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コラム

カタチの最適化群

2015.10.22

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm : GA)という、近似解を求める手法がある。
    自然淘汰や交叉、突然変異などといった生物の進化のプロセスを模倣したメタヒュー
    リスティックアルゴリズムのことを示す。
 
竹中  親から子への世代交代を繰り返す過程で、ある目的に適応してゆく進化の行程を応用
    したアルゴリズムだね。
 
岡部  この遺伝的アルゴリズムを用いて行う手法に、多目的最適化がある。
    目的関数を1つにまとめることなく設計に必要な条件を導くことができる手法だ。
 
竹中  特徴は、解を求めるのではなく「解集合」を求めるという点だね。
    たったひとつの解を出すのではなく、解となりうる群を導き出す。
 
岡部  最適化群を導くプロセスで遺伝的アルゴリズムを用いることで、様々な条件を同時並
    行的に扱うことが出来るようになる。
 
竹中  多様な条件を扱い、これらの条件が互いに複雑に絡み合う建築の設計プロセスでも、
    大いに活用できる手法だと言える。航空機などの機体設計では実際に活用されている
    手法なんだ。
 
岡部  ひとつの条件のもと、ひとつの解(形)を導くのではなく、多様な条件を満たす、形
    の群(特徴)を導き出す。最適化の行程で、進化という時間軸が扱われている点も興
    味深い。
 
竹中  そうだね。建築において「時間」という概念はとても重要だね。でも扱いにくい。
    この最適化のアプローチは、「時間」という概念を建築設計に持ち込むことができる
    かもしれない。
 
岡部  例えば、構造最適化と同時に、環境最適化や、美しさの最適化、さらには数年後、数
    十年後の姿を考えた最適化が可能になる。どれかひとつ欠けても、建築設計における
    最適化は成り立たない。
 
竹中  たったひとつの形を求めることに注力するのではなく、複雑な条件を満たす形のあり
    方を探る。コンピュテーションの力は、客観的な最適化条件だけではなく、主観的な
    条件を同時に扱うことで、個性ある世界を描いてくれるはずだ。

 コンピュテーションと3Dプリンタの力で、住宅を最適化群でスタディする様子

 コンピュテーションと3Dプリンタの力で、住宅を最適化群でスタディする様子

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役