電気にとって効率化に寄与する形での
本格的なBIM普及に向けて
2024.07.04
パラメトリック・ボイス 日本設計 吉原和正
2ヶ月ほど前になりますが、4/24にJapan Revit User Group(以下、RUG)の RUG総会が開催
されました。
RUG総会は、RUGに参加頂いている方限定の年に一度の総会で、主に意匠・構造・設備の各
WGの活動内成果・活動方針について報告しているのですが、1年間の活動の集大成として
一番貢献頂いた方に、毎年RUG Awardという表彰を行っております(その副賞として、アメ
リカで開催されるAutodesk Universityへの参加・渡航費が授与されます)。
今回はそのRUG Awardに、電気TFでサブリーダーとして活動している2名の方が同時受賞す
る運びになりました。
電気分野でのBIMの取り組みは、他分野に比べて遅れていると言われているものの、RUGの中
では参加者も順調に増えてきておりまして、その取り組みも一定の成果に繋がってきていま
す。3年前のコラムで触れていたことも含めて、具体的な成果となって現れてきていると実感
しているところです。
その成果の一部として、昨年の12月と今年の3月に、RUGの電気TF参加メンバーで電気BIM
に関するセミナーを開催しました。その時の模様がYouTubeに上がっておりますので、まだ
ご覧になっていない方は是非こちらもご覧頂ければと思います。
国内設備業界とオートデスクの業界変革 (第1弾)※クリックするとYouTubeにリンクします。
国内設備業界とAutodeskの業界変革 第2弾
今まで、設備はそろそろRevitでもできそうだけど、電気がまだだからと様子見を決め込んで
いた皆様。ようやくラストピースの電気BIMが、電気にとってメリットがある形でのBIM活用
を前提に、試行フェーズから実践フェーズに移行できる目処がたってきましたので、そろそろ
本格的なBIM活用に向けて重い腰を上げてみては如何でしょうか。
例えば、S4:実施設計後半の図面化においてもBIM活用ができるよう、日本独自のアドインソ
フト(Revit Extension for Electrical Japan)が用意され、回路番号の情報付与や、国内配線
仕様の配線作図が効率良く作成できるようになってきています。
また、電気業界で真っ先に課題としてあげられていた、オブジェクトが無い問題。これについ
ても充実化が図られてきておりまして、汎用的なオブジェクトについてはほぼ揃ってきていま
す。また、仮に意匠や設備がBIMをやっていなくても、もしくは、BIMを開始するのが遅くて
待ち切れない場合でも、電気単独でBIMを活用できるように、動力情報を付与できる2Dシン
ボルオブジェクトも整備して、電気単独でBIMの図面化と電源情報の整理ができる仕組みが構
築されてきています。
さらに、具体的な検討が進んできたこともあって、逆にオブジェクトが多過ぎる(設計として
は)ことの弊害にも気づきはじめており、より汎用的なオブジェクトへの絞り込みに向けた作
業も始まっています。
メーカーとの連携も、深度化してきています。
照明については、昼光シミュレーションや照度計算、照明器具の自動配置ができるメーカーの
アドインソフトが実用段階にまで進化してきていて、照度分布図などの出力も可能になってい
ます。この機能は、メーカーオブジェクトだけではなく、RUGで公開しているジェネリリック
ファミリでもこれらのアドインが扱えるようになっています。
バスダクトメーカーからも、モデリングツールの準備が進んできていて、今まで扱いが難し
かったバスダクトをBIMで扱えるようになってきています。
そして、電気において最も手間がかかっている盤リストの整理。RUGでは、標準の盤リストを
ベースに各オブジェクトのパラメーターを整理し、標準リストへ出力する検討が本格化して
きています。
RUGで公開している設備テンプレートを使えば、設備機器を配置すると設備の機器表が作成さ
れるようになっていますが、これを更に進化させた検討が進んでいます。
1年半前のコラムで触れていたことですが、設備と電気間での電源情報受け渡しが、BIMを起
点にしたデジタルデータを中心に行えるようになれば、それだけでも希少な電気技術者にとっ
ての生産性は飛躍的に向上できるはずです。
電気のRUG参加者のBIMへの理解が深まってきているので、もう一段解像度を上げた検討に着
手し、電源情報受け渡しを完成させたいと思っているところです。
こちらは、RUG監修のもとで整備して頂いた電気のBIM講習マニュアルを使った講習会の模様
です。電気BIMの普及も徐々にではありますが進んできています。
私がRUGの会長を引き受けてから既に4年の月日が経過しました。就任早々からコロナ禍に突
入してしまい、思うような活動ができない時期もありましたが、この間にRUGの設備WGへの
参加者も飛躍的に増加し、設計だけではなく施工へも展開し、そして機械設備だけではなく電
気設備への展開にも繋がってきています。もう少しで本格的な普及に向けた芽が出てきそうな
設備、特に電気分野でのBIM活用を成就させるためにも、もう少しだけ今の会長の立場で活動
を継続させて頂こうと考えているところです。