛かると考えられるが、建築や土木関連の被害
は、能登半島地勢特有の地震の様相を見せているようだ。平坦部が少ない能登半島では、住居
や店舗、街並みが戻るかどうかの課題。中高生の集団避や少子化と老齢化などへの対応など課
題が山積みのようだ。過疎化対応のコンパクトな拠点構築やコニュニティ全体で移転を図るな
ど新しいダイナミックな発想で思い切ったモデル街拠点づくりが考えられないだろうか。奥能
登国際芸術祭や伝統文化、輪島塗漆器が途絶えるのではと心配でもある。今後はボランティア
も重要で温かい支援になるのだろう。地勢的な課題もあり、能登半島の復興には、多様で大き
な課題解決に、オールジャパンのチーム力が重要だと考えている。今は、リロケーションダ
メージの影響を受けやすい児童や高齢者の対応が望まれる。

本題。今回の原稿は、是非とも聞きたいと願っていた伊東豊雄氏のテレビ番組「最後の講義」
を視聴しながらキーボードを叩き始めた。
振り返ってみるとメディアやIT社会での流行り廃りには、歌やソフト、ハード面、そして建築
デザインで目まぐるしい程の変革や進展などが見られる。デジタルやコンピュテーショナルな
分野とスマホなどだけでなく“ものつくり”やビジネス界、日常生活や食文化、音楽、美術でも
顕著である。小生も多くの変遷と“推し”やブームを見て来た。
食文化では、少しずつ時を刻みながら好みの味覚が徐々に形成され、そして今でも変化してい
る。時には食ブームでの変化もあったようだ。浪人時代に通った吉野屋の牛丼や就職後のケン
タッキーフライドチキンと同じく、マックのハンバーガー、スターバックスを今でも時々利用
している。この中で、特異の味を感じるのが、ピクルスといえる。
今では、和食といわれる日本食や日本のラーメンが世界の食通に人気がある。この様相を誰が
予想しただろうか。インバウンドの多数の外国人が、箸でラーメンや蕎麦をすすり、多くの人
が大好きとコメントしている。食文化は生活感と同じく其々の国の特異で何万年もかけて熟成
された文化である。このインバウンドの人の姿は想定外といえる。

話は跳ぶが、昨年の暮れに著名な大先輩の手料理と獺祭を御馳走になった。"味わう獺祭"は、
山口岩国の人里離れたある蔵元製造で小さな酒蔵を名乗り2010年には廃業寸前までいった旭
酒造今年の9月に「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」をオープンさせた次は、ワイン本
場のフランスのパリだという。経験と勘で杜氏が造る日本酒つくりとは一線を画し、数値化と
データ管理での造酒だという。
味覚は、生活のスタイルから長い時間を掛けて出来上がる文化であり、各国の文化の基礎でも
ある。海や山など、育った環境で大きな差異がある。始めて口にする食べ物には、不安もあり
恐怖も人間を含めた動物にはある。クジラや犬、蟻、バッタ、蜂の子などの昆虫を食べる・食
べない文化。今ではアメリカでも認められたソイソースと呼ぶ醤油が一般的になっている。ウ
イスキーやビア、ワイン、テキーラ、ウォッカ、日本酒などの嗜好文化の違い。日本でも明治
以前は仏教の影響もあり、獣肉を食べなかった。日本では江戸末期のももんじ屋から明治に
なってジビエという名称で健康に良いとのことで食べ始められたという。今では神戸牛や近江
牛など世界的で一番美味いといわれている"牛ステーキ"や"すきやき"がある。ヨーロッパや北
米の食文化では鯨は食べない。40年くらい前のミャンマー訪問時にタガメのフライが食卓に
並んだ。東南アジアの昆虫食文化。食べられなかったのも食文化の違いと感じたが、今では、
SDGsの環境の下で、日本の若い人が積極的に開発と挑戦をしているという。動物や植物類、
魚類、海洋生物類は自然環境変化への対応能力があり、多くの種を持つのに比べ、人類は、こ
れら生物と比較すると対応力が極めて低いにも拘らず、食わず嫌いでもある。小生の友人の父
親は、キッコーマン醤油の初めての営業マンとしてLAに赴任した。小学校では、醤油臭いと
苛められたという。今では当たり前にアメリカのスーパーで棚に並んでいるが、草創期の苦労
は大変だったと推察される。

生成AIとBIMは、食わず嫌いの人が初めて手を出すのに勇気がいるのに似ているようだ。周り
の様子を見ながら少し手を出し、また様子を見る。食文化と同ように時間が掛かる。今では、
ナパバレーや山梨、南米が世界のワイン地図を塗り替えている。このことも今迄の飲食文化を
根底から変革しているといえる。同様に全てのイノベーションは食わず嫌いの中で、哲学と
アートから始まるともいう。

最後に、昨年の日本の一人あたりのGDPは、世界で31位。国内総生産のGDPは、世界3位、近
年中にドイツに追い抜かれる予想であり、次にインドが追い上げている。車の販売台数もイン
ドが中国、アメリカに次いで世界3位となった。今後の日本は凋落の一途を辿っているのだろ
うか。この震災を契機に新しい日本の発展の姿を期待している。
片や能登では、「奥能登国際芸術祭」が2017年から開催されている。昨年の秋には、5万人が
訪れたという。参加されたアーティストとサポーターと鑑賞者で、是非とも再開出来ることを
期待し熱望している。

追補明るいトピックス日本で新発想のAIスキルが、最近発表された。小さなAIをつなげ大
きな成果を生み出そうという発想で投資額を抑えて成果を大きく出来る日本モデルだという。
イワシが群で大きく見せ大魚から命を防御していることをヒントに名づけられた"サカナAI"
に期待したい。
併せ、日本初の月面への「SLIM」着陸と調査、珠洲市の「海浜あみだ湯」が再開。能登空港
の運航とバス運行も一部で再開仮設住宅の準備を進みつつあり最初の仮設住宅が完成した。
電気も大部分の地域で今月中に停電が解消されるという。漁業も一部で再開。教育もモチベー
ションを高めながら再開した。
諦めるな!
無理せず、平穏な能登へ一歩一歩、オールジャパンのチーム力で前進しよう!!



 

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表