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コラム

興味の種

2024.05.30

パラメトリック・ボイス       SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

先日、広島工業大学で杉田宗さんの授業見学とハッピーアワー前のレクチャーをさせていただ
く機会がありました。
授業は、全員が同じ大きさの厚紙を使って橋をつくり、中央に重りをぶら下げてその強度で採
点するものでした。例えば大量の接着剤で強度を増したりしないように重さの制限があり、橋
として成立するために上にプラレールを走らせることができることが条件で、見るからに弱そ
うなものから反則的な方法でクリアするものまで、学生の試行錯誤の結果が見られました。
前提としておもしろかったのが、構造の授業で学ぶ前の授業であり、学生たちは材にかかる応
力等を感覚でしかとらえられない状況で形を考えていることです。構造設計者でなくとも実務
をやっている方であれば圧縮材と引張材を分けて材の形状を変えるのくらいはするのではない
かと思いますが、その考え方すら学んでいない時点での設計は、どこかで見たことのある形を
再現することになり、例えばトラス形状にはしていても圧縮がかかる部分を簡単に折れ曲がっ
てしまう紙一枚で構成したりします。
また、重量の制限は使用する接着剤の量が影響しますので、接着する長さが多いと重量オー
バーになったりします。これは仮にこの橋が鉄骨造だとした場合、溶接量や接合の数と考えら
れるので、重量は現実的には製造・建設コストにつながる考え方だと思います。
というようなことを一緒に見学していた方と話していたのですが、実務者でも立場によって何
を重要視して考えるかが変わるだろうから、様々な立場の実務者を集めてやったらどんな結果
になるか興味があるな、とも話して盛り上がりました。

このような課題から何を学び、将来につなげられるかは次のステップですが、興味の種は様々
な分野につながっています。
もっと美しい形、もっと強い形、もっと作りやすい形、もっと少ない材料等々つながる先は無
限にあると思います。
また、実際今回の紙の切り出しはレーザーカッターを使用しているとのことでしたが、検討時
点でデジタル技術の活用ができるようになれば人の手では作るのが困難な形を生み出すことも
できるかもしれません。
興味の種から考えを広げることは決して学生の特権ではありません。
最近何かに興味をもちましたか?
その興味の種を捨ててはいないですか?
デジタル技術の進化で情報や技術が多すぎるのも事実ですが、せっかく生まれた興味の種は捨
てることなく育てていきたいです。そこで咲いた様々な花が次の種を生み出すでしょう。

使い古された歌詞のようなことを書いてしまいましたが、日常の業務に追われる中で久しぶり
に授業というものをみた結果のノスタルジーをお許しください。

ちなみにレクチャーでは建築とデジタルの仕事について話そうとした結果、あまりにも厳しい
現実を伝えてしまったかもしれません。そんなことを言いながらも皆さん結構楽しくやってい
ますとレクチャーを聞いた学生の方たちに改めてお伝えします。

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長