設計でのBIMやCGの活用効率を向上させる
ハイスペックノートPCの実力<前田建設工業>
2024.10.07
BIMの活用で建築業界をリードする1社として知られる前田建設工業。同社のBIMをけん引す
る設計戦略部は、多様なグループで構成され、幅広い案件に対応する体制となっている。
昨今、同社ではコロナ禍を経てワークスタイルが変化し、原則オフィス出社としながらも一部
リモートワークなどでの柔軟な働き方が取り入れられている。一方で、同社は、以前から中大
規模建築物の木造・木質化のプロジェクトに多く携わっており、地方への出張も頻繁で、社外
での仕事や客先での打ち合わせの機会も多いという。
これらに伴い、社内ではストレスなくBIMソフトなどが動き、持ち運びも可能なハイスペック
ノートPCへの需要が高まっているという。今回、GeForce RTX 4060、4070、4090を搭載
したマウスコンピューターのクリエイター向けノートPC「DAIV」の最新機種の3種類につい
て、設計戦略部長 綱川隆司氏をはじめ、三木文枝氏、由井三平氏、中込佑治氏、安田郁子氏
の5名に試用いただき、お話を伺った。
前田建設工業の技術を支える設計戦略部が求めるPC
大型プロジェクトや木造の中大規模建築物といった幅広い案件を取り扱う前田建設工業 建築
事業本部の設計戦略部。同部署は、これらの多種多様な案件を支えるため、BIMやCGなどを
駆使する専門的なチーム、設計・施工を効率化するソフトウェア開発を行うDXチームなど高
い技術力を持つ、いくつかのグループで構成されている。
同部署を率いる設計戦略部長 綱川 隆司氏は、「近年のコロナ禍の在宅勤務などを経て、当社
もオフィスや自宅など、ワークスタイルが以前よりも変化しています。また、以前からです
が、地方での案件も多く抱えるため、出張の際は顧客との打ち合わせのほか、社外で仕事する
機会も少なくありません」。これらの理由から、業務で使用するPCの選定に関しても、以前
と比べて変化してきているという。
三木氏は、「ほかのゼネコンですと外注しているケースが多いですが、当社ではプレゼンテー
ションチームを部署内に抱えており、CG制作を内製しています。また、ご存じのとおり、以
前よりBIMの活用が当社の強みで、それも社内で行っています。設計の仕事はチームビルディ
ングが大切なため、最近は出社して仕事することも多いですが、一方でBIMの作業を自宅や出
先で仕事ができるような体制も整えており、私たちは使用するPCを適材適所で選んでいます」
と説明する。
「例えば、提案用のCGなどをレンダリングする際など、以前はオフィスにある共用のデスク
トップPCやレンダリングサーバーなどを用いていました。Splashtopなどで遠隔から操作する
こともできますが、出張となるとそうはいきません。通信環境が良くない場所での業務もあり、
結局は、BIMやCGソフトを扱ったりするには、ハイスペックなノートPCを使用することが、
持ち運びも可能ですし、一番効率が良いと言えます」と中込氏。
前述のとおり、同部署では設計にまつわる多様な業務を行っているが、その中で数年前まで
マウスコンピューターのノートPCを2台導入して使用していた。同社のCGチームの立ち上げを
1989年に行い、以降はCGを専門としている由井氏は、「TwinmotionやLumionを使うため
に、プレゼンテーション用にマウスさんのG-Tuneを購入して使用していました。7~8年は使
用していて、なかなかタフなマシーンでしたね」と当時のことを語る。
BIMや3DCGのソフトウェアが快適に動作
今回試用してもらった検証機は、マウスコンピューターのクリエイター向けノートPC
「DAIVシリーズ」で、GeForce RTX4060搭載の「S4-I7G60SR-C」、GeForce RTX 4070搭
載の「R6-I9G70SR-A」、そしてハイエンドのGeForce RTX4090搭載の「N6-I9G90BK-B」
の3種類。どれもBIMや3DCGに適したクリエイター向けのPCだ。
そして、3機種でそれぞれArchicad、BIMx、Twinmotion、Lumion、Autodesk 3ds Max、
Rhinocerosについての動作や速さの検証を行ってもらった。
まず、Twinmotionの検証では、前田建設工業のMKビルのモデルで検証。綱川氏は、
「約20年前からBIMをやっていますが、いまは設計の初期では初手でBIMソフトで描いて、
そのままTwinmotionで絵を出す流れで行っています。PCがこのように速いと効率的です」と
評価した。
検証したMKビルのデータは700KMBほど。起動時間は3種類とも10秒~15秒ほどで速く、
GeForce RTX4090搭載機種だとレンダリングは2K静止画が10秒をきり、動画が4分58秒で、
比較した共用のデスクトップPCよりも速い結果だった。書き出しは22秒で、ほかの2種類の
スコアも同様に良かった。
次のArchicadは、同様にMKビルでの検証。「起動時間は、GeForce RTX4090搭載の機種は
約16秒と非常に速く、静止画(2,000×1,128ピクセル)のレンダリング時間も2分10秒で、比
較したデスクトップより約20秒速く上回りました。基本的に3種類どれも快適で、特に上位
2機種はどちらも良かったですね」と三木氏。またBIMxやIFC、FBXの形式への書き出しの時
間についてもスピーディという結果になっている。
Lumionに関して、由井氏は「データは、大型プロジェクトでけっこう大きくて1.7GBですが、
4090搭載機種に関しては、静止画のレンダリングが150秒、動画が209秒で、比較した社内
のワークステーションよりも速いです。つまり設計の検討の試行回数も増やせるということで
す」。安田氏も「私たちはコンペで短納期の要望に応えたり、2024年問題で残業抑制の状況
もあり、レンダリングが速いPCは良いですね」と語る。
大規模なデータでも軽い操作性を実現する
Rhinocerosの検証では、某アリーナの統合データを用いた。周りの都市や地形モデルも入っ
ており、1GB以上の重めのデータになる。三木氏は、「これは、3種類の中ではGeForce RTX
4060搭載の機種ですが、操作性は本当に快適でした。ただ山の部分が重く、レンダリングや
データ書き出しは少しかかりましたが、充分だと思います。もちろん上位モデルの2台ともサ
クサクでした」。実際に検証データを見ると、起動時間は20秒前後で、操作や動作は快適とい
う結果になっている。
次に、BIMxに関しては、同社のICI総合センターを検証。同施設は十数の建物から構成され、
前田建設工業の研究施設でもある。最近では昭和初期の日本住宅建築における傑作といわれる
「旧渡辺甚吉邸」も移築され、注目を浴びた。
これは1.1GB以上のかなり重いデータ。「ICI総合センターは、さまざまな建物から成り立っ
ているため、ArchicadやRhinocerosなどで作成した10以上のデータを統合したものになりま
す。甚吉邸も入っていて図面とリンクでき、このように切断して見たりできます。この時の動
きも良いです」と三木氏は、BIMxを操作しながら解説してくれた。基本的に、起動時間は
4060搭載機種でも39秒、4070搭載機種は27秒、4090搭載機種は22秒と早く操作も良い結果
だ。
そして、3dsMAXについても飯田橋MKビルモデルで行われた。起動時間は、どれも比較のデ
スクトップPCよりも速い。また、レンダリングについても31秒、11秒、6秒と高速であった。
FBXのデータ読み込み時間も3機種とも6~8秒ほどでサクサク動くという評価を受けた。
これらの検証を受けて、綱川氏は「以前と比べるとBIMのデータには、さらに広範囲かつ詳細
な情報を入力するようになってきているので、容量が爆発的に重くなる傾向にあります。顧客
との打ち合わせでは、瞬時に修正してリアルタイムで見せたりもするので、これまでよりPC
への要求性能は格段に上がっており、すぐにでも導入したいと思いました」と評価した。
上記のマウスコンピューターのパソコンの詳しい情報は、「DAIV N6」のWebサイト、
「DAIV R6」のWebサイトで。