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コラム

人材と技術を眠らせないために

2025.07.24

パラメトリック・ボイス       SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

7/3~5で建築情報学会主催の大阪・関西万博ツアーが開催されました。
今回は会員向けのツアーだったため、みなさんの中にはあきらめた方もいるかもしれませ
ん(中にはツアーに参加するために会員になった方もいました)。
あくまで建築情報学的な視点でパビリオンの建築を理解するツアーで、基本的にパビリオンの
中には入らず、実際のパビリオンを外から見ながら各パビリオンの設計者以外にもさまざまな
立場で関わっている方々にどのように実現してきたかという解説をしていただきました。
炎天下のなかずっと外を歩くというなかなかに過酷なツアーにも関わらず、参加された方の熱
量と、それに呼応するように解説者の熱量もあがり、会場でしかできない深い議論がされたと
思います。
本来であれば、ツアーの報告をこのコラムに書きたいところですが、現地での解説のみの許諾
を得ていただいたパビリオンも多く、また、建築情報学会会員のみを対象としたツアーのた
め、詳細を書くことは控えさせていただきます。
様々な団体でツアーをされていますので、ぜひそちらに参加していただければと思います(ご
要望が多ければ建築情報学会でも第二回ツアーを開催するかもしれませんが、正直に言うと
二度はやりたくないくらい大変だったと思います)。

万博のような大きなイベントでは非常に多くの方々が関わっており、パビリオンの建築行為に
対しても、調べて名前が出てくる方以外に実に多くの方が裏で様々な努力をしています。
国家的なイベントではこれらの努力を表に出すことは非常に手間がかかるだけではなく、契約
上難しいことも多いです。国家的なイベントに限らず街の中に建っている建築でも実は調べよ
うもないような努力が隠れていたりします。
このような調べようもないような努力をされている方のなかには実に優秀な人材や技術が含ま
れていたりもするのですが、現在の社会ではこのような方々や技術をそのまま眠らせてしまう
環境が少なからず存在すると思います。

今回の万博ツアーでは何もしなければ表に出ずに眠ってしまうかもしれない人材や技術を前面
に出し知識として繋げていくことが大きな目標のひとつでしたが、あらゆる情報がインター
ネット上にあると言われている時代でも調べきれない情報が多くありました。

今回は建築情報学的に重要と思われる内容のみでしたが、ほかにも多くの分野で有益な人材や
技術が眠っているでしょう。
いまのところ、人や技術を評価するのも人です。
評価をする立場になった方がいい加減では眠ってしまう人材や技術が増える一方です。評価を
する人の方がより技術に敏感でなければいけないのではないでしょうか。自戒の念を込めて。
 
最後に、今回のツアーで解説を引き受けていただいた皆様、運営の皆様、本当にありがとうご
ざいました。

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長