新しい血を(知を)入れるということ
2015.05.21
ArchiFuture's Eye ノイズ 豊田啓介
建築という分野でこれだけCADやBIM、各種デジタルデバイスが不可欠になっている中、それ
らを理論、実践両面から扱う研究分野が建築教育の枠組みの中に確立されていないのはどう考
えても現状や今後のニーズに合っていない。
こうした思いから、3年ほど前から建築内外の専門家の方々にご協力をいただきながら、「建
築情報学」立ち上げの準備と称して、noiz EaRなる自主的なリサーチ活動を進めている。
全国の大学には建築情報学的な分野に興味があるものの、関連分野を教えられる教員がいない
ために掘り下げられずにいる学生も多くいて、そうした学生に横のネットワークで場を提供し
ようと、卒論や修論を補助する民間研究室のような、EaR論文研修生制度という活動も昨年か
ら始めた。この4月で第三期も終わり、徐々に解像度も深さも増してきて、いいエコシステム
が形成されつつある。
過去5年ほど大学での教育やEaRの活動に関わる中で、各大学で突然変異的に出てくる独自の
興味を持った学生や、留学から独自の視点と技術を備えて戻ってくる人材に少ないながらも会
う中で、彼らのその後の成長の過程を見ていると、そうした突然変異的に発生する個人の掘り
下げる力、興味に根ざす突破力の価値を最近あらためて感じる。社会システムのプラットフォ
ームが急激に変わりつつある今のような時代だからこそ、ピンポイントに出てくるそうした人
材をしっかり評価して環境を与え、その特殊な突破力を存分に活かすことは、社会にとって何
にも勝る投資に違いない。
しかし、教育はもとより、現場としての企業もまたそうした人材を、過去の常識やしがらみに
とらわれず、活用できる環境をどれほどつくれているだろう。ノイズでも最近デジタル化にあ
たって組織や人材に関する相談を大企業から多く受けるが、まあ大抵は相談しつつも、誰かを
雇えば自動的に会社も変わるかのような他力本願な相談がほとんどだ。犬を連れて散歩するの
が流行だからと犬を飼おうとしたところで、金魚鉢しか用意しないような家に、有能な犬が居
ついてくれるとも思えない。