大手とベンチャー
2020.08.25
パラメトリック・ボイス SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎
先日「建築情報学会チャンネル」でYouTubeライブ配信をさせていただいたのですが、聞いて
いただいている方の顔や反応が体感できないネット配信になれていないと話が脱線しにくいも
のだと感じました。
その配信でも話題にあがったのですが、BIMやコンピュテーショナルデザイン等の建築に関わ
るデジタルテクノロジーの分野での大手企業と独立系企業での違いというものが、意外とよく
わからないようです。
明確に分ける必要も無いとは思うのですが、最も単純な構図としては発注者と受注者になりま
す。
この構図で言うと、企業内にいる場合に考えることは、取り組みの内容を決めることや社内で
できるリソースを集めることなどです。そのうえで社内ではできない(もしくはしなくてもよ
い)内容に関して外注となり、外注先を探します。
独立系にいる場合はこの外注先として業務を委託されることになります。委託内容に対して技
術的な検討をしつつ作業をすることになります。
単純な構図以外に、一緒に考えながら進める場合や、受注者側から提案をして内容を決めてい
く場合などがあるため、これまで建築の分野で言われていたような上流から下流へという構図
が曖昧になり、これが外から見るとわかりにくくしている要因の一つではないかと思います。
ただし、現実的にこのように一緒に考えていくことが増えていても、これまでの建築の商習慣
があるため、必ずしも体制が合わせて変わっているというわけではありません。例えば企業経
験をせずに独立された方はこの「謎の」商習慣に悩まされることも多いのではないでしょうか。
建築に限ったことではありませんが、歴史ある業界には仕事をしやすくするための商習慣とい
うものがあります。これは往々にして「いまどき」の感覚とずれていることが多く、特にデジ
タルテクノロジーを用いたソリューションとは相性が悪いことが多いです。
BIMツール一つをとっても、様々な立場の関係者が同じデータにアクセスして情報を共有する
ことが本来の姿ですが、現実的には各レイヤー間の打合せなどによる情報共有をするためBIM
データへの反映が最後になり、結果的に工程に間に合わなかったりします。
逆にアジャイル型で一緒にやっていきましょう、という話になった場合でも、ある程度その業
務に集中できる時間が取れないような状況では、参加できない時間を埋めるための説明などに
より、かえって余分な時間がとられてしまいます。
歴史の中で作り上げてきたものは必ずそうなった理由があります。
なぜそうなっているかという事を考えたうえで、大手企業にいる方は変えるべき内容に関して
は変える努力を、独立系企業にいる方は合わせるべき内容に関しては合わせる努力をすること
が、最も無駄な「ストレスによる思考停止」を防ぐことができるのではないかと思います。
今回は現実的な話としてあえて二者に分類して書きましたが、建築とはそもそも多種多様な人
がかかわるものなので、そんな分類自体がナンセンスです。狭い世界の常識だけにとらわれな
いように気を付けたいものです。