全国の建築情報系学生が集まった
「建築情報学生レビュー2023」
2024.03.19
ArchiFuture's Eye 広島工業大学 杉田 宗
3月2日から3月5日までの4日間、建築情報学会の年次大会である『建築情報学会WEEK』が
開催されました。今年が3回目ですが、初のハイブリッド開催として、前半の2日間は東京大学
を会場に様々なイベントが開催されました。建築情報学会の会員はアーカイブ映像にアクセス
できますので、開催期間中に参加できなかった方は是非いろいろなセッションを見て頂けたら
と思います。
今回は『建築情報学会WEEK』の初日に開催された「建築情報学生レビュー」について振り返
ります。
「建築情報学生レビュー」は、「建築情報」に関する学生の研究発表会で、全国の建築情報系
学生が集まり卒業研究や修士研究などで取り組んだ内容を発表するイベントです。年々参加学
生が増え、今年は43組の発表が行われました。プログラムをご覧いただくと分かるように、バ
ラエティに富んだテーマが出揃いました。
このイベントの面白いところは、研究も設計も同じフォーマットで発表が進んでいくところで
す。一応いくつかのグループに分けるために、「デジファブ」や「AI」をキーワードに組み分
けがされますが、その中には研究も設計もフラットに並びます。加えて院生と学部生の区別も
ありません。学部生にとっては少しかわいそうな環境ではありますが、自分の研究内容に近い
最新の研究発表が前後に並ぶことはいろいろな意味で刺激的だと思います。まだまだ建築情報
系の研究室は少ないので、学内の発表会だと沢山の専門家から質問やコメントをもらう機会が
なく、形式的な発表会になってしまう場合が多いと思います。一方、建築学会大会の学術講演
会は学生も社会人も一緒で、しかも時期的なこともあり参加することなく就職していく学生が
ほとんどでしょう。そういう意味で「建築情報学生レビュー」は学生の新たな発表の場として、
建築情報学会の重要なイベントの一つになりつつあります。
また、今回はハイブリッドだったため、会場にも多くの学生が集まり発表を行いました。
過去2回も学生のレベルの高さに驚きましたが、今回はさらに全体的なレベルが上がっていた
印象。例えば、ゲームエンジンを使った火災避難シミュレーションや、セメント系材料を使っ
て粉末造形する3Dプリンタなど、めちゃくちゃ可能性を感じる研究がゴロゴロありました。
これ、実務やってる30代や40代の方々に本当に見てもらいたい。
また、発表後はWEEKの開催をお祝いする「Kick-off Party」が開催され、発表者同士や発表
者と審査員の懇親が行われました。発表だけで終わらず、このような場で情報交換や交流が生
まれることで、学生たちの今後の活動にも大きな影響を与えるのではないかと思いました。
この「Kick-off Party」では優秀発表賞の表彰式も行われました。今年初めて杉田宗研究室の
学生3名が発表に臨みましたが、その内2名が優秀発表に選ばれました。優秀発表賞(学部生
部門)に選ばれた大場風太の作品は、紙を主構造にした茶室。2022年のラフバラー大学との
ワークショップで生まれたデザインを実現させるために、デジタルファブリケーションを活用
して制作した作品です。昨年5月に行われたG7サミットのレセプション会場にて展示した作品
でもあります。また、優秀発表賞(大学院部門)に選ばれた谷口青空の研究は、これまでのコ
ラムでも何度か登場した「デジタルメンテナンス」の研究。維持管理を主語としたデジタルツ
イン環境の構築を行い、それを使ってメンテナンスロボットの制御を試みた内容です。どちら
も研究室を代表する活動が表彰されることになり、指導する側としてもとてもうれしい日にな
りました。受賞者の情報はこちら
しかし、まだ「建築情報学生レビュー」の存在も知らないまま卒業している学生も多いはず。
新しく4年生になる学生には、まずはその存在を知ってもらい、「建築情報学生レビュー2024」
を目標にして2024-2025年度のスタートを切って欲しいと思います。