建築BIMの時代30 BIMへの期待
2024.11.26
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
最近読んだ2冊の本から話を始めたい。1冊目は『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」
を上げる物理学超入門』(野村泰紀著 マガジンハウス新書)。帯に“14歳でも理解る!”と大
きく書かれていたのでついつい手に取ってしまった。結局、なぜ重力は存在するのかは分から
なかったが、さまざまな教科書に出て来た物理学者の功績、中でもニュートンとアインシュタ
インの偉大さを理解できたのは喜びであった。さまざまな現象の法則性を理解しようと細かく、
ミクロに分析していくことで物理学が発展し、相対性理論や量子力学が確立された訳であるが、
量子力学と一般相対性理論は相性が悪く、「自然界の現象を統一的に記述できる理論」が確立
されていないのが現状である。量子力学と特殊相対性理論が統合されたのが1930年頃とのこ
となので、100年近く多くの物理学者が苦悩しているとも言える。物理学の「今後の大きな課
題は量子論と一般相対性理論の統合」とのことなので、物理学の更なる発展を楽しみにしてい
る。
2冊目は『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(坂本貴志著 講談社
現代新書)である。この著者はさまざまな統計データを使って、説得力のある論を展開してく
れるのでいつも参考にしている。今回も、今を理解する参考になればと思い、軽い気持ちで手
に取った。ところが、なんと、この本の中でBIMが言及されていた。驚いた。一般論として、
人口減少により働き手が少なくなり、より少ない人手でアウトプットを増やすこと、生産性を
上げることが必要であることは明らかである。建設業も例外ではないが、このような新書の中
で建設業、それもBIMについて触れられるとは思ってもいなかったので驚いた。建設RXコン
ソーシアムの代表を務める鹿島建設の伊藤専務(当時)への取材をもとにロボット化やデジタル
化について解説されており、その中でBIMについても触れられている。建設業は大きな産業で、
高齢化が進み、新規入職者が少なく、生産性もあまり向上していないという課題山盛りの産業
なので、よく考えると取り上げられるのも当たり前といえば当たり前である。課題解決の方策
の一つとしてデジタル化があることは論を待たない。BIMがデジタル化の一翼を担っており、
BIMに対する期待の高さの表れと理解している。
BIMに関与している方はBIMの出来ること、出来ないこと、BIM普及のために何が必要かはご
存知だと思う。一方、BIMに対する周りからの期待の大きさをどれだけ実感しているだろうか。
設計と施工の情報共有による設計・施工の効率化、施工時および運用時のロボット利用の元
データ、維持管理・運用時のIoT機器との連携によるサービス向上やFMの高度化等々、BIMへ
の期待は高い。この期待に応える必要があるが、どれほどの覚悟を持ってBIMに取り組んでい
るだろうか。自らを省みると甚だ心もとない。BIMに取り組む姿勢をあらためたいと思う。
11月18日の朝、職場から虹が見えた。BIMで日本のこれからに虹をかけたいと思う。