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コラム

日常会話に三角関数は出てこない

2020.10.27

パラメトリック・ボイス         SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

ここ数年社会全体のDX(Digital Transformation)志向の影響もあり、BIMやコンピュテーショ
ナルデザインのような建築のデジタル技術だけではなく、それらに付随するICT技術(例えば
API開発、データベース開発、Web開発等)を組み合わせたソリューションというものが多く
出てきているように思います。
多くの人がスマートフォンで常にネットワークに繋がっていることが当たり前である状況を考
えれば、この流れは必然なのですが、私の感覚としては、それらの技術(ここではわかりやす
く建築ITと一般ITと書きます)の組み合わせには意外と高いハードルがあるように思います。
 
建築ITは基本的に建物に関わるためジオメトリをベースに開発が行われます。例えばCADや
BIMでもアウトプットは図形やモデルに紐づいているものになりますが、これに対して一般IT
はジオメトリに紐づくことは少ないです。
ここで何が問題かというと、開発者に必要とされる知識が異なるという事です。
少々極端ですが一般ITの開発者にとって物理や数学の知識は必須ではありませんが建築IT
では必須の知識となります。
もう少しわかりやすい例えで言うと、コンピュテーショナルデザインをやっている人で三角関
数を使わない人はいませんがWeb開発をやっている人で三角関数を使わない人は多くいると
いう感じでしょうか。
 
私の認識ではプログラムとは人間が考えていることをコンピューターに伝えるための言葉なの
で、日本語、英語、C言語のように並べてもおかしくないものです。
IT開発がプログラムを介してコンピューターを動作させることだとすれば、同じITでも建築IT
は立体的に形状を構築する建築に関わることをコンピューターに伝えているので、その中に物
理や数学的な要素が入ってきますが、一般ITでは日常生活の一般的なことをコンピューターに
伝えているので日常会話に数学が出てこないように開発においても数学が出てきません(日
常会話で数学が出てくるという読者の方は自分がマイノリテであることを認識しましょう)。
 
ということで、同じような言語を使っているからと言って、一般ITの開発者に建築ITの開発を
頼んでも(もしくは双方の開発者での協働作業をしようとしても)、実はそれぞれの理解を深
めるためには、それ相応の時間を要します。
 
そういった意味で、あまりこういった分け方は好きではありませんが、文系の人は一般ITの職
に就くことよりも建築ITの職に就くことは大きなハードルがあると思います。
ちょっとずるい終わり方ですが、ではどのように建築ITの裾野を広げていけば良いのかという
課題をArchiFuture Web コラムニストの石澤さんに引き継ぎたいと思います。
ハードルを上げておくと石澤さんは文系からスタートして、建築設計から建築ITを引っ張る立
場になられたので、現在困っている方やこれから取り組もうという方にとって大変参考になる
お話をしてくれると思います。


 

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長