AI美術大学 ―AI第3弾―
2023.07.06
ArchiFuture's Eye ARX建築研究所 松家 克
猛暑と線状降水帯の大雨!!
まだ6月末なのに夏の暑さと大雨となった。昨年は、6月25日から7月3日迄、35度越す猛暑
と晴れの日が連続。小生の記録によると7月1日は37度を超えている。その後の7月の末か
ら8月半ば頃まで35度を超す猛暑日が続き、6-7月、8月とダブル猛暑の夏であった。昨年
と比べると少し今年の暑さは軽いはずなのに、毎年、去年より暑いと感じるのは、人の相・性
なのだろうか。この夏も日陰アプリが活躍し、日影を選んで歩く日が続くことになりそうだ。
さて、本文。
Archi Future 実行委員の山梨氏が造形生成AIと対話AIで自ら試みた事例と、池田氏の教
育現場での「AI」コラムが続いた。Archi Futureとしては、無視できない課題であり、
次世代の道具として興味深くもある。そこで、第3弾とした。
近年は、ドローンで始まり、AloT、3Dプリンター、DX、ゼロカーボン、SGDs、コロナ、
働き方改革、ウクライナ、円安、そして今回のAIと話題に事欠かない。そして、ChatGPT
のオープン化と共に重要な話題が更に沸騰している。AIの応用事例が増えてくれば、これ
をベースに使用方法基準や法的規則が出来るとも考えられる。
小生の母校の武蔵野美術大学は、創造や表現活動の学習と習練がベース。この環境下での造形
生成AIの登場である。果たして有効な道具になるのか不安であり、教育の根底を揺るがすか
もしれないが、利用を積極に諮る指針と声明を逸早く出した。当然、まだ利用方法も確立して
いなく、著作権やオリジナリティの保障や著作権表記などの課題や問題点が乱立してくるだろ
う。これらを受け入れながら、試行錯誤も見据えての積極利用方針になったと考えている。
登場した優れた道具の利用法を走りながら考えていくとの姿勢である。ここ2、3年がターニ
ングポイントであり重要な時となるだろう。AIに指示する力、見て判断する力、セレクトす
る力などが鍛え上げられ、スキルもアップするとも考えられる。東京大学も積極的取組派だと
声明を出したともいう。小中学教育では、教育現場の混乱が想定されるが、今は、積極派と非
積極派に分かれているようだ。
先述のいち早く生成AIの積極的なトライを決めたムサビの油絵学科では、早くも6月末に
AIに対応した公募展を発表した。研究や多くの実例からの情報収集も兼ねていると考えられ
るが、AIピカソで生成した画像が対象となっている。副題は「AIとこれからのアート」
であり、武蔵野AI美術大学との主タイトルで、武蔵野美術大学×AIピカソ、AI絵画
AWARDとなっている。どの様な結果や成果になるのか、楽しみでもある。
公募展に御興味のある方は、下記のプレスリリースをクリックし、ご参照頂きたい。
【武蔵野美術大学×AIPicasso】国内初のAI絵画アワードを7月14日に開催〜新しい技
術とどんな表現の未来をつくるかを考える「武蔵野AI美術大学AI絵画アワード」〜
今、想定できる課題を挙げると、AI教育の不足で知識やスキル格差助長するか。個人情報の
漏洩リスク。オリジナリティの担保が出来るのか。国際的罰則規定や協定が出来るか。対話型
と生成AIの利用方法が異なるが、この習得が出来るのか。アイデンティティはどうなるの
か。などが思い浮かぶ。
今後のいろいろな課題が見え隠れしているが、見えない部分が多く、末恐ろしい感すら抱いた。
建築では、建築設計事務所が、この生成AIを駆使し、設計に応用し始めた事例も現れつつ
ある。
Archi Future 2023で生成AIの実例が紹介出来たらと現在、準備を進めているが、構造や設
備、BIMとの連動などは、まだ、未だ先のことだろう。
詐欺や他の犯罪事案、個人情報の漏れなどの被害事例はまだ聞かないが、今に起こるのでは、
と危惧している。生成AI利用で公募展に応募し優秀賞となったが、自ら辞退した海外事例が
あった。創り上げた作品が、自分の創造物、自分の判断や思考、アイデアで生み出したのかの
再確認が必要であり重要であり矜持ともいえる。
併せて、創作をAIスタートであってもCAD表現であっても自分が創造した作品やオリジナリ
ティとの自信とプライドが大切であると考える。
最近、自分で試しにやってみましたと、AIを利用した2Dや3Dの試作?がFacebookなど
での提示が多く、感心したり、恐れたり、危惧したり、期待したりしている。
一方、手塚漫画のブラックジャックがAIで新作を作成すると発表された。どの様な作品にな
るのか期待したい。
今後、多くの事例が出てくれば、基準や特に注意が必要な「著作権」「商標権」「意匠権」
「パブリシティー権」が挙げられるが、各種の規則化の手がかりともなるだろう。CADや
BIMと同じように優れたツールとして利用できる様な環境整備がおこなわれることを期待し
たい。将棋界がうまく乗り越えたように必ず上手く使いこなせる道具だと考えている。
AIを扱う作者は、考えや感性などを表現したい個人であり、チームであり、あくまでも人で
ある。オリジナル性があり、かつ、模倣でなく創造性的で魅力的かの最終決断するのも人で
ある。
AI対応が悪用とのイタチごっことなるのか、法規制で千日手となるのか。どちらにしても
戦国時代の武田と上杉、武田と徳川の闘いが思い起こされる。
余談だが、今、OMソーラー主催のこいずみ道具店の小泉誠氏のオンラインセミナー「心地よ
さをつくるインテリアデザイン」を視聴しながら最終稿をまとめている。小泉氏のデザイン
には、物語性と時代のシークエンス性、手の感触と感性を大切にしている姿勢などを感じた。
Jパネルを使ったジャイアント家具や住宅、オフィスのインテリアデザインの考え方などで
刺激を受け原稿も捗った感がある。
この原稿締切の直後に、朝日新聞の一面に「AI」関連記事が出た。そこで、急遽、ギリギ
リ修正に間に合いそうなので、この記事を含め追加の文章とした。
文科省が、生成AIなどの指針作りを進める中で、小中高生向けに例年開催されている作文コ
ンクールや博報堂や神戸親和大、河合塾など各種コンクールでのAI利用上の注意点概要で
あり対応についてである。概ね、生成AIによる生成物を自己の成果物としての応募を禁止し
ている。文科省は不適切な使い方は不正行為だと言及するようであるが、不適切とは、との疑
問が次の課題として残る。
この朝日新聞の記事で、田中博之氏は、次のように述べられている。
「将来は、単に禁止するのではなく、上手に使いこなす力を養う方向で考えるべきである。例
えば、コンクールでAI使用を認める新部門を設け、AIの回答をどう批判的に受け止め、新
たなアイデアにつなげたかを文章にまとめ、作品と共に提出するのも一案だ。」
先述の武蔵野AI美術大学のAI作品公募との共通点を感じた。
最後に、AIが一般化されると人類の知能を超える転換点を指すシンギュラリティも想定より
早くなるかもしれない。これにより世界は大きく変化するとも言われている。米国の未来学者
レイ・カーツワイル氏が、2005年に出した“The Singularity Is Near"でその概念を提唱し、
徐々に知られるようになっているが、カーツワイル氏はこの書で、2045年にシンギュラリティ
が到来する、と予言すると共に、AIは人類に豊かな未来をもたらしてくれる、という楽観的
な見方を提示している。果たして、どうなるのか、だれにも未だ答えは無い。