Magazine(マガジン)

コラム

形状モデルを脱却し、設備設計の考え方を示す
BIMの情報モデルへ

2026.04.02

パラメトリック・ボイス                  日本設計 吉原和正

4月から建築確認におけるBIM図面審査が開始されたこともあり設備設計の実務においても
BIMで実施設計図を作成することがますます重要な取り組みになってきています。しかし実情
は、BIM活用の目的が「従来のCAD図面をそのままBIMに置き換えること」になってしまい、
想定以上の手間や負担を感じている設計者も少なくないのではないでしょうか。図面の体裁を
整えることに多くの労力を費やし、BIM本来のメリットを十分に活かしきれていない、そのよ
うな現実がありそうです。
 
こうした状況を踏まえると、BIMに対して無意識のうちに抱いてきた「納まり検討を目的とし
た3D形状主体のBIMモデル」という固定観念から一度離れ、「設備設計の考え方を示すため
のBIMモデル」という視点に立って、BIMに適した図面表現のあるべき姿を改めて考えてみる
必要がありそうです。
 
設備機器については以前のコラムで紹介した「汎用オブジェクト」をBIMモデル上に配置し
最低限、機番や主要能力などのキーパラメータを入力しておけば、詳細仕様まで無理にオブ
ジェクトに入力しなくても、外部データと紐づけることで、設備仕様や計画意図をデータとし
て整理・共有することが可能になります。
仮に、実施設計の成果図書や建築確認の申請図に「設備機器配置図」という位置づけの図面が
あったとすれば、機器表と設備機器配置図の作成を、機器オブジェクトのモデリングだけで実
現することが可能になります。しかし現実には、ダクト平面図や配管平面図、幹線・動力平面
図などの図面が必要で、その作成のためには、ダクト・配管・ケーブルラックといったルート
系設備のオブジェクトも入力する必要があります。
 
ダクトや配管、ケーブルラックといったルート系設備を、末端まで含めてすべてを3Dでモデ
リングすることは、大幅な負担増につながるため、設備設計での取り組み方は工夫する必要が
あります。そのため以前は、メインルートまでは納まり検討を目的として3Dで作成し、その
オブジェクトをそのまま設備図として活用するものの、末端についてはBIMデータ上での2次
元加筆で実施設計図を完成させる方針で取り組んできました。
小規模な建物であればこの方法でも対応可能ではありますが、大規模な建物や、ダクト・配
管・ケーブルラックが複雑に入り組む箇所では、上下の重なりや納まり上のアップダウンが多
発し、そのまま図面化しただけでは見づらくなってしまいます。その結果、図面の体裁を整え
るために多大な労力を要することになるのですが、こうした体裁調整にはBIMソフトウェアの
理解とそれなりの操作スキルが求められるため、設計者自身では対応しきれず、途中でCADに
切り替えざるを得ないケースも少なくありません。
 
こうした実プロジェクトでの試行錯誤を重ねてきた経験から、「納まり調整などの検討を目的
としたBIMモデル」と、「成果図書作成を目的としたBIMモデル」は、切り離して作成した方
が合理的ではないかと考えるようになりました。
このように割り切って考えると、「納まり調整などの検討を目的としたBIMモデル」はクリ
ティカルな部分に限定した上で、「成果図書作成を目的としたBIMモデル」では、ダクトや配
管、ケーブルラックといったルート系設備は、メインルートから末端までを、フロアからの高
さを一律とした平面重視のモデルとして作成することが可能になります。表現としては単線表
現(しかもカラーで)で均等ピッチとすることで、従来のCADによる設備図とほとんど変わらな
い描き方でBIMモデルを構築することが可能になります。
このような「ルートの考え方を示す」ことに主眼を置いたBIMモデルであれば、実施設計図作
成における作業手間は従来と大きく変わらず、設計者にとっても無理のない形でBIMに取り組
むことが可能になるはずです。


そして、このようなBIMモデルであれば、実施設計図書の作成や建築確認申請にもより対応し
やすくなるはずです。また、施工検討においても、数量把握や詳細な納まり検討を進めるため
の足掛かりとして機能し、さらに竣工後には設備機器の位置や仕様、主要ルートの考え方が整
理されたBIMデータとして運用・維持管理へとつなげていくことも可能です。
 
BIMで納まり検討や図面の体裁を整えることに四苦八苦するのではなく、データとしての価値
を最大化する。その視点への転換こそが、設備設計でのBIM活用の本質であり、建設業界全体
の生産性向上に向けた重要な一歩になるのではないでしょうか。

吉原 和正 氏

日本設計 情報システムデザイン部 生産系マネジメントグループ長 兼 設計技術部 BIM支援グループ長