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コラム

プノンペンの話

2018.08.17

パラメトリック・ボイス                清水建設 丹野貴一郎

先日カンボジアのプノンペンに行く機会がありました。
カンボジアは学生時代に一度行く機会を逃した思い出があります。当時所属していた石山修
武研究室でプノンペンにヒロシマハウスというプロジェクトがあり、一度はその担当として
指名をされたのですが単位を取るために1か月ほど移動を待ってもらう選択をした事でタイ
ミングがずれ、結局担当をすることなく終わってしまいました。
この時のわたくしの決断はその後の進路を大きく左右することになるのですが、結果として
建築以外の分野の経験もし、現在のような仕事をしています。
人生何がターニングポイントになるかわからないという話は別の機会にするとして・・・プ
ノンペンも当時とはだいぶ様子が異なり、街の中心部は都会化が進んでいました。
現地の方が、ここ5年でそれまでは無かった高層ビルが建ち始めて景色が変わってきたとい
う話をまさに中心にあるスターバックスでコーヒーを飲みながら話していたのが印象的で
す。
スターバックスの他にも、大きな音でダンスミュージックが流れるオープンなレストラン、
高層ビルのルーフトップバーなどがあり一方でメインストリートを外れるとちゃんと舗装
されていない道路になり、ローカルフードや生活雑貨を売る店や屋台が広がります。プノン
ペンも他の東南アジアの都市と同じような顔になりつつあると思います(ちょっと違うのは
若者が遊びに行く場所がイオンモールだったりしますが)。
ここで政治的な話を大きく取り上げるつもりはありませんが都市が作られる過程では政治
の状況というのも切り離せません。先日大統領選挙がニュースで取り上げられた通り、カン
ボジアという国も問題を抱えながら発展していることを現地の建築建設関係者と話す中で
感じざるを得ない状況でした。
プチ情報としては、カンボジアの鉄はほとんどがベトナムからの輸入のため、鉄筋や鉄骨が
JIS規格でした。
 
カンボジアでのBIMの普及はというと、設計段階で使い始めているといった感じです。現時
点では図面化まではしておらず、簡単な説明用の2D図やCGパース用のモデリングがほとん
どです(実は日本でも図面化のハードルが一番高いのですが)。
しかも、これはあくまでBIMに特化した事務所の話で、一般の設計事務所ではまだまだ
AutoCADによる図面がほとんどでそろそろBIMにも取り組まなければという状況でした
とはいえ、確実にデジタルの波は来ており、既存の手法が成熟していない環境ではかえって
普及が早いことが多いので、数年後には日本よりもはるかにICTによる効率化が進んでいる
可能性もあると思います。
 
ちなみに、一緒に行った方がおなかの調子が悪くなり苦労をされたのですが、皆さんも水が
飲めない国に行った際には生野菜などの火が通ってない食べ物にも気を付けましょう。


丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長