Magazine(マガジン)

コラム

G検定のおトクな突破法

2024.03.12

パラメトリック・ボイス                                   竹中工務店 / 東京大学 石澤 宰

1年ほど前、こちらのコラムでLEED試験に関して書かせていただいた際、最後に「G検定も
やるつもり」というようなことを書きました。実際、その後3月に受験をし、合格するに至っ
たものの、そのうち体験記を書こうと思っていたら年が明け、気がつけば1年が過ぎ、時々こ
こに登場する私の長女も4月には小学一年生です。博多華丸さんに「よその子とゴーヤは育つ
のが早い」と言われそうですが、これ以上溜めるとゴーヤどころでは済まなくなりそうなので
今回はそちらの話を。

私のまわりで建築を主軸に活動している人々から時々聞かれる声は「もっと情報処理について
学んでおけばよかった今からでも勉強したい」というものです。ITまわりには様々な資格が
ありますがそれぞれ本業の人々にとってのスキルアップ・キャリアアップのためのものなの
で、実際に受けようと思うとなかなかにハードルが高く感じたり、あるいは実務にどうやって
活かそうかと悩んだりするかもしれません。そうした方々への一つの選択肢としてG検定は悪
くないかもしれない、と考えています。

JDLA Deep Learning for GENERAL(通称 G検定)は、一般社団法人日本ディープラーニン
グ協会
が実施するAIに関する検定試験および民間資格であり、公式ウェブサイトによれば、
ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識
を有しているかを検定するものとのこと。別名ジェネラリスト検定とも呼ばれます。その意味
するところは、ディープラーニングの細部を理解し自力で開発できるようになるためのもので
はないということで、その目的のためには上位のE資格というものが用意されています。

じゃあ何のために必要なんだ、という疑問はもっともですが、この領域を概観したうえで一揃
いの知識を身に着け、次々と開発される技術がどの系譜に位置づけられるものなのかを理解す
るには非常によいと私は考えます。


新技術について理解を深めようと検索すると様々な解説サイトが出てきますが、その解説を読
んでもむしろ疑問が深まってしまったり、知らない言葉だらけで途中で読みきれなくなってし
まったり、ということはいかにもありそうです。私などまさにそうでした。それを脱するには
教科書のようなものを読む必要があるのだろうと思いつつ、なかなかその機会は訪れない。そ
んなものです。

機械学習などをはじめとする各種の人工知能やそれらを活用したアプリケーションを、自分
で作るとまではいかないまでも、その動作原理と背景にある系譜を理解するためにG検定は向
いています昨今のAIはどのような事情になっていてどんなことに向いていて何は難しいの
かをある程度まで自力で考えられるようになるために必要な知識を身につける絶好の機会で
した。

資格試験もいろいろで知識を暗記してその運用を問うもの知識は持ち込んだ書籍にあたっ
てよいので概念の理解を問うものなど様々ですその点で言うと、標記のG検定というのはや
や風変わりで、「試験中、参考図書を読んでもいいし、オンラインで検索をしてもよい」と
なっています。

G検定の試験形式自体は、ブラウザ上の選択式問題という一般的なものです。そのうえ検索も
できるなら楽勝なのでは?と思ってしまいますが、大きな特徴はその問題数。120分の試験で
220問前後を解く必要があるのです一問当たり30秒強問題文を読んだ上で一つ一つ検索し
たらとても終わりませんつまり、多くの問題には即答が求められ、難問いくらかに対してだ
けしっかり調べて回答できる、というようなものなのです。

上記協会の監修するテキストはあり、それらを含む書籍等も試験中には参照できますが、パラ
パラと捲りながらあれれ~?おかしいぞ~?をやっている時間はありません。私個人に関して
言えば、まとめノートを作って持ち込む方法が1番向いていたように思います。


それでも、G検定は出題範囲が広いうえ、日進月歩の世界らしく、内容もどんどん更新されて
います(そのためG検定合格時に発行される証書・バッジには試験ごとに異なるバージョンが
付番されています)。新しい問題も相応にたくさん出ますので、そうした場合には検索も有効
です。

私は基本的には公式テキストを読み込む形で臨みました。ディープラーニングの系譜などは私
には耳馴染みが薄く、ザッと読めば大体わかるとまでは行きませんが、一読することで大いに
頭が整理されることは間違いありません。昨今流行りの大規模言語モデルはどこから出てきた
のか、それ以外にも現役で重用されているAIにはどんな技術が使われているか、画像データを
相手にどんなことができるのか、などについて人並み以上に理解し説明できるようになるはず
です。

全世界のLEED APまたはGreen Associate保有者と、英語版もありつつ主に日本語で実施され
ているG検定合格者はちょうど同じくらいでいずれも約8万人でありそのためLEEDに比べ
ると勉強法の日本語情報は圧倒的に充実しています。何よりも、LEEDの際は英語版の一問一
答アプリをご紹介しましたがG検定は過去問集を公開しているオンラインサイトが多数あり、
その点ではだいぶ心強いかもしれません。これより先は、勉強法などを詳述しているサイトが
多くありますのでそれらに譲ります。タイトルに戻るとすると、中古でも良いので参考書籍
を購入し自分用ノートを作りながら、オンラインの試験対策サイトで準備する、というのが
こちらではベストプライスかと思われます。今しがた中古書籍の価格を調べたところ、うまく
いけば受験料以外の準備費用は1,000円切りも可能かもしれません。

これに加えてCASBEE建築評価員までやたところで石澤の勉強熱が一段落しているのですが、
CASBEEはテキストの勉強が全てなのでそれほどおトクさに差が出なかったというところで、
今回はG検定をメインにお伝えし、おトク情報を一段落とします。……が、そういえば1年
ちょっと前に「10分ちょいでまあまあわかる フリーで構築する設計スタディ環境(大学スタ
ジオ課題向け)」
(クリクするとYouTubeへリンクします)
という動画を出したのを思い出
しました。これがまた、かなり無理はあるのですがあえて無料でやるとすれば……というチャ
レンジをしてみましたのでよろしければ是非ということで石澤のローコストネタ、またいつ
か。

石澤 宰 氏

竹中工務店 設計本部 アドバンストデザイン部 コンピュテーショナルデザイングループ長 / 東京大学生産技術研究所 人間・社会系部門 特任准教授