設計の自動化とBIMによる早く確実な積算、
点群データ共有を実現<U’sFactory>
2023.08.03
3DCADを活用したITソリューションとDX化を促進し、建設会社や関連業者、設計事務所が抱
える問題解決を図るU’sFactory(ユーズファクトリ)。
同社は起業から10周年を間近に控え、BIM積算・集計システム「BI For Archicad」の大幅な
アップデートを完了し、この春に新バージョンをリリースした。ArchiCAD17対応版からス
タートした同ソフトは、ゼネコンだけでなく、専門工事会社で利用する実施積算を可能にし、
BIMならではの積算体験を広げているという。
同社代表取締役社長の上嶋泰史氏に、今回のバージョンの特徴、また同社が取り組む点群デー
タの軽快なビューア「Info360」について伺った。
3DCADの入力操作を簡略化するとともに正確性を担保
BIM積算・集計システム「BI For Archicad」は開発・発売から10年目となり、今年の5月
16日に新バージョン「BI For Archicad 26」をリリースした。同ソフトを展開する
U’sFactory代表の上嶋泰史氏は、「ゼネコンをはじめとして設計事務所、施工図事務
所の関係者、さらには各種専門工事会社の方々に、実務に適したソフトウエアとして利用いた
だいています」と語る。
同ソフトのこれまでの修正追加項目数は、5,642件+α。1年で約600件程度のペースで改良を
重ねてきたことは、ユーザーに真摯に向き合い続けてきたことの証といえる。
特に今回のアップデートでは積算に関わる多くのユーザーからの声に応え、BIM操作が初めて
というユーザーであっても、3DCAD入力操作を簡単かつ確実に入力操作できる工夫が施され
ている。
例えば、部屋数が100部屋を超えていたとしても、部屋の用途をカテゴリーに分類し、カテゴ
リーごとの部屋仕様を入力することで、手入力手間を最小限にする機能を盛り込んだ。
また、最近では、オペレーターの外注化が多くなり、間仕切りや、区画壁を複数の担当者が入
力することで間違いが生じやすくなっている。それらのヒューマンエラーを簡単に見つけ出す
仕組みとして、壁IDとプロパティを自動的に色分けし、凡例自動作成とともに、入力間違い
を見つけやすくする機能を充実させた。
さらに、形状が複雑になる柱型や梁型部分が関わる断熱材や仕上げ材も簡単に自動作成が可能
である。例えば外壁裏の断熱吹付のモデル作成が、コマンド実行するだけで瞬時に出現する。
また巾木や壁仕上げ、廻り縁が部屋単位で、1クリックで3D自動作成できるようになってい
る。コーナービードや梁型、腰壁、異種仕上げ、巻込み部仕上げなどでも同様で、「BI For Archicad」のコマンドを使うことで煩雑さや間違いから解放され、業務効率が大幅に向上する
ことが見込まれる。
積算確認図の自動作成機能を追加し根拠を明確に
「BI For Archicad」では、BIM積算機能が大幅に拡充。新バージョンでは内部の各部屋にお
ける「辺番号」を壁と梁に付与し、積算用確認図と集計の際に必要となる計算根拠を紐づける
機能が追加された。「5〜7番だけを腰壁にする、1番と2番だけをデザインクロスにするとい
うように仕上げの内容を登録することで、ボタン一つで積算確認用の平面図が自動的に作成さ
れます。そうして出した集計には計算根拠がある。これまでは出ている数字に対して本当に重
複や落ちがないかを検証する術がなく、『BIMでは明細はできない』と積算事務所の人から言
われていたのですが、ようやく覆すことができました」と上嶋氏。「梁型や巻き込みの設定と
いった場合は、逆にBIMの方ができるようになりました。これまでの積算ソフトではほぼすべ
て手で計算し、減算する分や追加する分も手で計算していたのですが、BIMでは手拾いしなく
ても集計し見える化ができる。そうなれば、BIMの方が早く確実です」と力を込めて語る。
また「BI For Archicad」では内装工事専門会社と連携し、LGSボード作成機能と積算を強化。
LGSの本数、石膏ボードの割付や枚数も見える化した。BIMで天井の種類を指定しておけば
「自動生成ボタン」で自動的に割付され、また割付の寸法を変えるといったことが自由にでき
る。その変更内容に対して天井LGSを表示させると、吊りボルトまで連動して表示される「数
字をただ拾うのではなく、梁型の形状や勾配がついている場合などにきちんと対応し、現実的
な数字を短時間で簡単に出すことができます」と上嶋氏。積算後は契約と実施の両方に活用で
き、例えば、材料搬入用に出力した間配り用図面を業者に渡せばそのまま現場で使い、工事を
進められる。
「鉄筋工事会社や内装専門工事会社、防水工事専門会社、デッキ関連メーカーなど、ゼネコン
以外でも『BI For Archicad』の説明を受けて導入した後に、初めて3DCADに取り組むという
企業が増えてきました。『BI For Archicad』が、BIMへの取り組みの重い腰を上げる契機と
なったのはBIM積算利用に効果がある表れだと実感していますし、変革期をプロデュースでき
ていることは開発冥利に尽きます」と上嶋氏は語る。
点群データをWeb上で共有し手軽に閲覧できるツールを開発
U’sFactoryでは、点群データをWeb上で閲覧できるビューア「Info360(web
PointCloud Viewer)」も2023年5月にリリースした。点群データは一般的に、サイズが重く
大きくなる傾向がある。こうなると取り扱いが大変なだけでなく、データを協業者などに渡し
ても活用されにくい。一番のボトルネックは、専用のビューアをパソコンにインストールしな
いと見られないことであった。そこで上嶋氏は、大容量のデータであってもストレスなく閲覧
できることを重要視し、インストール不要のWeb共有ツールを開発した。各自のブラウザで、
URLを共有すれば遠隔でも見ることが可能だ。「技術的には、1TBのファイルでもアップロー
ドした情報を共有して開くことができます」と上嶋氏。「Info360」の閲覧では、360度画像
を登録することで点群と360度画像のどちらを動かしても両者が一体で動くため、点群データ
表示特有の粗い見え方がなくなる。そして、空間表示の中での距離計測は、3Dモデルに始点
と終点にメジャーを当てるように直感的また正確に行える。
また、点群では確認できない部分も「アノテーション登録機能」で写真や動画、PDFやCAD
データなどを追加して補完することができる。グループ名を登録し特定の個所でタップすると、
すぐにその個所と場所が共有される。例えば遠隔から現地にいる人に、特定の個所を指定して
写真撮影の依頼をすることができ、今度はアップロードされた写真データを関係者全員がリア
ルタイムで把握できる。閲覧するまでの時間がかからないことも特徴で、これまでは3Dモデル
と写真データの向きを合わせて共有するには早くて2〜3日かかっていたものが、点群の計測は
即座に完了し、360度画像を合成してアップロードするのに1時間かからないほどでできると
いう。「現場ではその場で、その瞬間に情報を共有したいものです。現場で実現したことに大
きな意味がある」と上嶋氏はいう。
U’sFactoryでは建設機械や器具のレンタルを行うアクティオとコラボレーションし、
点群計測のための初期費用のハードルを下げている。「Info360」自体も3カ月間は無料で提
供、基本パッケージは月あたり25万円で10GBまでの利用ができる。
「手軽に導入していただければ、いわゆるDX化の効果を実感できるはずです」と上嶋氏。
10年間進化をたゆまず続けてきたU’sFactoryのサービスから、改めて設計と施工
現場での技術革新を感じていただきたい。
「BI For Archicad」および「Info360(web PointCloud Viewer)」の
詳しい情報は、こちらのWebサイトで。