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コラム

A1図面 vs 24インチモニタ

2020.07.10

パラメトリック・ボイス          隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹

新型コロナウィルス対策の特別措置法に基づいて緊急事態宣言が発出された4月7日から
約二ヶ月間、テレワークを行いながら様々な業務をこなしてきた。
そんな中で改めて痛感したのは、我々の業務の中ではデジタル情報が、まだ完全には印刷物を
代替するものにはなりえないということだった。
こういった期間の中でも、未だに公的な提出物に押印した書類が必要なのは、既に様々な媒体
でも報道されている。私もそういったことを感じる場面は多々あったが、今回お話したいのは
そういったことではない。

テレワーク期間中に、ちょうど実施設計のまとめを行っていた物件と、現場の総合図をチェッ
クしなければならない物件があった。設計チームや現場から上がってくる図面をチェックする
際、かなり細かい箇所をチェックすることが必要であったが、これをコンピューターの画面上
のみで行うことが想定以上に難儀なことであった。
いつもは3Dモデルを積極的に活用しながら設計を進めていても最終的なアウトプトとして
施主や現場に共有されていくのは、現時点では2Dの図面情報である場合がほとんどである。

現在使用している24インチのモニタもしくは13インチのラプトプのモニタを使い各所で
拡大、縮小を繰り返しながらこの2D情報を確認していく。アウトプットとして共有されるA1
サイズの図面に詰め込まれている情報は、この作業で確認するには思いのほか膨大であった。
考えてみると我々が印刷物として見ている図面は最低でも300dpi程度の解像度を持った情
報であり、長辺方向は10000ピクセル程度の画像となる。これを一度に表示できるモニタは今
のところ存在しない。しかも、各所を拡大しながら見ていってはいるものの、見落としが多
かった。これは意外と焦点外のエリアからも情報を得ていることを表している。
8Kモニタが商品化される中この紙の図面が完全に代替されるのはいつのことになるであろう
か。直感的な作業性と詰め込まれている情報の多さにおいて、改めて紙媒体の優秀さを感じた
二ヶ月であった。

名城 俊樹 氏

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長