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コラム

COBieの勉強-その2

2021.01.21

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

エクセル形式で出力されるCOBieは、シート間でリレーショナルデータベースの構造になって
いると前回に述べた。今回はそのリンクについてもう少し掘り下げて考えてみたい。

BIMオーサリングツールのプロジェクトデータに配置された個々の要素は、COBieの
「Componentシト」の1行に対応する。そのシートの「Space列」に、その要素が配置され
ている部屋オブジェクトの識別情報(そのプロジェクトでユニークに付けた部屋番号など)を
入力する。個々の部屋オブジェクトは「Spaceシート」の1行に対応し、そのシートの
「FloorName列」にその部屋が配置されているフロア名を記載する。また、部屋の識別情報
は「Zoneシート」の「SpaceNames列」に記載してその部屋がどのゾーンに属するかを定義
する。したがって、ある要素が配置されているフロアやゾーンは「Spaceシート」を経由して
検索することになる。また、要素の上位概念であるカテゴリは「Typeシート」の1行に対応す
る。カテゴリの名称は「Jobシート」や「Spareシート」の「TypeName」に記載されるため、
要素に対する保守作業や交換部品は「Typeシート」を経由して検索をすることになる。

「Spaceシート」、「Componentシート」、「Typeシート」にはその部屋、要素、カテゴリ
の説明を入力する欄として「Description」の列が用意されている。しかしその1列に部屋
要素、カテゴリを構成している資材や部品の情報を漏れなく書くには無理がある。BIMオーサ
リングツールでもいくつかの属性項目に分けて入力する資材や部品などの情報は「Attribute
シート」に1行ずつ記載する。「Attributeシート」の「SheetName列」にシート名(Space、
Component、Type)、「RowName列」にそのシートに書かれている名称(Name)を入力
することで、部屋、要素、カテゴリを介してそれらを構成する資材や部品などの情報を検索で
きる。修繕については、「Typeシート」にある「ExpectedLife列」と「DurationUnit列」、
「Componentシート」にある「InstallationDate列」を組み合わせれば、その要素の修繕周
期や時期を導き出せる。「Typeシート」と「Spaceシート」の「Category列」にカテゴリや
部屋に対応する分類体系(例えば、Uniclass2015のSpaces/LocationsやSystemsのテーブ
ル) のコードを記載することでCOBie内の情報を階層的な検索ができるし「ExtIdentifier列」
に記載されるGUID等を経由してCOBieシート内の情報とBIMデータの要素や部屋を相互に参
照することができる。

このようにリンクを幾重にもつなぐことで、建物の運用に必要な情報について
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:漏れなくダブりなく)の状態を
作り出しているところにCOBieの凄味がある。この構造に注意を払いつつCOBieの情報と施設
の保全マネジメントシステムにおける静的データの項目を見比べると、後者のかなり多くの項
目をCOBieの情報で賄えることがわかる。BIMオーサリングツールで適切にCOBieパラメータ
に該当するデータを入力しておけばCOBie形式でデータを出力するアドオンプログラムが用意
されている状況において、これを利用しない手はないように思われる。例えばCOBieのデータ
を中核に置き、メンテナンス、劣化診断、交換部品の在庫管理、保全業務の委託管理、諸室管
理、賃貸管理、BIMデータ閲覧など、業務に使う各々のアプリをそこに接続すれば、COBieを
介して各アプリ間でデータを相互に参照できる仕組みをカスタムメイドできる。また、アプリ
内でデータを表示する内容を簡単にカスタマイズできると面白い。さらに、アプリで入力する
データを格納するリポジトリを用意しておけば、オーダーメイドに近い施設マネジメントシス
テムをユーザー主体で構築できるだろう。このような仕組みが世界のどこかにあるかどうかは
知らないが、考えるだけでワクワクしてしまう。

志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授