BIMを利用して効率よい設計プロセスを実現しよう!
2024.08.01
パラメトリック・ボイス 安井建築設計事務所 村松弘治
あらゆるものを可能にするBIMによる効率化
昨今は、多くの組織が働き方改革に取り組む中で、業務量と人材のバランスを取ることがます
ます難しくなっている。この傾向は今後もさらに厳しくなるだろう。誰もが考えることは、当
然、「効率化」である。設計フェーズにおいては、自動設計化やBIMの効果が認識されており、
各組織で多少の違いはあるものの、その依存度も確実に増大しているのではないだろうか。
では、効率化の目指すところは?その結果をだすためのプロセスとは?そしてBIMをどのよう
に絡めるか?筆者の組織がこの問いに向き合うために採用している、BIMやデジタルをベース
にした効率的な設計プロセスを紹介する。
BIMがもたらす設計プロセスの革新と組織の生産性向上
設計における効率化は「個と組織の能力」と「設計プロセス」に定義されるといってもよいだ
ろう。言い換えると、設計事務所の働き方改革の目標は、知的労働集約型働き方からの脱却で
ある。したがって、これを実行するためには人と仕組みの工夫が必要になる。
すべてのケースに当てはまるわけではないが、ある一定用途の建築計画において基本設計への
知的労働集約は一定の効果がある。つまり、基本設計主体のプロセスへの転換が有効である。
BIMを活用すれば、デジタルツインで形状、機能、コストに加えて要求条件もチェックできる。
このアプローチにより、設計の効率化が促進され、組織全体の生産性が向上することが期待さ
れる。
BIMによるボリューム検討とデリバリーツールとしての可能性
BIMはさまざまな情報を統合するツールである。すでに認識されている通り、マテリアル、コ
スト、面積などの情報を統合し、特にボリューム検討に活用することで、建築イメージ+機能+
コストを測定することができ、事業初期段階では非常に有効である。一方で、BIMは、デリバ
リーツールとしての側面もある。ここにはまだまだ展開の余地が残されていると思っている。
例えば、さまざまなソフトを絡めることで、チェック機能を格段に向上させることができる。
具体的には、日影、エネルギー量、カーボン量などを計算し、BEI、BPIなどを算出する省エネ
計画への活用チェックに有効である。これにより、検討やチェックに要する時間を大幅に短縮
でき、設計プロセスの効率化とコスト削減につながる。
以下に、この仕組みを利用した都市モデルの統合と、それを活用したシミュレーション例を紹
介する。
FormaとBIMの連携による効率的な設計プロセスの実現
統合シミュレーションの一例として、BIMによる直感的な意志決定を可能にするFormaの活用
が挙げられる。
この方法は、ビジュアルなイメージを持ちながら設計の自動化、デザインへの展開、そしてス
ムーズな運用を実現し、効率を向上させるものである。
特に、昨今の課題である環境負荷を低減する建築を考える際には、周辺の風や光、温度の要因
をまちづくりや地域づくり、建築設計に取り込む必要がある。このシナリオには、以下の手順
が含まれる。
通常はOpen Street Mapから周辺ボリュームが生成されるが、ここでは国交省が整備している
PLATEAUを統合して使用する。このデータを基に、建物計画ボリューム(用途ごとの面積検討
を含む)を自動化して検討する。
さらに、日照時間、昼光解析、風解析、体感温度、騒音解析、太陽光パネルエネルギー解析を
活用し、ファサードなどのデザイン検討を行う。これにより、想定される壁、窓(開口比率)、
屋根、および断熱の考え方をインプットし、概エネルギー量を算出することができる。
この仕組みは、解析設定や操作が簡単で比較検討が容易なため、短時間で実施できるという特
徴がある。そのため、事業企画や基本計画など、事業初期段階の活用に最適である。
BIM導入がもたらす設計の革新と品質向上
このようにBIMとシミュレーションの連携は、効率化の第一歩である。このフェーズでの検討
を充実させることで無駄のないプロセス運営とともに、品質向上を実現し、さらに、実施設計
の効率も大幅に向上させることができるだろう。
加えて、自動化できるところを自動化することで時間を生み出し、同じ働き方の中でも創造的
な業務に集中できるようになる。これからの働き方において、BIMは欠かせない存在となるだ
ろう。