どこからでも新しい取り組みが生まれる時代
2018.10.04
パラメトリック・ボイス 清水建設 丹野貴一郎
東京に住んでいる方であれば行かれた方もいると思いますが、5月~7月に乃木坂のギャラ
リーで平田晃久さんの展示会が開催されていました。
その一つとして三次元加工された木のオブジェ(?)が展示されていたのですが、それを製作
したのが山形にあるShelterという会社でした。私が山形出身ということもあり、ひょんな
ご縁で先日そのShelterさんに行く機会がありました。
Shelterさんはこのような木の三次元加工を特殊技術として保有しており、最近でいうと
坂茂さん設計の富士山世界遺産センターの象徴的な編み目状の木を担当しています。
私の浅い知識ですが、木の形状加工はいくつかに分類され、大まかにいうと、「切る」「曲
げる」「削る」です。これは手作業でも機械加工でも基本的には変わりません。
切るというのは基本的に二次元的な加工で、せいぜい刃に角度を付けて切る程度です。また
曲げるというのも三次元的な加工は精度を管理することが難しく、基本的には型のようなも
のを使って曲げる必要があるため、技術的にもコスト的にも量産できないものでは難しく
なってしまいます。
一方削るというのは刃の位置・角度さえ制御できればどのような形にも加工ができ、現実的
には様々な課題はありますが、理論的には全て異なる形の部材を加工して組み立てる事も可
能になります。
木の加工では刃が自由な角度で動いて(5軸以上のことだと思います)削り出すものを三次
元加工と呼んでおり、この設計及び加工管理が特殊技術になっています。
木に限った話ではありませんが、技術の進歩に伴って建材の製造現場でも三次元形状の加工
は需要が増えており、従来のCAMシステムだけでは対応しきれない場面が出てきています。
そこで満を持してコンピュテーショナルデザインの登場です。
製造工程でも当然設計が必要なため、マスカスタマイゼーションの製造現場においてもコン
ピュテーショナルデザインツールは重要な役割を果たします。
Shelterさんではまずは取り組みやすいRhino+Grasshopperで設計を行っていました。これ
で加工機に流すための元データを作成し、施工計画までを実践しています。
自分の田舎を馬鹿にするわけではありませんが、まさか山形でこういった事に取り組む会社
があるとは思っていなかったので、今の時代の新しい取り組みはどこからでも生みだせる事
をあらためて実感したとともに、裾野が広がっている技術を結び付けるシステムの必要性を
感じました。
BIMがただのツールで終わらないためには、各フェーズを包括する建築プラットフォームシ
ステムとなる必要があり、今使われているようないわゆるBIMツールというのは、あくまで
入力ツールの一つとなるべきなのかもしれません。
一度すべてのしがらみを忘れて本当にあるべき建築のためのプラットフォームを考えません
か?