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図面チェックのクラウド化やDX推進によって
品質管理をさらなる高みへ<野村不動産>
2025.11.17
野村不動産が展開するマンションブランド「プラウド」などの分譲住宅事業。上質な住まいづ
くりにこだわる同社の住宅だが、その根幹には、社内で長年培われてきたノウハウや、緻密な
図面チェックを含む社内基準、品質管理体制がある。
同社の住宅事業本部 品質管理部では、その業務を支えるツールの1つに、パナソニック
ソリューションテクノロジーが提供する図面専用PDFソフトウェア「Bluebeam Revu (ブルー
ビーム・レビュー) 」を導入している。特に、査図と呼ばれる図面チェック業務を中心に、同ソ
フトはペーパーレス化と業務効率化を力強く後押ししているという。
今回、同社の住宅事業本部 品質管理部 品質企画課長の宇野弘蔵氏をはじめ、寺内栄一氏、
河田裕美子氏の3名に、導入の背景や活用の実際について話を伺った。
野村不動産の品質を支える社内体制
品質管理部は野村不動産の主な「プラウド」シリーズを中心としたマンションについて、物件
の品質管理を担う部署である。建設現場に赴いての視察や検査の確認も実施する。その中で
品質企画課は、主にマンションの仕様決定や図面チェックなどの業務を行っている。これらの
業務を行う品質企画課をはじめ、品質管理部の部員50名以上が「Bluebeam Revu(以下、Bluebeam)」を使用している。品質管理に関する指摘事項をPDF図面上に書き込み、その内
容を設計事務所やゼネコンに共有するというのが大まかな流れである。
品質企画課長の宇野氏は「我々の品質企画課では、ほぼ100%の利用率に達しており、私自身
は課長という立場のため、全体のフォロー役としてBluebeamを活用しています」と語る。
ソリューションの導入背景について、寺内栄一氏は、次のように振り返る。「2017年にパナ
ソニックの担当者から紹介を受け、検討したのが最初です。本格的な導入は、コロナ禍という
外的な要因が大きく関係しました。在宅でも効率良く作業できる方法を模索した結果、
Bluebeamが最適だと判断したという形です」。

左から野村不動産株式会社 寺内 栄一 氏、宇野 弘蔵 氏、河田 裕美子 氏
同じく品質企画課の河田裕美子氏も、当時の変化について語る。「以前は、紙の図面に赤入れ
して複数人で回覧していましたが、在宅勤務になり一時は進捗が停滞気味になってしまいまし
た。Bluebeamであればペーパーレスで、しかも効率化できると感じたことを覚えています」。
確認対象の図面は、物件の規模によって差はあるものの、建築図面に限っても実施図の場合
400~500枚以上となり、指摘項目は多いときで600~700項目以上となることもある。
作業時間に換算すると基本計画の段階で実質約1日弱、基本設計で約2日、実施設計では3~4日
ほどの時間を確認で要する。また、建築図面に加えて、構造、設備、電気などの各分野でも
チェックを行い、それらを統合していくので、全体の作業量はさらに大きなものとなる。
この膨大な業務量を効率化するためにもペーパーレス化を検討していた同社だが、Bluebeam
導入以前の課題について、「紙の図面で慣れている人は一瞬であたりをつけて確認できますが、
PDFファイルを汎用ビューアで確認しようとしても、ページをたどるのに時間がかかってしま
います。それが作業効率を下げてしまっていました」と寺内氏。河田氏も「Bluebeam導入以
前のPDFによる図面チェックでは、紙の図面チェックで2日だった作業が4日かかるケースも出
てきていました」。そのため、図面チェックメンバー7名ほどでトライアル的にBluebeamを
使い始め、操作性と機能面を確認しながら、導入の検討を進めたと振り返る。
多彩で細かいところに手が届く各機能の具体例
その後、Bluebeamを実際に導入した同社。その際から図面の比較機能、図面上への注釈や寸法
の記入などの操作性は高く評価されたという。「図面を画面上に左右に並べ、それぞれを比較
できる点は良いですね。例えば平面図を見ながら、立面図や詳細図等の他図面と一緒に確認す
るといった機能はよく使います」と河田氏。
ほかに部署内でよく使っている機能の一つとして、“マークアップ機能”を挙げる。PDFファイ
ルの図面で該当箇所に写真や囲みマークなどを使用し、指摘事項の書き込みを行ったり、修正
を指示できるものだ。「例えば、図面の一部をスクリーンショットのような感覚で貼り付ける
場合、ただの画像ではなく線分データとなるので、上下階の図面を重ねて比較するときには
下階の図面が透けて見え、何がズレているのかがすぐにわかります。建築だけでなく、設備な
どの図面も重ねることでチェックしやすいです」。差分が明快に比較できる点は評価できる点
だという。

Bluebeam Revuを用いた社内での打ち合わせの様子
また、紙の図面をチェックしていた頃は、指摘事項を1つずつ図面に書き込んで、それらを設計
事務所に送付し、その対応状況を管理するために、Excelに指摘事項を転記して質疑応答書を作
成する工程が社内で発生していたという。「項目数が非常に多いため、時間を要していました
が、Bluebeamでは図面に書き込んだ内容が画面下に一覧表示され、リストでCSV形式に出力
できるため、チェック内容を質疑応答書にまとめるのに便利です」と振り返る。
一方で、Excelでの社内フォーマットなどはすでに定まっており、Bluebeamの自動出力との整
合が必要であったと寺内氏は説明する。そのため、野村不動産では、プログラムを組んで調整
し、社内の所定の形式に自動で変換してデータを流し込む仕組みを構築した。
「当社が制作したシステムと連携した独自のフローにより、以前は丸1日かけていた転記作業
が、2〜3回の操作で終わるようになりました。しかも単なる時短ではなく、図面チェックに
集中できるスキルのある人材が、Excel入力の作業から解放されたことが大きな意味をもちま
す」。このように、独自の工夫を行うことで、さらに利便性を高めている。
クラウドでの同時編集などによる使いやすいポイント
同社がBluebeam導入を決めた背景には、クラウド上で同時に複数人がPDF図面をチェックで
きる「Studioセッション」と呼ばれる機能の存在も大きいという。初期段階からクラウド利用
を前提として導入を進め、「現場のメンバーを含めて、ゼネコン、設計事務所、プロジェクト
に関わる社内のメンバーが一緒にチェックするようなプロジェクトを何物件か実施しています。
図面の整合性の確認や設計変更への対応なども出てきますが、それを会議後にまとめて行うの
ではなく、それぞれが一堂に会する必要なくクラウドで対応する、という使い方がされていま
す」と寺内氏。
河田氏も個別にPDFを扱う場面がもちろんあるが、メインはクラウド上でデータを共有しなが
らみんなで図面チェックをすることが多いと語る。「基本は課内の図面チェックで一つの図面
をチェックすることをメインに使用していますが、それ以外の使い方の例として本社と現場、
それにサブコンといった異なる場所にいる関係者が、一つの図面を同時にチェックしたり、自
分の都合に合わせて確認・コメントを入れて、翌日全員で内容を摺り合せたりする。リアルタ
イムで情報共有でき、便利だと思います」。導入が進んでいない現場でも説明すれば理解され
やすく、クラウドでの作業は抵抗なく行われているという。
寺内氏は、Bluebeamのインターフェースについても言及してくれた。「CADを使用したこと
のある人にとっては馴染みやすいUIだと思いますので、社内で自然と使える人が多い印象で
す」。
今では図面のチェックだけでなく、社内用のマニュアルや仕様書の改訂時にもBluebeamを活用
しているという。「関係者それぞれがPDFに直接コメントを書き込み、それを最終的に統合する
というやり方が、今では標準的になっています」と寺内氏は語る。
宇野氏は、「本社の移転に伴って、全社的に働き方改革がさらに進んでいます。柔軟にデジタ
ルツールを使用しながら場所や時間に縛られることなく働けるよう、DXへの変革をより加速し
ていきたいと思います」。新しい働き方のスタイルに移行しつつ、高品質な物件の提供を目指
す野村不動産。今後も新たな価値を未来に向けて創造し続けていく。
「Bluebeam Revu」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。



























