AIと3D技術で施工管理に新たな展開をもたらす
insightScanX<One Technology Japan>
2025.05.27
One Technology Japanは、XRコンテンツの制作やクラウドを用いたシステム開発に強みを
持つ企業で、2015年に創業。ベトナムオフショア開発と技術力を武器に、顧客のDXを高品質
かつ適切なコストでサポートしてきた。
VR元年と言われる2016年からゲームエンジンを活用したVR/AR開発を手掛けるほか、業務シ
ステムの受託開発やCG制作、さらにベトナムに進出する企業の経営コンサルティングも行う
など、幅広い分野で実績がある。
その同社が、これまでに培った技術や知見をもとに、建設業向けAI×3Dソリューション
「insightScanX(インサイトスキャンエックス)」を開発した。2025年5月現在、リリース前
の段階ではあるが、同社には問い合わせが届き、注目を集めているという。
今回、One Technology Japan 代表取締役 河本直己氏に、insightScanXの開発の経緯をはじ
め、機能や特徴、今後の展開などについてお話を伺った。
ベトナムでのオフショア開発と技術力で積み重ねる実績
「当社は、ネット系企業とSIerの出身者3人がベトナムで創業した会社です。私と、いまは関
連会社のONETECH ASIA JOINT STOCKで社長を務めるグエン ラム タオ氏、下島グエン氏
で事業をスタートさせ、Unityを使ったXRやAWSを用いた技術開発力が当社の強みです」。
こう語るのは、One Technology Japan 代表取締役 河本直己氏である。
河本氏は、2000年代初頭からECサイトやアプリといった多様なコンテンツ開発に携わり、
同分野に深い造詣を持つ。起業当初は、ゲーム開発がメインだったが、エンタープライズ向け
のアプリやコンテンツ需要に目をつけ、2016年のVR元年と呼ばれる年からVR/AR/MR開発
を行っており、数百以上の開発件数を誇るという。またベトナムの会社としては、まだ数少
ないAWSクラウドの公式パートナーとしてアプリからインフラまで幅広く対応できることも
特長である。
「当社は高品質なプロダクトで納品し、保守・運用までサポートするのが特徴です。ラボ型で
はなく、いわゆる受託開発型での依頼が多く、開発は主にベトナムで行っていますが、顧客の
95%以上は日本企業になります」。河本氏によるとベトナムには常時エンジニアが数十名おり、
幅広い案件に対応できる体制が整えられている。そのほか、人材紹介などを行うGROWUP JV
や、insightScanX専門のNexConstructなどのグループ会社があり、手掛ける事業は幅広い。
また、日本企業がベトナム現地へ進出する際のコンサル実績も豊富で、現地法人の立ち上げか
ら関わることも珍しくないという。
「これまで、顧客製品のプレゼン用VRや、研修・安全教育用VR、医療系トレーニングアプリ
などを開発しました。メタバース、大手建設企業のHoloLensアプリ、LiDAR を活用したアプ
リ、3DCGなども制作しています」と具体的な実績を多数挙げる。
株式会社One Technology Japan
代表取締役 河本 直己 氏
このように、One Technology Japanは用いたXRやAWSなどをキーワードにアプリやシステ
ムの開発で、各産業の課題を解決してきた。その同社が、今回、AI×3Dの建設業界向けソ
リューション“insightScanX”の開発に至った経緯を河本氏はこう語る。
「当社の得意分野であるXRや空間コンピューティングの知見と技術力を基に、受け身ではな
く、より積極的にお客様の課題を提案型で解決したいと思ったのがきっかけです。建設業界の
お客様とは以前から縁があったため、建設業界のDX促進の力になりたいと思い、製品を開発
しました」。
AI×3Dで建設現場を効率化するinsightScanXの機能
河本氏はinsightScanXの具体的な機能や特長などについて、「一言で言うと施工における品質
管理や工程管理などを行える3Dスキャン技術、AI、ARを統合したアプリです。基礎工事のコン
クリート品質のチェックや防水シートの検査などの施工管理に効果的で、我々のソリューショ
ンは、近年の人手不足の中で多いに現場に貢献できると考えています」と語る。ゼネコンやサ
ブコン、ハウスメーカーなどがinsightScanXを使用することで、施工現場の効率化や省人化が
可能だという。
「操作方法は直感的で使い方も簡単です。機能は多彩ですが、iPhoneを持って動画撮影と同様
の感覚で建物内の様子などをスキャンすると、AIがバグホールや、ひび割れなどの不具合や
修理箇所を自動的に検出・分類してくれます。さらに検出後は、レポーティングまでAIが自動
作成してくれる点が特徴です」。
注目すべき点は、河本氏が説明するスマホ画面に、修繕検出箇所とともに次の対応が示されて
いるところだ。「AIが “この場合にはこのような修繕方法があります”といった具合に、課題に
対する解決策を示してくれるのもポイントです。スキャン後はクラウド上に点群の3Dデータが
アップされ、関係者はWebブラウザでも情報を確認・共有できますし、AR表示も可能です」。
さらに、任意で“消火栓”といった設備を登録するとAIが画像認識するよう設定できるなど、
ユーザーが個別にアレンジができるような機能設計も工夫されている。従来は目視だった施工
の品質チェックをAIが行ってくれるだけでなく、目的物の数量カウントなどもAIがサポートし
てくれる点は現場目線で嬉しい機能と言える。
「言い換えると3D空間にメモをするような感覚ですね。例えば、一度スキャンしたデータを
別の担当者が翌日にチェックする場合、スマホでかざすとAR表示で前日にチェックした情報が
画面上に表示されます」。テキストや写真などの情報が画面表示され、進捗などが一目瞭然だ
という。
そのほか、利用者がAIに話しかけて質問をすると、納期間近の課題やタスクの数といった情報
検索も可能だ。「更新日や更新者、日時や施設名、場所などを項目別で表示できますし、もち
ろん3Dモデルのスケールを図ることも可能です」。このように現場に必要な機能が備わり、誰
が使用しても使いやすい仕様になっている。
ゼネコンやサブコンなど幅広い企業への貢献を目指して
さらにWebブラウザ画面も見やすく、機能的だと河本氏は説明する。「3D空間上にメモや写
真を保存できますが、その情報はブラウザ上の課題項目リストで容易に確認できます。管理者
側は、より詳しく調査したい箇所や修繕指示などを書き込めるため、事務所やオフィスから
現場管理が可能です。なお、セキュリティ面も担保しています」。加えてガントンチャートや
ボード、カレンダー機能も備わっているため、情報を整理された状態で扱えるのも嬉しい点で
ある。
さまざまな機能を持つinsightScanXだが、ホームインスペクションに特化されたサービスも
開発中だと河本氏は語る。
「住宅診断などにも応用可能です。通常、検査員は調査した各結果に対して、写真やレポート
を作成し、最終的に平面図と立面図で不具合箇所にマークをつけていきます。我々のアプリで
は住宅外観のイメージ図などが画面に表示され、調査員は直感的に問題がある箇所にマークを
プロットし、写真などの情報を入れ込むことが可能です。また、中古住宅で立面図や平面図が
ない場合は、立面図や平面図まで作成くれる上、最終的にはレポートまで自動作成してくれ
ます」。ひび割れなどを検出するほか、データを蓄積すればAIによって精度も高まっていくと
いう。
そして、河本氏が今回特に強調したのは、“スキルの平準化”と“時間短縮”である。「現在、
ゼネコンやサブコンなど、現場の施工管理では多大な人員と時間が費やされています。一説で
は品質確認や検査に計3.7億時間も業界全体で要していると言われます。熟練技術者や人手が
不足する中、この部分のDX対応は急務です」。つまり、誰でも利用できるデバイスを用いて
スキルの平準化を行い、業務を効率化・省人化するのが河本氏の狙いだ。
そして、現在insightScanXは、正式リリースに向け、建設業界の協創パートナーとともにアッ
プデートを重ねている。
「私は2000年の初頭からネットやEコマースに関わり、Amazonや楽天などの躍進を見てきま
した。今後、建設業界でもDX化がより加速していくことが予想されます。その中で誰もが使い
やすい製品を提供し、多くの方の課題を解決していければ嬉しいです」と河本氏。
One Technology JapanとinsightScanXの今後が楽しみだ。
「insightScanX」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。