建物情報モデルとCDE
2018.05.31
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
3月末、パリに行ってきた。BIMを推進する国際団体buildingSMART International(bSI)が
主催するBIM規格の標準化についての国際会議(International Standards Summit-Paris)
に参加するためだ。この会議は年に2回、春と秋に開催され、団体に加盟している各支部が持
ち回りでホストをつとめている。会議の会場はパリに隣接するラ・デファンス地区。かねてか
ら一度行ってみたいと思っていた。学生時代、ラ・デファンスから凱旋門、シャンゼリゼ通り
を通りノートルダム寺院にいたるCGを作成した。恩師がラ・デファンスで開催された
PARIGRAPH ‘85というCGの学会で発表するために、パリ市街とラ・デファンスとの関係を表
すアニメーションの作成に参加したからだ。念願がかない、新凱旋門の上から凱旋門を見るこ
とができた。
今回の会議ではCommon Data Environment(CDE)という単語を頻繁に耳にした。CDEとは、
建物の設計、工事、運営や管理に関わる数多くの人たちが、情報を受け渡したり共有したりす
るための環境といえる。環境と一言でいっても、データ形式だけでなく、データの受け渡しや
共有化の取り決めや手順、それを実現するネットワークやソフトウェアなど、さまざまな要素
がある。bSIが定めて推進しているBIMの標準データ形式であるIFCだけでなく、データを受け
渡す時期やその内容についての取り決めやBIMオブジェクトの共通ライブラリーなど、さまざ
まな標準や基準、プロセスや仕組みがCDEに関わってくる。当然、CDEには数多くのソフト
ウェアも関係する。CDEの観点からすると、どれだけ他のソフトウェアと連携できるかが、ソ
フトウェアの価値を決める重要な要素といえる。いくら機能が豊富で使いやすくても、他のソ
フトと連携できないソフトウェア、CDEの輪に入れないソフトウェアは使われなくなるのでは
ないか。一つのソフトで建物の情報を全て管理できるわけではない。建物のライフサイクルに
わたって、数多くの人が関与しているのと同じように、数々のソフトウェアが利用されている。
それらがCDEという環境のなかで、連携を深めていくことがユーザーにとって望ましいことだ
と思う。
地図情報の世界では、一足先にCDEが実現しているともいえる。30数年前にパリのCGを作っ
たときは、地図や写真、図面を頼りに苦労してパリのごく一部をデータ化したが、今では、
もっと簡単にできる。また現在では、地図の上にさまざまな情報が付加されて、新たなサービ
スやより価値の高い情報が生み出されている。地図の情報化は、いろいろな意味で非常に参考
になる先例である。
国際会議の話に戻る。今年の10月には東京でInternational Standards Summitが開催され
る。期間は10月16日(火)~19日(金)、会場は18日(木)までがお台場の東京国際
交流館プラザ平成と日本科学未来館、19日(金)は赤坂インターシティAIR。世界各国から
BIMの専門家があつまって、成果を発表し議論する。CDEについても議論されると思う。興味
のある方は是非ご参加いただきたい。