専門家が生み出すカルチャー
2021.09.07
パラメトリック・ボイス SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎
今回は最近感じたことを少しずつ。
東京オリンピックでスケートボード等の新競技が話題になりました。よく言われていたのが、
これまでの競技とは感覚的に異なるのが“カルチャー”であると言うことでした。
様々な意見はあると思いますが、日本における相撲、アメリカにおける野球、イギリスにおけ
るサッカーなど“カルチャー”としてとらえられる“スポーツ”は各国あると思います。
他にも例えばヒップホップは音楽のジャンルだけを指すのではなく、ストリートギャングの争
いを暴力ではない解決をするために生まれた“カルチャー”であり、ダンスやアートなどととも
に音楽が生まれています。
“カルチャー”とは、歴史や社会的背景が重要視され、一つの分野でとどまらず様々な派生をし
ていくのではないでしょうか。
では、私たちにとって建築は“カルチャー”になっているでしょうか(もしくは“カルチャー”と
してとらえていますか)。
私はデジタル技術(だけではないですが)が、細分化された役割をつなぎ建築から新しい“カル
チャー”を作れると信じています。
新型コロナウイルスの影響が続いておりますが、様々なメディアで“専門家”という人たちを見
る機会が増えたと思います。
これまでに経験したことのない状況で、“専門家”も日々変化する状況から新たな知見を得て変
化(いわゆるアップデート)していく必要があると思います。
試行錯誤を繰り返しながら、正しかったこと、正しくなかったことを明確に伝えてくれるとい
う力量が必要とされている気がします。
建築に置き換えた時、“専門家”は変化に対応できているでしょうか。
建築は比較的成熟された分野で、ある程度正解というものがわかっています。そんな中で、現
状を理解しつつ新たな技術への取組を続けられる、そんな人を“専門家”と呼ぶのではないかと
思います。
つまり、“専門家”は現役であることが重要だと思います。
デジタル技術だけが重要なわけでも新たな取組だけが重要なわけでもありませんが、少なくと
もその影響で情報の速度や量が増え、技術の進歩も格段に速くなりました。
どんなに優れた技術や知識もそのままでは廃れてしまうでしょう。
そんな危機感もあり、DXに取り組まなければという会社が増えたと思いますが、やはり会社
とは人だと思います。
様々な立場がありますが、それぞれが“専門家”になることで会社のDXも進むのではないでしょ
うか。
最後に、仕事をしていて思いを共有できる人は周りにいますか?
コンピューターに向かって仕事をしている方々は結構孤独と戦っている人も多いのではないで
しょうか。
ビジュアルプログラミングやコードで結果にたどり着くまでの道筋は読み取れるかもしれませ
んが、本人以外の人が書いたものを読み取るのはなかなかに大変です。ところが、書いた人を
知っていると意外と道筋は読み取れたりするものです。
プログラムに関わっていない人でも知っている人が議事録で直接文字には書かれていない考え
を読み取ることがあるのではないでしょうか。
コードや議事録を見ただけで何を書きたかったかが読み取れることもありますが、誰が書いた
のかということがわかると、その人の思想が感じとれる(感じ取ろうとする)ことが多いです。
誰が関わったかを知ると建物の見方が変わったりしませんか?
忖度ではない思いを共有できる“専門家”が集まって作った建築は魅力的で、そこから“カル
チャー”が生まれるのだと思います。
そんな私も思いが共有できる人との仕事を広げるべく孤独と戦っている日々です。