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コラム

COBieの勉強-その3

2021.04.06

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

COBieの技術的な仕様についてはJACIC(一般財団法人日本建設情報総合センター)の社会基
盤情報標準化委員会社会基盤COBie検討小委員会が公表している報告書(2016)に詳しく
記述されている。この報告書は、各ワークシートのパラメータの日本語訳が記載されているの
でCOBieでどのような項目を扱っているのかを知るための重要な資料である。建築部品につい
てはBLCJ(BIMライブラリ技術研究組合)のBLCJ-BIMオブジクト標準(Ver1.0)報告書・
資料編(2019)
限定的なカテゴリで設計段階におけるTypeシートとComponentシートに
ついて入力事例の記載がある。また、AutodeskGRAPHISOFTなどのベンダーが提供してい
るCOBieを出力するためのアドオンツールやテンプレート、サンプルデータなどで勉強をすれ
ば、COBieパラメータに入力する具体的な値を知ることができる。

2020年に小職の研究室で一般財団法人建築保全センターが運営している保全マネジメントシ
ステム(BIMMS)の「機器・部材・備品管理」機能の画面を構成している各項目とCOBieパラ
メータの対応を比較してみた。その結果、①BIMMSから見たCOBieの項目は、内容が合致して
いる項目、②COBieのリンクを辿ることでBIMMSの機器・部材・備品管理機能で必要な値を引
き当てられる項目、③「Job」や「Attribute」などのシートに記述をしておけばCOBieのリン
クを辿ることでBIMMSの機器・部材・備品管理機能で必要な値を引き当てられる項目、
④COBieには存在しない項目の4パターンがあり、BIMMSの機器・部材・備品管理機能の画面
を構成している項目数に対して④の数が占める割合は約3割であることを把握した。④に該当
する項目の多くは、「点検の判定基準」のような運用に関する内容、「運転時間累計」のよう
な運用段階に記録される内容であった。したがって、建物を維持保全するツールの台帳データ
を作成する用途であれば、COBieパラメータを十分に活用できると思われる。

実務でCOBieパラメータを利用するにはいくつかの工夫が必要である。例えば、COBieパラ
メータをBIMのプロジェクトデータに設定するツール、それらのパラメータに値を入力する
ツールそれらのパラメータと値をCOBieフォーマットに出力するツールが揃っていなければ
維持管理BIMを構築するデータの取り回しが容易でない。特に、BIMオブジェクトに設定した
COBieパラメータに値を入力するツールには、製品検索WebサービスやWebカタログに記載さ
れている製品仕様の一部、施工管理ツールに入力する記録の一部など、既存データを柔軟に連
携する仕組みがあると効率が良い。こうした工夫は維持保全用のパラメータにCOBieを使うか
否かにかかわらず維持管理BIMを効率的に構築するためには必要なのだが、国際的標準の
COBieであればグローバルに公開されているツール類やIFCパラメータとのマピング(例え
ばNBIMS-US V3)など多くの知見を活用できる。また、国土交通省が整備している3D都市モ
デルのプラットフォーム「PLATEAU」などで施設のデータを高度に利用しようとすれば、
COBieのような何某かの標準にしたがってある範囲のパラメータを共通化しておくのが望まし
い。

現行のCOBie 2.4が公表された2012年から今日までにBIMを取り巻く世界の情勢は大きく変化
してきた。その中で、COBie 2.4が抱える問題や矛盾も指摘されており、bSIを中心にCOBie
2.5への修正が検討されている
。その修正を行っているフォーラムの記述を見ていると、
Componentを中心としたリンク構造への変更やCOBieパラメータとジオメトリやマテリアル
のパラメータとの重複の解消、IFC4.3におけるMVDなどが議論されているようである。その動
向をよく見つつ、日本でもライフサイクルBIMのデータ基盤を考えていくことが必要な時期に
来ているのではないだろうか。

志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授