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コラム

コツコツとBIM

2015.07.02

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

今年で2年目になる私の研究室では、昨年の冬、3年生のゼミで、BIMソフトでモデリングした
サヴォア邸の見積書作成に取り組んだ。学生は、授業でBIMソフトの操作を習得しているだけ
に、モデリングを難なくこなしていく。
次に、建築コスト情報という物価本を見ながら、BIMソフトの数量集計機能で得られる数値を
使って積算数量を計算し、その数量と単価を、予め用意した明細見積書の雛形に埋めていく。
学生は、物価本でコストを比較しながら材料を選定し、今の日本で見られない工法は現在施工
できるものに置き換え、仮設計画や掘削・埋戻しの方法までも考えていく。このようにして学
生は、豊洲で2014年12月に着工する想定でサヴォア邸新築の建設費を導き出した。

このゼミに挑戦した学生から、「BIMソフトの数量集計で、何の数値かよくわからないものが
出てくるので、オブジェクトの属性に何か情報を入れておいた方が良いと思った」という意見
があった。こうした素朴な反省点は、今年の冬、先輩から後輩へと受け継がれることになる。
このゼミを何年か繰り返していくうちに、BIMソフトで得られる情報を使ってコストマネジメ
ントをするために、属性として入れておいた方が良い最低限の情報がきっとクリアに整理でき
るような気がしている。実際に手と頭を動かすことで上手くいかないところが明らかになり、
皆で議論を深めれば、BIMプロセスで情報を扱うセンスが養われていくはずである。

志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授