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コラム

Autodesk University 2024での発表を振り返って

2024.12.03

パラメトリック・ボイス                   GEL 石津優子

10月15日から17日、サンディエゴで開催されたAutodesk University 2024に参加し、
清水建設の宮岡香苗さんと共同で「Revitを活用した3D鉄筋施工図の自動生成」というテーマ
で発表を行いました。今回の発表では、ジャカルタの地下鉄プロジェクトを事例に、Revitと
Rhino.Inside.Revitを組み合わせたパラメトリックモデリングツールの開発と、その実際のプ
ロジェクトでの活用事例について紹介しました。このプログラムは清水建設と株式会社GELが
共同で開発し、BIM/CIMを活用した鉄筋施工図作成プロセスの革新を目指したものです。


開発したツールと背景
鉄筋施工図は鉄筋コンクリト構造物の設計施工に欠かせないものですが、従来の2D施工図
作成には膨大な労力が必要でした。特に、鉄筋配置が複雑な場合、指示書の作成やモデリング
作業でエラーが発生しやすく、多大な時間とコストを要していました。こうした課題を解決す
るため3D施工図を自動生成するツールを開発しましたこのツールは、鉄筋径やピッチ、形
状などの情報をパラメータとして整理し、モデリングを自動化することで、大幅な効率化を実
現します。

プログラムの概要
このプログラムの主な流れは以下の通りです:

1.    データ整理:鉄筋径やピッチ、形状などを含むパラメータデータを作成。
2.    モデリング:Rhinoceros、Grasshopperにデータを取り込み、プログラムを実行。
3.    BIM反映:BIMソフトウェア「Revit」に施工図情報を反映した3Dモデルを自動生成。

これにより従来の手作業によるモデリングと比較して、作業時間を大幅に短縮し、モデル修
正や施工検討も容易になりました。

ツールの利点と実績
このツールをジャカルタMRT北南線第2フェーズ地下鉄プロジェクトに適用した結果、以下の
成果を得られました:

●    作業時間の削減:施工図作成に要する時間短縮。
●    コスト削減:労務費削減。
●    材料削減:設計精度の向上により、鉄筋使用量を10%削減。

特に印象的だたのは3Dモデルの利用により設計フィドバックが効率化した点です詳細
な設計を迅速に試行錯誤できたことで、より深い検討が可能になりました。3Dモデルがある
ことで、多くの図面を切り出すことができるところが大きく影響したようです。


技術選定と工夫
今回のプロジェクトでは、Rhino.Inside.Revitを選択しました。その理由は以下の3点です:

1.    柔軟なビュー機能:Rhino上でモデルの配置を視覚的に確認し、調整可能。
2.    カスタマイズ性:LayerやUserTextを活用してジオメトリやパラメタを柔軟に管理可能。
3.    強力なジオメトリエンジン:複雑な形状や自由形状の処理能力が高い。

Dynamoも用途によっては良い方法なのですが、今回は大量の鉄筋を描写し、生成するので、Rhino.Inside.Revitを選択しました。

さらに、Pythonで鉄筋ライブラリを作り、配布することで、ユーザーは同じGrasshopper
ファイルをそのまま維持しながら機能をアップデートできる仕組みを構築しました。これによ
RevitのバージョンアップやRhino.Inside.Revitのバージョンアップにも対応しやすく
更が容易な、長期間使用可能で、最新版ではないGrasshopperファイルの回収や更新といった
ユーザーの負担を最小限に抑えたツールとなっています。


今後の展望
このツールは、鉄筋加工機や組立機とのデータ連携にも応用可能だという点で将来的には、設
計から施工までのプロセスをシームレスに統合し、さらなる効率化と持続可能性の実現を目指
しているというお話も聞くことができました。また、対象部材の拡大やデータ作成プロセスの
簡略化にも取り組む可能性があり、非常に興味深いテーマでした。

Autodesk Universityでの体験と学び
Autodesk Universityは私にとって憧れの舞台でした発表を通じて業界の専門家から多く
のフィードバックをいただき、自分の取り組みが国際的な文脈でどのように評価されるのかを
知る貴重な機会となりました。また、他の参加者とのコミュニケーションを通じて、同じ課題
に取り組む世界中の人々と意見交換ができたことは大きな喜びでした。
技術的にも、他の発表から新たなインスピレーションを得ることができ、自分自身の成長を感
じる場でもありました。この経験を糧に、さらに建設業界のデジタル化を推進していきたいと
考えています。

石津 優子 氏

GEL 代表取締役