MITが伝えるアイデアをつぶす方法
2017.04.20
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
私の手元に”How to kill ideas from Massachusetts Institute of Technology”というメモが
ある。二十数年前に、同僚からもらったものである。多分、彼がどこかで見たか聞いたかした
ものを入力し直したものであろう。ずっと私の抽斗に入っていて、折に触れ眺めて自らの戒め
としている。山梨さんのコラムで紹介されていたGoogle翻訳の力を借りて、日本語版を作っ
てみた。
Don’t be ridiculous. そんなバカなことを言うな。
We tried that before. すでに試してみた。
It costs too much. お金がかかりすぎる。
It can’t be done. そんなことできっこない。
That’s beyond our responsibility. 私たちの責任を超えている。
It’s too radical a change. あまりにも根本的な変化だ。
We don’t have the time. 時間がない。
That will make other equipment obsolete. 他の機器を陳腐化させてしまう。
We’re too small for it. それには、私たちは小さすぎる。
That’s not our problem. 私たちの問題ではない。
We’ve never done it before. やったことがない。
Let’s get back to reality. 現実に戻ろう。
Why change it, it’s still working O.K. どうして変えるのか、まだうまくいっている。
You’re two years ahead of your time. 君は2年先を行っている。
We’re not ready for that. まだ準備ができていない。
It isn’t in the budget. 予算におさまっていない。
You can’t teach an old dog new tricks. 老犬に新しい技は仕込めない。
Let’s form a committee. 委員会を作ろう。
Too hard to sell. 売るのが大変。
If it was good-we’d already be doing it. もしそれがよかったら、もうやっている。
We’ll be the laughing stock. 笑いものになってしまう。
That doesn’t apply to us. 私たちに当てはまらない。
We’re doing the best we can. 最善をつくしている。
We did all right without it. それなしでもうまくやっている。
Has anyone else ever tried it? 他の誰かがすでに試しているのでは?
It won’t work in our industry. この業界ではうまくいかない。
ことさらMITに言われなくても、同様のものは書籍やネットで目にすることがあり、皆さんに
とっても自明のことであろう。しかし、頭ではわかっているけれども、ついつい同じようなこ
とを口に出しているのではないだろうか。会社では新入社員、学校では新入生を迎える。新た
に異動してくる人もいる。彼らの疑問を新参者のそれと片づけないで、改善、改革の原点とし
たいものでのある。BIMについてさまざまな方とお話しする機会がある。BIMが徐々に普及し
つつあるとはいえ、BIMが目指すものとは大きな隔たりがある。ついつい言い訳をしてしまう。
私の言い訳のなかにはこのメモに通じるものも多々ある。年度が新たになったのを機に、この
メモを再読しBIMの普及につとめたい。
ちなみに、このメモをくれた同僚は会社の枠におさまらず、今では建築設計とは異なるフィー
ルドで大活躍している。私が尊敬する人物の一人である。彼はこのメモを真摯に受け止め、実
践しているのではないかと思う。