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コラム

意構設間のデータ連携実現に向けて

2020.11.19

パラメトリック・ボイス                 日本設計 吉原和正

先週、オンデマンドで、RUGカンファレンスが開催されました。これは、年1回一般向けに
Revit User Groupの活動状況を紹介するイベントで今期中間地点でのRUGの活動状況を報告
させて頂きました。
 
RUGの活動方針については、2020年5月21日のコラムで、RUG総会の内容としてご報告させ
て頂きましたが、今回はRUGカンファレンスで中間報告させて頂いた中から、意匠・構造・設
備の分野間のデータ連携について触れたいと思います。
 
RUGの活動は、意匠・構造・設備・分野連携の4分野のWGを中心に、確認申請やDynamoな
ど幾つものTF(タスクフォース)を設けて、リーダーの方々を中心に推進しています。
今年度からは特に分野間を跨ぐテーマを中心にTF活動を活性化していこうと考えていまして
意匠-構造連携TFや、構造-設備連携TF、設備-意匠連携TF、空間情報TFを新設して活発な活動
を進めていっているところです。
また、最近のRUGは設計をテーマにした活動が中心でしたが、今年度からは施工との連携を見
据えて、ファブリケーションTFなど施工をテーマにしたTFも活動を開始しているところです。

ここ数年で参加企業もだいぶ増えて来ていまして現時点でRUGには意匠WGに34社・58名
構造WGに20社・42名、設備WGに44 社・103名の方にご参加頂いております。

RUGという団体の一番の特徴としてあげられるのは、 AutodeskのRevitというネイティブ
データを対象に ユーザーを中心に具体的に議論することができさらに意匠・構造・設備
のすべての分野が、同じネイティブデータを元に具現化できる点にあります。

BIMについては、国土交通省の建築BIM推進会議や各部会、関係団体で活発に検討を進めてい
ますので、RUGとしてはその特徴を生かして、 『各種BIM委員会の方針に則り、先陣を切っ
てRevitで具現化する活動』を行っていきたいと考えています。これをRUGのミッションと位
置づけ、 特にこの5点、 
 1.Revitによる意構設データ連携の具現化 
 2.Revitでのファブ・メーカー連携推進による施工への展開 
 3.Revitサンプルモデル活用による具体例の提示 
 4.共有パラメータの標準化
 5.次世代へのバトンタッチ 
を主要テーマに掲げて活動を進めているところです。

今回はその中で意構設データ連携についてどのような活動を行っているか簡単に紹介し
たいと思います。

RUGでは2016年に、全体ワークフローというものを作成し公開させて頂いておりました。
ツッコミどころ満載かもしれませんが、会社の垣根を超えてひとつのワークフローとしてまと
め得たことは当時としては画期的なことだたと思っています。あれから4年の歳月が経ち、
現状では国土交通省の建築BIM推進会議を中心にBIMの議論が業界全体でなされるように
たこともありRUGはより具体的なデータフローの検証に移行する必要があると考えてい
ます。
当時のRUGの全体ワークフロー作成時にも様々な部分でBIMのデータが途切れるミッシング
リンクが存在していることを把握できていてその解消がRUGの活動の中心であた訳ですが
今期からは、今まであまり調整できていなかった分野間のミッシングリンク解消を目指し、
重点的に活動を進めているところです。

わかりやすいところから紹介すると構造-設備間でデータ連携すべき項目としては以下のも
のが対象としてあげられています。
 ・設備機器荷重の受け渡し
 ・梁貫通可能範囲と、梁貫通情報の受け渡し
設備機器荷重の受け渡しでは、設備BIMモデル上で設備機器ファミリの「質量」という共有パ
ラメータに製品質量や運転質量に余裕率を加算した数値(パラメータバリュー)を入力して
受け渡すことや、「設置方法」という共有パラメータに床置や天吊などのルールに則った文
字(パラメータバリー)を入れておきどのスラブで支持するのかも含めて情報のやりとり
を行えるようにしようと考えています。
梁貫通の受け渡しについては、bSJでルール化されいてる中間ファイルの受け渡しルールに則
りながらRevitネイテブデータで直接やりとり可能なように梁貫通不可能範囲やスリーブ
のジネリックファミリを整備し受け渡し用の共有パラメータを定めようとしています。そ
の上でネイティブデータでの効率的なスリーブ調整が可能なようにDynamoやエクステン
ション(Revitのアドオンソフト)開発につなげようと考えています。

意匠-構造間では、以下の検討を進めているところです。
 ・意匠から構造への伝達情報の検討
 ・構造から意匠への伝達情報の検討
例えば、スパンや室用途により定まる積載荷重、ヘビーデューティーゾーン、床仕上げや床ス
ラブレベルなどを、意匠から構造へBIMデータでどのタイミングでどう受け渡すかといったこ
とを検討しています。構造から意匠への伝達情報の検討も進行しているところで、今後は、設
計初期段階での階高や外壁情報、仮定断面の伝達方法を整理していければと考えています。

意匠-設備間でデータ連携すべき項目としては、以下のものが対象としてあげられています。
 ・空間要素(部屋・スペース)で、意匠-設備間で連携すべき共有パラメータの整備と、
  推奨テンプレートへの反映 
 ・負荷計算・省エネ計算連携可能な意匠モデルの推奨モデリングルールの整備
 ・防火区画、防煙区画の受け渡し方法の検証
 ・天伏調整をスムーズにする、天井開口・点検口の受け渡し方法の検証
 ・照明デザインのスムーズな調整方法
 ・衛生器具のスムーズな調整方法
 ・設備基礎のスムーズな調整方法、など
この中でも特に、建築確認申請や省エネ適判などで、意匠と設備で整合性を確保しておく必要
がある共通のパラメータ整理を優先して進めていこうと考えています。設備にとっては、意匠
BIMモデルから必要な情報を取得できることがBIMに取り組む上での最大のメリットでもあっ
たりするので、できるだけ共通化をはかれれば良いのですが、逆にそれが意匠設計者に負担を
押し付けることになっては元も子もないので、その辺りはバランスを考えて進めていこうと
思っているところです。

また、設備-意匠間で連携すべきもののうち、部屋やスペースなどの空間要素は、性能を規定
する重要な情報源で、構造も含めた3分野間に渡るものでもあるので、他の連携TFとは別に空
間情報TFを立ち上げて、この中で集中的に検討を進めようと考えています。

BIMをきっかけに、セクショナリズムに陥りがちだった業務プロセスを、見直す機運が高まっ
てきていると感じています。意匠・構造・設備の全セクシンのユーザーが参加しているRUG
では、分野間の連携方法の具体策を検証し、BIM活用の更なる発展を目指していければと思い
活動を進めているところです。

吉原 和正 氏

日本設計 情報システムデザイン部 生産系マネジメントグループ長 兼 設計技術部 BIM支援グループ長