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デジタルファブリケーションで照明器具を復元
2026.10.22
パラメトリック・ボイス 前田建設工業 綱川隆司
今回は歴史的建築物の照明器具の復元におけるデジタルファブリケーションの活用について紹
介します。当社が2022年4月に茨城県取手市の「ICI総合センター」内に昭和初期の近代住宅
建築の傑作「旧渡辺甚吉邸」を東京都港区白金台から移築復原し、その際に3Dスキャナーと
汎用ロボットをベースとする多軸加工機を用いた部材切削製作のお話を以前「旧渡辺甚吉邸復
原での3Dデータ活用」でお伝えしています。昭和9年に港区白金台に竣工した旧渡辺甚吉邸
(以下、甚吉邸)は、考現学の提唱者である今和次郎(1888~1973)が細部装飾を手掛けた
チューダー様式の住宅として知られ、現存の実作が少なく「幻のデザイナー」と称される彼の
作品を直接確認できる貴重な遺構となっています。
今和次郎は甚吉邸の細部装飾の中でもインテリアに関しては、椅子・テーブル、コンセントプ
レート、呼び鈴、照明器具、ラジエーターグリル、さらにはカトラリーやフルコースの食器類
一式までデザインしたとされ、関連する史料が現存しています。甚吉邸は戦後GHQに接収さ
れ、返還後はラオスおよびスリランカ駐日大使公邸、平成23年以降は貸結婚式場として利用
されてきました。この間に様々な物品が失われたと考えられます。移築復原後は関係者やご親
族のご厚意で家具など一部の物品が甚吉邸に戻ってきました。今回ご説明する照明器具につい
ては竣工当時40台あったオリジナルのうち、残念ながら残存しているのは17台と過半が失わ
れました。消失した箇所については、市販の代替品を使用していますが、史料が確認できる器
具の復元に向けた検証を昨年から始めました。ここでは特徴的な居間のペンダント照明器具に
ついてご説明します。
竣工記念誌には内外観45枚の写真が収録されており、白黒ではあるものの竣工時の状況を確認
できました。対象となる居間ペンダント照明の竣工当時の写真は図1左の①に示しますが、当
時の写真ではその形状が不鮮明であるため、アップスケーリング的に生成AI画像アプリで状況
を再現したものが右の②です。

図1 ①竣工写真、②生成AI画像
色彩が与えられていますが、材質については現存する照明器具のうち12台18箇所について、
蛍光X線分析計を用いて元素測定を行いました。多くの部材はCu(銅)を過半とし、Zn(亜
鉛)を含む合金で構成されており、真鍮と考えられます。部位によって元素比率が異なりまし
たが、居間ペンダント照明器具の場合は、残存する照明のうちアカンサスの葉のデザインが似
た2階寝室ブラケット照明器具を参考にしており、この残存照明器具は真鍮鋳物でできていま
す。復元対象の居間ペンダント照明器具にもアカンサスの葉が5枚あり、これらも同様に真鍮
鋳物で作られた可能性が高いと判断しました。また形状については今和次郎による細かな装飾
の復元検討のために3Dモデリングによる事前検討を試み、その正解とおぼしきモデルデータか
ら樹脂や金属等の素材を使って造形加工するデジタルファブリケーションを採用することにし
ました。
モデリングアプリにより先の画像から図2左の③に示す3Dデータを生成しましたが、竣工写真
や今和次郎のスケッチから作図した2D CAD図等と比較しながら3Dデータを修正していきまし
た(右の④)。
今後この3Dデータをもとに金属造形を進め、来年の一般公開では数点復元された照明器具を
ご覧になっていただける予定です。甚吉邸一般公開などの情報はHP上で確認できますので、ご
興味のある方は是非ブックマークをお願いします。機会があればいずれまたこの続きを書きた
いと思います。

図2 ③3Dモデル生成(アカンサスの葉)、④3Dモデルデータ修正の様子
本稿は2026年度日本建築学会大会(中国)学術講演での前田建設工業とSOLIZE PARTNERS
との共同発表に基づくものです。照明器具の復元検討にあたり、早稲田大学 中谷礼仁教授、
株式会社神戸製鋼所ならびに株式会社ジャパンランパスよりご助言を賜りましたことを心より
感謝申し上げます。



























